2. その顔、何でもバレバレですね
「ライターないです。タバコ吸わないんで。」
「俺も吸わないですよ。」
……え?一日一箱吸ってそうな顔してるのに。
心の中でつぶやいたスンアは、
はっとして反省モードに入った。
あーもう、私って偏見の塊…ゴミだ。クズだ。
ひとり反省会をしていたスンアは、申し訳なさそうにユンギに言った。
「すみません…」

「…え?何が?」
「え、あの…見た目で勝手に判断しちゃって…」
「ああ、それじゃなくて。」
「…はい?」
「なんでわざわざ謝るのか、よくわからなくて。」
本当に不思議そうなユンギの顔。
そう言われてみれば…確かに…
スンアは、ちょっと納得してしまった自分に軽く驚いた。
「うん…そうかもですね。」
「自分の中で勝手に考えたことまで謝るなんて、珍しい人だなと思って。」
「えっ?あ、まぁ…ちょっと小心者なんで…」
ていうか、あなたが思ったより怖かったし…しかも悪口までつぶやいてたし…
口に出さず心の中でだけぶつぶつ言いながら、
スンアは気まずそうに頭をかいた。

「おもしろい人ですね。」
「……え?誰が?」
「あなた。」
この人、一体なんなん…!?
今まで出会ったことのないタイプにスンアの頭は混乱寸前。
しかも、"チャラそうに見えて、妙に礼儀は守る人" って何?
訳がわからない。
無表情だったくせに、ふいに笑って「あなた面白いですね」って。
スンアは冷や汗まで出てきた。
ちょ、ちょっと怖いんですけど…
「えっと…もう話すことないなら、私はそろそろ…」
「ごめん。」
「…えっ?」
唐突に出てきた謝罪に、スンアもユンギも固まった。
は!?今の何!?なんで謝った!?バカなの私!?
ユンギは声を上げて笑った。
考えてることが全部顔に出てるスンアが、ただただ可愛く見えた。
「な、なんで笑うんですか…」
「だって、顔に全部出てますよ。」
「それ、全然褒めてないですからね…」
「でも、俺のことあんまり怖くなくなったでしょ?」
「えっ、なんでそれを…」
「顔見たらわかりますって。」
あ〜もう、なんかこの人に巻き込まれてる感半端ない…
怖いってより、むしろちょっとイラッとするけど…
でも不快ではない。
これって、人生最大の混乱…?
スンアは真っ赤な顔を冷ますように手で扇ぎ始めた。

「ミン・ユンギ。俺の名前です。あなたは?」
「…ナム・スンアです。」
なんで答えたんだ、私…
想像もしてなかったような甘い笑顔を浮かべて、
ユンギが言った。
「また会えたらいいな。いや、きっとまた会えるよ。」
