執着と愛の紙一重

エピソード02

第3章. ここはどこ?

眠たい朝。
うるさいアラーム音に目を覚ました。
昨日飲んだお酒のせいか、胃がグツグツ煮え立っているようで、どうやって家に帰ったのかも思い出せなかった……
ちょっと待って…

「ここ、どこ……?」

目を開けると、白い壁紙にモダンなインテリアの家だった。
うちの家とはまったく雰囲気が違う。
ここが自分の家ではないと気づいた瞬間、心臓がバクバクと音を立てて跳ね上がった。
ありとあらゆる変な考えが頭を駆け巡り、770個くらいのありえない小説が脳内を通り過ぎた。
とにかく逃げなきゃ、という思いで、隣に転がっていたカバンを手に取り、ドアを勢いよく開けた。

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外に出ると、キッチンで水を飲んでいるパク・ジミンが見えた。
逃げ出そうとする私と目が合った彼は、水を飲むのを止めて、にっこりと笑いながら言った。

「よく眠れた?」

『よく眠れた?』なんて…
その一言にはあまりにも多くの意味が含まれていて、私は何とか悪い意味でないことを祈った。
彼を疑わしげに見つめると、ジミン先輩はすぐに「ソファで寝たから、誤解しないで」と笑って付け加えた。

「ありがとうございます……」ジウン

私はとりあえず彼に礼を言い、頭をペコリと下げた。
昨日自分が何をしでかしたのか想像もつかず、とにかく早く逃げたかった。
その時――

「ジウン、ご飯食べてから行きなよ」ジミン

ジミン先輩はテーブルにコンナムルクッ(もやしスープ)とご飯を並べていた。
ちょうどお腹も空いていたので、「いただきます」と言いながら、素直に席に着いた。
ジミン先輩が作ったもやしスープを一口飲むと、彼は緊張した様子で私をじっと見つめていた。
彼の視線が気になって「美味しいです」と微笑むと、彼の表情がようやく柔らかくなった。

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美味しすぎて、私はもやしスープに夢中になったが、ジミン先輩は私をじっと見つめ続けた。
しかも彼の前には、食事が一切置かれていなかった。
私は食べる手を止め、言いにくそうに尋ねた。

「先輩は、食べないんですか?」ジウン

すると彼は、何がそんなに楽しいのか、くすっと笑いながら答えた。

「さっき食べたから大丈夫だよ」ジミン

ずっと見つめられているのが気まずくなり、私は急いで食べ終え、彼に一礼して逃げるようにその家を後にした。



第4章 隣の席

私は急いで家に帰った。
頭の中は「遅刻だけはするな」という思いでいっぱいだったが、
昨日の新入生歓迎会の服のままだと、どう見ても変に思われるだろう。
だから「着替えだけはしよう」と目標を立て、素早く動いた。

家に着くと、うちの犬モンイが出迎えてくれた。
私はモンイに軽く挨拶だけして、ものすごいスピードで髪を洗った。
ざっと冷水で洗い、水が滴らない程度にだけ乾かし、
化粧は丁寧に仕上げた。
目についたブラウスと黒のスラックスを着て、靴下を履き、
最後に玄関で靴を急いで履いた。
たった10分で家を飛び出した。
この速さなら、親でさえ気づかなかっただろう。

何事もなかったかのように大学に向かい、
残り2分で講義室に到着した。
ふう…。でもヘジンの姿が見えなかった。
どうやら今回は別の授業になったらしい。
私はISFP、かなりの人見知りだった。
みんながペアを組んで座っている中、私は誰も座っていない一番後ろの席にポツンと座った。
すでにこのクラスでは小さなグループができあがっているようだった。

講義が始まる1分前、
昨日ぶつかったあの男が教室に入ってきた。

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彼が入ってきた途端、教室内はざわつき始めた。
そして、隣からこんな声が聞こえた。

「ねえ、テヒョン先輩がこの授業取るって聞いて申し込んだんだけどww」
「私もww」
「ここにいる女子たち、ほとんどテヒョン先輩目当てで来たんじゃない?」
「私なんて先輩に合わせた時間割組んだら、火曜日全コマ埋まったしww」

そんな会話に耳を傾けながら見ていると、
"テヒョン先輩" と呼ばれたその人がこちらに歩いてきた。
周囲を見回すと、空いている席は私の隣しかなかった。

心の中で「終わった…」と何度も唱えながら、
彼が一歩一歩近づいてきた。

そして──

彼はバッグを無造作に床に置き、筆記用具とノートを取り出した。
教室が彼の登場でざわめく中、教授が入室し、
出席を取り、挨拶を交わして授業を始めた。

私は急いでノートを開き、せっせとメモを取り始めた。
彼はメモも取らず、ただ講義を聞いていた。

昨日ぶつかったことが気になって、
私は小さな犬型の付箋を取り出し、
そこにこう書いた。

『昨日ぶつかってしまってすみませんㅠ』

そして彼のノートの上にペタリと貼った。

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彼は付箋を読んで──
私をじっと見つめた。
すごく、すごく長い間。

その視線に耐えられず、私は慌てて顔を背けた。
すると彼は付箋に何かを書き込んで、私に渡してきた。

そこには綺麗な字で、

『大丈夫だよ』

と書かれていた。

その一言に私は思わず、ふっと笑ってしまった。

彼は小さく首をかしげ、再び授業に集中した。
私も急いでノートを取り続けた。

授業が終わり、2コマ目の講義に向かうために
バッグをまとめていると、テヒョン先輩が何か言いたげな顔をしてこちらを見ていた。
私はそれに気づき、尋ねた。

「何か言いたいことありますか?」 — ジウン

「その… 君、イ・ジウンって名前だよね?」 — テヒョン

「はい。どうして知ってるんですか?」 — ジウン

「さっき出席取ったときに。
俺はキム・テヒョンって言うんだ。」 — テヒョン

彼が自分の名前を教えてくれたので、
私は微笑みながらこう言った。

「素敵なお名前ですね。」

そう言って講義室を後にし、2コマ目の授業へと向かった。



第5章. 未来のドライバー

今日は4限目で授業が終わり、私は何を食べようかスマホで検索していた。
そんなとき、後ろから聞き覚えのある声がした。

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「昼ごはん、食べるの?」 — ジミン

私は反射的に振り向いた。
急に振り返ったせいか、ジミン先輩との距離がすごく近かった。

「そんな急に振り向いたら、恥ずかしいじゃん」 — ジミン

彼は少し照れたように言い、私は気まずく「は、は、は」とぎこちなく笑った。
ジミン先輩がもう一度「昼食べるの?」と聞くので、私はうなずいた。
私がうなずくと、彼は嬉しそうに笑った。

「やっぱり通じ合ってるね。俺も今日4限で終わりなんだ」

すぐに察した。
つまり『一緒にご飯食べよう』という遠回しな誘いだった。
私は礼儀として「一緒に食べますか?」と聞いた。
すると彼は、待ってましたとばかりに即答した。

『あ、やらかした。』

彼は「美味しい店知ってるからついてきて」と言った。
私は半信半疑ながらもついて行った。
たどり着いたのは、トンカツ屋だった。

私たちは窓際の席に座り、二人ともレギュラーセットを頼んだ。
料理が来るまでの間、私は彼に尋ねた。

「あの...昨日、私何か失礼なことしましたか?」 — ジウン

「失礼?うーん…失礼っていうより、運転めっちゃ上手だったなって」 — ジミン

『運転』
その一言で、頭の中に昨日の記憶が走馬灯のように蘇った。

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「おじさーん!超イケメン!!」

ゴ○ユウ俳優の等身大パネルに抱きつく私。
それを必死に引き剥がそうとするジミン先輩。

やっと引き離されたと思ったら、今度は彼に「おんぶして」と駄々をこねた。
仕方なくおんぶしてくれたジミン先輩。
その瞬間、私は彼の髪を掴み、ラタトゥ○イユのネズミみたいに操作した。

右へ左へ無理やり進ませ、「ブレーキ!」と叫びながら髪を引っ張った。

思い出した私は、ジミン先輩を申し訳なさそうに見つめた。

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彼は「思い出した?」というように微笑んだ。

「髪の量が多くてよかったですね、へへ」 — ジウン

私は彼の髪を心配そうに見て謝った。
ジミン先輩は「大丈夫だよ」と手を振ったが、私は申し訳なさすぎて何度も「何かお返しします」と言った。

「じゃあ…願い事一つ叶えてくれる?」 — ジミン

「それだけで本当にいいんですか?」 — ジウン

「まさか育毛剤でもくれるつもり?」 — ジミン

「言われたら用意しますけど...」 — ジウン

「結構ですwww」 — ジミン

そんなやりとりをしていると、ちょうどトンカツが運ばれてきた。
ジミン先輩は自分の分をカットして、私の分も切り分けてくれた。

「ありがとうございます...」 — ジウン

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「未来のドライバーはたくさん食べないとね」 — ジミン

彼はからかうように言った。
私は昨日の恥ずかしい出来事を思い出して、何も言い返せなかった。

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食べ進めるうちに、髪が邪魔になってきた私は手首のヘアゴムでさっと髪を結んだ。

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その瞬間、彼がじっと私を見ているのに気づいた。
あの、歓迎会で見たあの目線。
でも今回は、もっととろんとした目をしていた。
まるで酔っているかのような。

私は髪を結び終えて彼を見た。
彼も自分の表情に気づいたのか、すぐに表情を戻した。
しかし、空気は妙に気まずくなっていた。

どうにか話題を変えようと、私は彼の腕にあるタトゥーについて話を振った。
すると彼は嬉しそうに、タトゥーの話を始めた。

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彼は腕を見せながら言った。

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「可愛いでしょ?ほら、こうやって手を組むとLOVEってなるんだ」 — ジミン

「可愛い…」 — ジウン

私は小さくつぶやいた。
小さなタトゥーが並んでいて、とても可愛く見えた。
そんな彼を見て、私もタトゥーを入れたくなった。

「もし私がタトゥーするなら、どこが似合いますか?」

すると彼は迷わず答えた。

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「鎖骨だね」 — ジミン

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