
03
ジミンの表情とオーラは、今まで見たことがないものだった。
だからこそ、ヒヨンはさらに驚き、戸惑ってしまった。
勝手に下りたのは事実だけど、まさかこんなに怒るなんて思わなかった。
ヒヨンは深くうつむき、ジミンの顔を見ることができなかった。
ジミンは深いため息をつき、額に手を当てた。
「言ったよね?下に行くなって。どうして言うことを聞かないの?」
「でも、それが知りたいんです!なんでダメなんですか?」
ヒヨンは、ジミンがどうして自分を下に行かせないのか理解できなかった。
同じ年頃の子どもたちはみんな楽しそうに遊んでいるのに、
どうして自分だけがここに取り残され、彼らと遊べないのか。
ここは素敵だし、持つべきものはすべてあるけれど、
ヒヨンには一緒に過ごす友達がいなかった。
だから、ジミンの言葉に従わなかったのだ。
「…理由があってのことだよ。嘘をつくような人に見える?」
「次からは絶対に勝手に行かないで。いい?」
「でも、ジミンさんは最後まで理由を教えてくれないじゃないですか…」
ヒヨンはジミンを鋭く一瞥してから、ジョングクのところへ向かった。
生き物の姿をしていたジョングクは、水から出て人間の姿に戻った。
「またかよ…いい加減、ケンカやめなよ」とため息をついた。
「水のおじさんは分からないかもしれないけど、森のおじさんは下に行こうとするたびにすっごく怒るんですよ!」
「俺、名前言わなかったっけ?」
「言ってました。チョン・ジョングクって。」
「なら、なんで“水のおじさん”“火のおじさん”って呼ぶの?」
「その方が呼びやすいからです。」
「はいはい、好きにしな」とジョングクは面倒くさそうに手を振った。
隣でヒヨンは休む暇なく話し続けた。
いつもそうだった。ジミンとケンカすると、ヒヨンは必ずジョングクのところに来る。
テヒョンのところに行かない理由?顔が良すぎて緊張するんだって。
ジョングクはこんな日々の繰り返しに少しうんざりしていた。
「…俺だって、ケンカなんてしたくないよ。」

じゃあなんでパク・ジミンの言うことを聞かないの?
「…だって、いつも理由を教えてくれないから。イライラするんです。」
「うーん…じゃあ、成人する日まで待ってみたら?」
「…6年も!?!?」
「うん。その頃にはジミンがなぜそうしたのか、きっと分かるよ。
成人になれば、全部知ることができる年齢になるし、きっと教えてくれるさ。」
ヒヨンはその言葉に心惹かれた。ジョングクの言葉は妙に説得力があった。
少し考えてから、ニコッと笑って大きく頷いた。
「はい!そうします!」
「じゃあ、ジミンに謝ってきな。」
「…謝るんですか?」
「そうだよ。許可もなく下りたのは事実だろう。」
ジョングクの言葉は正しかった。少しプライドは傷ついたけど、悪いのは自分だった。
ジミンはそうやって、ヒヨンを育ててきたのだ。
ヒヨンは今日も「ありがとう!」と叫びながら嬉しそうに手を振り、ジミンのもとへ走っていった。
「…パク・ジミンも、あの子の両親のことがあるから、ああしてるのかもね…」

口は悪いが、心優しい守護神。
ヒヨンはジミンの領域に着くやいなや、彼の名前を大声で呼んだ。
「おじさん!森のおじさん〜!」
でも、姿は見えなかった。
まさか…拗ねた?いやいや、そんなはず…
不安な気持ちで周りを探し、木々の間に座っているジミンを見つけた。
「…おじさん?」
ジミンの機嫌はあまり良さそうではなかった。
森の気配もどこか変で、少し霧もかかっていた。
ヒヨンは自分のせいだと思った。
そっと彼の隣に座ったが、ジミンは視線すらくれなかった。
ヒヨンは少し寂しくなった。
「…おじさん…ごめんなさい…」
アリのような小さな声で言ったけど、ジミンは無反応だった。
ますます心配になったヒヨンは、彼の腕を掴みながらもう一度謝った。
「…おじさぁん、ごめんなさい…ね?」
実は、ヒヨンがそっと座ったときから、ジミンの心は少し和らいでいた。
今回は自分が呼んだわけではなく、彼女の足でここまで来たからだ。
でもちょっと意地悪したくなって、まだ怒っているふりをしていた。
語尾を伸ばす話し方も可愛くて、内心では笑顔が満開だった。
「次からは…おじさんにちゃんと許可取ってから行くからぁ…」
「ごめんなさぁい…」
ヒヨンはジミンの腕を揺らしながら言った。
本当に危ういほど可愛くて、でもギリギリでジミンは我慢していた。
謝罪を受け入れてくれそうにない彼に、ヒヨンは顔を彼の腕にうずめた。
その時、事件が起きた。
ジミンがちょっと長く意地を張りすぎたせいで、ヒヨンは涙をこぼしたのだ。
露のような涙がポロポロと落ち、ジミンは大慌てだった。

「…ち、ちびっこ…泣いてるのか?」
「だって…ぜんぜん話してくれないんだもん…」
ヒヨンの涙のおかげで、ジミンは「からかいはほどほどに」という教訓を得た。
彼はヒヨンを膝に乗せて、優しく抱きしめ、背中をなでた。
ヒヨンもジミンを強く抱きしめ、しばらくしてようやく落ち着いた。
ジミンが「ちょっとからかいたかっただけ」と言うと、ヒヨンは彼の背中をバシバシ叩いた。
思春期だからか、力も強かった。
「うぅ…痛い…」
「もう…許してくれないかと思って、どれだけ不安だったか…」
「ごめん…次からはちゃんとするって約束するよ…」
「わかりましたぁ」
こうして二人は仲直りし、ヒヨンが謝罪したその日、森の気配は元に戻り、霧も消えた。
人々は祈りが通じたと思っていたが、実際はヒヨンのおかげだった。
彼女が霧を生み、彼女が晴らしたのだ。
そして6年が経ち、ヒヨンは成人した。
背も伸び、髪も長くなっていた。
「おじさん!おじさん!!」
大きな木に登って降りると、下にはドラゴンの姿になったジミンが寝ていた。
ヒヨンは彼を激しく揺さぶって起こした。
あまりに大声だったので、他の守護神たちも起きそうだった。
ジミンは大きな口を開けてあくびをし、鮮やかな緑色の目で彼女を見た。
「…まだ朝じゃないのに…なんで起きてるんだ…」
「わぁ、おじさんの口大きい!あ、あの、今日は私、成人なんです!」
ヒヨンが叫ぶと、ジミンは「静かに」とささやいた。
目を閉じかけながら、彼は何度もまばたきした。
ヒヨンは何度も「今日、成人になったんだよ」と繰り返した。
「…まだ日が昇ってない。なら、寝てからにしよう、ね?」
「…たしかに真っ暗だ。でも、眠れないんだよ…」
「…おいで。」
ジミンはヒヨンを抱きしめ、大きな葉っぱをかぶせた。
柔らかくて暖かくて、まるで睡眠薬を使ったように眠気がきた。
ヒヨンの目が閉じるのを見て、ジミンも再び眠りについた。
しかしその時、ジミンの領域に人間が入り込んだ。
眠いのに邪魔され、ジミンはイライラした。
ヒヨンをそっと寝かせ、人間の姿に戻って向かうと、そこには女性がいた。
普段は男性が来ることが多かったが、今日は珍しく女性だった。

「なぜ、ここに来た?」
ジミンが冷たい表情で言うと、女性はすぐにひざまずいた。
「こ、こんな身分の者が…こ、この地に…来てしまったこと、本当に申し訳ありません…ですが、子供を探しています…」
「子供?ここに子供は…」
「夫のせいで子供を失いました…
その子が、ここに捨てられたと聞き…来たのです…」
何か思い当たる節があったジミンは、名前を尋ねた。
「子供の名前は…チョスンイです。」
