責任取って、代理さん

エピソード03

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責任取って、代理さん




「部長、またですか?」

「だって〜お前が一番仕事できるじゃん〜」

「この部署、私しかいないんですか?」

「押しつけられると仕事が回らないんですけど。」

「…ぐぬぬ…わかった、わかったよ。」

「チョン社員、仕事できそうだから、その書類渡してやって。」

「代理さん!私がー」

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「この書類を全部やればいいんでしょ?」

「……え?あ…はい。」

え、今のなに?
代理さん、私のこと好きとか…ないよね?

キム代理は仕事ができるから、
上司たちはなんでも彼に任せる。
課長に話しかけてる間も、
代理さんの机には山のような書類が積まれていた。

私なんかが心配する立場じゃないけど、
なんかかわいそうで。

だから私が代わろうとしたけど、
彼はチラッと私を見て、無言で書類を取っていった。

…かなり忙しそうだったのに。

「代理さん!私がこれやりましょうか?」

「こんな大事な書類を、お前に任せられるわけないだろ?」

「いや…代理さん、それ以外の仕事も多そうだったから…」

「お前がやらかした後始末の方が大変なんだよ。気にするな。」

「でも…!」

「クビになりたくなきゃ、パソコンの練習でもしとけ。」

顔は神級、頭も良くて仕事もできる。
でも性格?マジで最悪。

しかも、あの量の書類を一日で片付けちゃうとか、
もっとムカつく。

仲良くなりたくて代わりにやろうとしたけど、
私がやったら絶対今日中には終わらない。

「今やってるの終わったら、みんな焼肉屋に集合〜久々の飲み会な!」

「代理さん!飲み会ですよ!」

「俺、耳あるから。」

「わあ…社会人になったらみんなで飲み会って夢だったんですよね!」

「うるさいな。お前、仕事終わったのか?」

「あ、えっと…まだです…笑」

「だろうな。さっさと終わらせろ。」

「…飲み会なのに…」

「今4時半。5時までに来りゃいいだろ。」

「早く終わらせて、一緒に行くぞ。」

…ああ、もう。
さっさと逃げればよかった。


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「え、部長がおごりなんですか?」

「もちろん!お金なかったけど、キム代理が珍しく “新人入ったから飲み行こう” ってさ〜」

「あの人が飲み会誘うなんて、なにそれ?二人なんかあるの?」

「え!?な、なんもないですって!私なんかとキム代理なんて無理ですよ〜」

「だよねぇ。釣り合わないって。」

あーはいはい、正論だね。

私はあんたほど可愛くもないし、
仕事もできない。
ダメダメな人間ですけど、なにか?

最初は「イケメンだけど性格悪い人」って印象だったけど、
今はもう「性格も悪いイケメン王子様」って感じ。

人を不快にさせる天才かもしれない。
なら最初から優しくしなきゃいいのに。
期待させて、勝手に私だけバカを見るって、
どういうこと?

もう、あの顔には騙されないからね。

「はぁ…キム代理ってほんと氷のような人。」

「少しは笑ってくれたら、距離も縮めやすいのに。」

「ヨジュちゃん、あの人はああいう人なのよ。気にしないで。」

「もちろんです!あの冷たさが魅力ですよねっ☆」

魅力…?
生きるために口から出まかせ言ってんじゃないよ、チョン・ヨジュ。

部長の言うとおり、
もう少し愛想よくして、人に優しくした方が
友達できるんじゃない?

私、断言するけど――
あの代理、絶対友達いない。いてほしくない。

まあ、人間だし完璧なわけないけど。
性格悪いっていう致命的な欠点があるのに、
顔で全カバーされてて、なんかズルい。

「なんか…空気死んでない?」

「いいから飲め!今日は私のおごりだ〜!飲んで死のうぜ〜!」

「久々のお酒だなあ〜」

「かんぱーい!飲んで死のう!!」

ほんと、久々の飲み会。

会社入るために頑張りすぎて、
友達ともあんまり遊べなかったし、
飲みにも行けなかった。

お酒は好きだけど、4杯飲んだらアウトな体質。

でも――社会人って、たぶんストレスだらけだから。

今日はもう、飲んで飲んで、全部忘れたい気分だった。

コトン…

「……代理さん?」

「おい、お前飲むのか?」

「飲み会ですし、飲まなきゃでしょ!」

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「ほどほどにしとけよ。明日、後悔すんなよ。」

その顔で、
そんな優しいこと言わないで。

心臓がもたないでしょ。