恋は初めてだから

エピソード03

Gravatarはじめての恋だから
W. コッソリョン(꽃서령)


忘れてると思ってた。
いや、覚えてないフリをしてくれるって、思ってたのに。

テヒョンは――
1年前の出来事を、はっきりと覚えていた。
Gravatar波乱の1時間目がようやく終わった今、チャイムの音が鳴るや否や「トイレ!」と口実を作って、教室を飛び出した。
今日が初登校で、どこがどこだかも分からないのに、とにかく走った。
教室から十分離れたと感じた頃、私は壁にもたれかかって、その場にしゃがみ込んだ。

『…で、なんで知らないフリしたんだっけ?』

『たった2回会っただけで、“知り合い”ってのも微妙じゃん?』

『でも顔知ってるし…知ってるもんは知ってるじゃん』

『……だよねぇ』

授業中ずっと、横から「なんで?」としつこく聞いてくるテヒョンのせいで、内容なんて一文字も頭に入ってこなかった。
チャイムが鳴ってからも「トイレって言ってんじゃん!」と逃げる私を、彼はしつこくついてきた。
ようやく姿が見えなくなった今、思わず乾いた笑いが漏れた。

「自分も昨日転校してきたくせに、女子トイレの場所知ってると思ってるの?w」

それに、花美男にトイレ案内されてたら女子の視線ヤバいって。
転校初日にそんな噂でも立ったら…想像しただけでゾッとして、ブンブン頭を振った。

一息ついていたところ、制服のポケットでスマホがぶるっと震えた。
発信者:[ソンガン]

どうやら、ようやく私の転校を知ったらしい。

本来なら、転校前にクラスメイトへ挨拶するのが普通だけど……
私は人見知りだし、ソンガン以外に特別挨拶したい友達もいないし。

担任に「みんなにはテキトーに伝えておいてください」って頼んで済ませた。

でも別のクラスだったソンガンには、まだ伝わってなかったらしい。

「はぁ〜、なんで言ってくれなかったの!って絶対拗ねてるな……」

他人からすれば、「幼なじみなんだから言ってあげなよ」ってなるんだろうけど、
私にとっては、仕方なかったんだ。

小さい頃から365日中360日ずっと一緒にいた私たち。
ソンガンは妙に、私のそばから離れようとしない子だった。

中学の時、母の事情で転校したことがあったけど、
その学校にわざわざ転校してきたのが――ソンガンだった。

時には重いって感じることもあった。
でも、あの“出来事”を思い出すと……
私は、ソンガンに冷たくできなかった。

だから、今回こそはって思って、ちょっと強引な手を使ったのに……

やっぱり、予想は裏切られないね。

「……もしもし?」

「ユン・スヒョン!?なんで何も言わずに転校したんだよ!」

声から滲み出る寂しさと怒り。
ある程度は覚悟してたけど……思ったより激しい反応にちょっと戸惑った。

「お前のクラス行ってビックリしたんだからな!?
毎日一緒にいたのに、他のやつらには“あいつ気づいてないんだ”って思われるじゃんか!」

あっ、それは考えてなかった。
良かれと思って黙ってたけど、
逆に彼を“無関心な幼なじみ”にしちゃってたのか……

ごめん〜って軽くふざけて言ったら、
少し落ち着いた声で返ってきた。

「……なんで、俺には言ってくれなかったの?」

「だって……あんた、また学校まで追いかけてくるでしょ?」

そう、答えは簡単。

“まさか〜学校まで来ないでしょ〜?”
なんて言う人は、ソンガンのことを本当に知らない人だ。

彼は、そういうやつなのだ。

否定しないソンガン。
やっぱり、言わなくて正解だった。

「でも、マジで寂しかった……」

「ごめんね……でも、仕方なかったの」

“こうでもしないと、あんた友達できないでしょ。”
心の中で、そっと自分にも言い聞かせた。

これはソンガンのためでもあるし、
何より……自分自身のためでもあった。

「で? どこの学校か、教えてくれないの?」

電話越しに落ち込んでる顔が思い浮かぶ。

しょんぼりして、いかにも“可哀想なボク”みたいな顔してんだろうな……

ずっとその顔に騙されてここまで来たけど、
もう違うんだ。

私たちは、もうすぐ大人になる19歳。

いつかは、少し距離を置かなきゃいけない。
だから、今はその“はじめの一歩”。

「……ごめんね。教えられない」

「……マジで冷たいな、お前」

「冷たくても、しょうがないんだよ」

ソンガンの甘えに、思わず笑いが漏れた。
体は私より大きくなったのに、中身は昔のまんまだね。

あの頃は、どうしてあんなに守ってくれてたんだろう……

時は流れ、チャイムの時間が近づいてきた。

そろそろ電話を切らなきゃいけない。

ソンガンはまだ「なんだよ〜」って不満をぶつけてきたけど、
声はさっきよりずっと明るくなっていた。

「じゃあ、もう行かなきゃ」

「……切りたくない」

「授業でしょ、ちゃんと入りなよ」

はぁ〜って嫌そうにため息ついてたけど、
ちゃんと聞いてくれた。

切る前に、「放課後は会ってもいい?」って聞いてきた彼に、私はうなずいて答えた。

「うん。あとで、あんたの家行くよ」

「分かった、授業頑張って」

そう言って電話が切れると、スマホをポケットにしまい、
スカートについたホコリを軽く払って立ち上がった。

テヒョンを避けて逃げてきたけど……
もう戻らなきゃいけない時間だった。

――なのに。

Gravatar

「電話、クソ長ぇな」

曲がり角を曲がって教室へ戻ろうとしたそのとき、
まるで通話が終わるのを待っていたかのように、
壁にもたれていたテヒョンが、ゆっくりと私の方に視線を向けた。

「な、なんでここに……?」

「結構探したよ」

まるで大したことじゃないように言うテヒョンに対して、
私は頭の中が真っ白になった。

(いやいやいや、なんで?どうして?なんで私のことを……?)

でも、そんなこと聞く勇気もなく、
私は彼が話し始めるまで、目をつむって下を向いた。

また、「なんで知らないフリしたの?」って聞かれるかな。
それとも……

「だって、あんたがイケメンすぎて、関わると注目されるから嫌だったの!」

って、正直に言うべき?

そんな妄想ばかりが頭の中で渦巻く中、
彼のしっとりとした声が、私の頭上から落ちてきた。

Gravatar

「……君も、俺のこと怖いの?」

目は潤んでいなかったけど、
その声と表情は――

本当に、寂しそうだった。

聞こえないはずの言葉が、心の奥にそっと触れた。

『君だけは、俺を怖がらないで』