
_「ありがとうな、ラーテル嬢… 捕まってくれて…
身元さえ確認できたら、お前を大人しく帰すつもりはないぜ…
ちょっとラーテル共に用事があるんでな…」_
「ハッ、笑わせんな… 本当に用事があるかどうかは、見てみないと分からないだろ?」
男は私が負けじと言い返すと、少し驚いたようだった。そうだ、私はラーテルとして負けるわけにはいかない。 特に蛇どもには…! あいつらはいつも**「自分たちは上位種だ」** みたいな顔してるけど、マジでムカつく。
今は外現化もできず、こんな風に縛られている無様な状況だけど… 負けるのだけは絶対に嫌だ。
それに、身元確認をしているということは…
ここは私を狙って誘拐したギャング組織や、ラーテルへの復讐に燃える無法者の集団ではなさそうだ。
つまり、今すぐ殺されるようなことはない。
だったら、強気の態度で出るしかないな。
「もし私が、お前とは何の関係もないラーテルだったら… どうするつもりだ?」
私は皮肉っぽく言った。
蛇獣人たちは私の種族を嫌っているが、私は別に奴らに何もしていない。
「ふーん… そんな可能性は低いと思うけどな?」
男は負けじと答えた。
「もし関係なかったら、こうして縛ったことを謝る気はある?」
「うーん……」
男は少し考えるような素振りを見せた。
「いいだろう。万が一、関係ないなら謝ってやるよ。」
男の言葉に私はニヤリと微笑んだ。
「ほう? そりゃ楽しみだな…
その言葉、忘れるなよ?」
よし!
あの顔で本気の謝罪を聞けるなら、少しは気が晴れるってもんだ。
だが、男は続けて言った。
「その代わり、少しでも関係があったらどうするつもりだ?」
男の言葉に、私は少し考え込んだ。
「…うーん、そうなったら… 好きにしろよ。
どうするかはお前に任せるよ。
好きにしてみろって話だな。」
私の言葉に、男が低く呟いた。
「俺が好きにするって… どんなことされるかも知らねえのに、随分と度胸があるな。」
その後、男は何も言わず、再び鼻歌を歌い始めた。
……沈黙。
この気まずい雰囲気… 最悪だ。
男は、おそらく**「ユンギヒョン」** とやらが身元確認の結果を持ってくるのを待っているのだろう。
でも私は… 退屈すぎて死にそうだった。
何より、この拘束状態がムカつく!
こんなこと、何時代のやり方だよ!?
イライラした私は、男にさらに絡むことにした。
「で? 兄さん、お前はどんな事情があんの?
ラーテルに恨みでもあんのか?」
私の言葉に、椅子にもたれていた男がこちらを見た。
「…やけにうるせえな… ああ、恨みならあるけど? それが何だよ?」
男は面倒くさそうに答えた。
私も負けじと煽り返す。
「へぇ? もしかして、親がラーテルに殺されたとか?」
言った瞬間、後悔した。
男の顔が、一瞬で血の気が引いた。
そして… 蛇のように縦に裂けた瞳孔。
…やばい。
「ハァ… 本当は、ここまでするつもりなかったんだけどな…
まあ、お前と一緒にいる間にブチ切れるよりはマシか…」
「…な、何の話…?」
「いや、単に…
お前がうるさすぎる って話だよ。」
男がゆっくりと近づいてきた。
…怖い。
ちくしょう!
外現化さえできれば、こんな奴にビビることなんてないのに!!
男の肌に、黒い鱗の模様が浮かび上がる。
それを見た瞬間、鳥肌が立った。
人間の状態では耐えられないレベルのプレッシャー。
こいつ… キングコブラか…!
終わった。
「抵抗すんな。
今、お前を放っておくと…
俺が何かしでかしそうだからな。」
男が静かに迫る。
身体の一部を蛇の姿に変えながら…
腕のあちこちに黒い鱗が浮かび上がり、
首元にはキングコブラ特有の模様がはっきりと現れる。
そして、男は私の髪をぐっと掴んで、一気にかき上げた。
近づいた男の口元から、長く鋭い牙が見えた。
「クソッ…またかよ!!」
ガブッ!!!
そして、私は再び意識を失った。
