雨は一晩止まらなかった。
ソヒは窓辺に立っていた。
カーテンを開けずに、ガラス越しに闇だけ眺めていた。
外で何が起こっても構わない人のように。
病院から出て、邸宅に戻った後、
彼女はほとんど言わなかった。
ジミンはソヒを背中から眺めていた。
何度も話しかけると、
最後に慎重に口を開けた。
「…大丈夫?」
ソヒは答えなかった。
雨がガラスを叩く音だけ部屋の中を埋めた。
ジミンは一歩近づいた。
近すぎないように、
でも遠くならないように。
「…今日は少し大丈夫に見えて」
それからソヒが唇を離した。
「…大丈夫ではありません。」
声は低く、力がなかった。
「ただ…何も考えていません。」
ジミンは頭をうなずいた。
大丈夫という言葉より、
むしろこの言葉がもっと率直に見えて。
ソヒがゆっくり手を上げた。
指先が細かく震えていた。
「…まだ震えます」
ジミンはもっと聞かず、
その手を慎重に包んだ。
冷たかった。
「不思議です」
ソヒが苦々しく笑った。
「終わったのに…もっと怖くなりました」
「何が」
「私が」
ジミンの手に力が入った。
「そんなことないよ」
「あります」
ソヒは首を振った。
「あの人倒れた時…全然後悔しなかったんです」
息をするようにしばらく言葉を止め、
もう一度言った。
「それが一番怖かったです」
ジミンは何も言わなかった。
「…でも、」
ソヒが言った。
「夜になるから、どんどんその顔が浮かびます」
「老昌期?」
「…いいえ。」
ソヒはゆっくり回ってジミンを見た。
「あなた」
ジミンの息がしばらく止まった。
「あなたが血まみれの手で私を抱えていた顔。
…その顔がずっと思い浮かびます」
ソヒは笑おうとしたが、失敗した。
「その時悟りました。あ、この人は…私のせいで傷つけるつもりだな」
「それ――」
「やめなさい」
ソヒが首を振った。
「選択だったという言葉、
守りたかったからだという言葉―
今はよく知っています。」
しばらく沈黙。
「それでもっと怖いです。」
ジミンは唇を押した。
「私とあれば、」
ソヒが言った。
「あなたはこのような選択を続けることになると思います。」
「ソヒヤ」
「いいえ?」
「いつか…本当に死ぬかもしれません」
その言葉にジミンの表情が初めて揺れた。
「私はそれに耐えられない」
ソヒは頭を下げた。
「…人ひとりを殺しても生きている私が、
あなたまで壊すのは――」
言葉を終わらせなかった。
ジミンは結局ソヒを抱きしめた。
強く、緩くもない曖昧な力で。
「やめて。あなたが私を壊したことはない」
「うそ。」
「いいえ。」
ジミンの声が低く鳴った。
「あなたは私を生かした」
ソヒは笑わなかった。
「それではなぜこんなに痛いのですか、みんな」
ジミンは答えなかった。
数日が流れた。
ソヒは体は回復していったが、
心はますます静かになった。
笑って、泣かなかった。
ただ窓の外だけを見た。
ジミンはその姿を見て
一つの結論に達した。
このままではならない。
その夜、
ジミンはテーブルの上に封筒を1つ置いた。
ソヒはそれを見てもすぐ聞かなかった。
しばらくを望むより、
ゆっくりと口を開けた。
「…なんです。」
「飛行機票」
ソヒの瞳が揺れた。
「ロンドン....? …いたずらですよね?」
「いいえ」
ジミンは淡々と言った。
「そこで、ちょっと休んで」
「逃げるってことですか?」
「いや、生きなさい」
ソヒは笑った。
「…私を過ごすじゃないですか」
「守るのよ」
「違いがありますか?」
ジミンはしばらく言わずにいるが、
ゆっくりと頭を上げた。
「あり」
「…なんです。」
「送るのは、また見ないということだ」
ジミンの声が細かく震えた。
「これは―
また連れて行くということだ」
ソヒは何も言わなかった。
「君を愛して」
ジミンが言った。
「だから…隣に置くのが、今は合っていないようだ」
ソヒは頭を下げた。
「私はあなたの隣にいるのが、
幸せだと思いました。」
「私も」
「でも。」
ソヒはジミンを見上げた。
「あなたの顔を見るたびに、罪悪感が先に来ます」
ジミンは笑った。
とても悲しい。
「それで私は失敗しました。」
ソヒは近づいています
ジミンの顔を両手で包んだ。
「…いいえ。」
彼の目が赤くなっていた。
「ありがとう。これまで考えてくれて」
ジミンは息を選んで言った。
「ロンドンに行き、
学ぶ。戦う方法ではない」
「じゃあ、何してるの?」
「バティーは法。
自分自身と」
ソヒはしばらく目を閉じた。
「…ありがとう、…行ってきます」
ジミンは何も言わなかった。
空港の出国ゲートの前。
「連絡—」
ジミンが言おうとして止まった。
「しないでください」
ソヒが先に言った。
「…お互い」
ジミンは頭をうなずいた。
「はい」
「私を忘れないで」
ジミンは笑った。
「それは不可能だ」
ソヒは最後に言った。
「再び来たとき、
逃げません。」
そして戻った。
飛行機が離陸し、
ジミンはしばらくその場に立っていた。
手に残ったのは、
冷えてしまったソヒの体温一つだけだった。
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