責任取って、代理さん

エピソード02

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責任取って、代理さん



第1話:V会社、はじめての出社


「は、初めまして…!チョン・ヨジュです!」

「お、新人さんか!営業部の空気が明るくなるな〜!」

「ヨジュさん、あそこの席に座って。わからないことがあればキム代理に聞いてね。」

「顔は怖いし、性格も微妙だけど、教え方は上手いよ。」

大学を卒業して、最初の就職先が V会社 だった。
“はじめて” だからこそもっと頑張ろう、いつも笑顔でいようって決めて、元気よく挨拶した。

ドラマに出てくるような昭和系の上司もいなくて、
みんな思ったより優しくて、
気分良くパソコンの電源を入れて、デスクの整理も始めた。

「えっと…代理さん、すみません」

「これ、どうやるんですか…?」

今さらだけど、私はかなりの機械オンチ。
福利厚生がいいって聞いて必死に勉強して入社したけど、
周りより理解が遅いのは自覚してた。

そして部長の言ってた通り、代理さんはやっぱり怖かった。

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「お前、会社入る前に基本的なことも覚えてこなかったのか?」

「……す、すみません…?」

「福利厚生が良いからってだけで入ったわけじゃないよな?」

「それなりにちゃんと選んでるんだから、そんな働き方してたらクビだぞ。」

「……申し訳ありません…」

「一度で覚えろ。これをこっちにドラッグすれば合体される。」

「あと、このメール。全部書く必要ないだろ。
この長文、誰が読むんだよ。」

「……すみません…」

「こっちはもういいから、先にあれやれ。
こっちは俺がやっとく。」

部長、嘘つかなかった。

顔は神レベルでかっこいいのに、性格はゴリゴリに塩対応。

基本ってわかってるよ?でも誰だって知らないことはあるじゃん?

しかも初対面でいきなりタメ口って何?
「お前」って。私は後輩だけど、社員ですけど。

真面目なのはわかるけど、人の扱いは0点。0点!!!

……でもイケメンだから許す。しかもクール系。ドンピシャ私のタイプ…

「おい、もう昼だぞ。手を止めて飯行け。」

「えっ、もうお昼なんですか?」

「ほら、これ使え。」

「え?代理さんのカード…?」

「今日初日で大変だったろ。キツく言って悪かったな。
ご飯は会社持ち。ついでにコーヒーも飲んでこい。」

「あ、俺の分もな。」

ん?これって、もしかして新手のコーヒー雑用…?

ちょっと微妙だけど、案外そこまで悪い人でもないのかも。
仕事中、何度か私のほうチラチラ見てたし。

気まずかったのかな?
よく見たら耳がほんのり赤くなってて、ちょっと可愛かった。
さすがキム代理さん。( ͡• ͜ʖ ͡• )

「ヨジュちゃん、さっき代理さんといっぱい話してたね?」

「あぁ…たぶん、もう嫌われた気がします…笑」

「えっ、マジで?」

「ちょっとパソコンのこと聞いただけなのに、
“こんなこともできないのか”って…」

「でも結局、代理さんが全部手伝ってくれたんですよ。」

「えっ、それって……めっちゃ気に入られてない?」

「……え?」

「代理さんって、新人にほとんど何も教えないんだよ。
教わったの、ヨジュちゃんだけかも。」

「おまけに、仕事できる・イケメン・能力高いの三拍子よ?
このチャンス、掴んじゃいなよ!」

えっ…?代理さんが私のことを…?
25年間、恋愛経験ゼロの私。
こんな話を聞いたら、即妄想が暴走しちゃうタイプなんだよね。
考えれば考えるほど、キム代理さんって……本当に素敵な人だな。

「代理さん!コーヒーです、ふふふ!」

「ああ、ありがとう。」

「他に何かご注文は…?」

「お前、考えて動けないのか?」

「えっ…?」

「新入社員なら、まず仕事を覚えようとしろ。
誰も頼んでないのに、なんで進んで雑用しようとしてんだ?」

「……すみません。」

「もういいから、謝るのやめろ。
何もないなら、これ部長に届けとけ。」

「部長!こちら、書類です!」

「これ、新人がやったの?」

「えっと、それはキム代……」

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「それ、うちの新人がやりました。」

「おぉ、初めてにしては上出来だな。」

「キム・テヒョンみたいなやつがもう一人増えたな!」

「いやいや、それは…」

「新人入ったし、今日は飲み会でもどう?」

「いいね、飲まなきゃやってらんないし!」

「初日、お疲れさま!」

「あ、ありがとうございます!!」


最初はただの顔だけイケメンで性格最悪な人かと思ってたのに、キム・テヒョンって人…見れば見るほど、実は中身がめっちゃいい人じゃん。