眉間が寄るほど強い香りが鼻をついた瞬間、目が覚めた。
いったい何の匂いだ…?
「うっ…頭が痛い…」
重い上半身をなんとか起こした。周囲を見回すと、体が固まった。
…ここはどこ?
確かに死んだはずだ。完璧な自殺を試みたのだから。
それなのに、どうして傷一つなく無傷の状態で目覚めたんだ?
何かがおかしい。
違和感を感じた私は、邪魔な布団を払い、目の前の鏡へ向かった。
鏡に映った自分の姿を見て、言葉を失った。

「…これは…?」
自分の姿じゃない。見たこともない人間だった。
夢でも見ているのかと思い、頬をつねってみたが、痛みを感じるだけで何も変わらなかった。
コンコン—
「お目覚めでしょうか?」
「……?」
目の前の人間もまた、見知らぬ人物だった。
誰が見ても私より年上の人。それなのに、腰を低くして丁寧に挨拶してきた。
「香りが強すぎます。もう少し控えめに焚いてください。」
部屋の隅から煙が立ち上っていた。
窓も閉まっているので、匂いがこもるのは当然だ。だが、あれは何だ?
正体不明の人物は自然な動作で煙を消した。
そして無言の私をしばらく見つめた後、話を続けた。
「登校の時間です。お湯をご用意しました。」
彼は部屋のドアを見つめた。おそらく浴室なのだろう。
この状況をおかしいと思っているのは私だけ?
誰か、この状況を説明してくれ!
私は何も言えないまま、ただ洗った。
その後、ベッドの上に置かれた制服を見て、これが本当に人間が着る服なのか確認した。
「これが…制服?」
混乱も一瞬だった。
衝撃を受けたのは、その制服のデザインだ。
まるで遊んでいる女子高生が着るような短くてタイトなデザインだった。
「お嬢様、ご準備はよろしいでしょうか?」
「ちょっと…待って!」
慌てて制服を着た。
どう頑張っても下がらないスカートを無駄に引っ張りながら、ドアを開けた。
「…車を待機させております。」
私を見る表情が妙だった。
何もしていないのに、緊張しているように見えた。
まるで…私を怖がっているような気がする。
ぎこちなく車に乗り込んだ。
何が何だか分からないまま学校へ向かう自分の状況が、バカバカしくて仕方がなかった。
まるで魂が入れ替わったみたい…
え?もしかして、本当に入れ替わったの?
この状況を説明できる唯一の方法は、自殺を試みた私が、別の誰かの体に入ったということ。
それ以外に、こんな状況があり得るはずがない。
学校へ向かう道中、頭の中は混乱していた。
こんなの、小説やドラマじゃあるまいし。
こんなことが現実に起こるわけが…
そんなことを考えているうちに、学校へ到着してしまった。
「いってらっしゃいませ。」
運転手がドアを開けてくれた。
私は違和感を振り払おうとした。
一体、どれだけの大富豪の体に入ってしまったんだ?
身につけているものだけでも、莫大な金額がしそうだ。
「でも、私何組…? しまった。」
瞬く間に消え去る運転手に、ため息が漏れた。
何の情報もない状態で、どうやって学校生活を送れっていうの!?
とりあえず、学校の中に入った。
正門から感じる生徒たちの視線が、不快で仕方がなかった。
明らかに良くない視線だ。
でも、目が合った途端、みんなサッと逃げていく。
この体の持ち主、いったい何者なの?
ガラガラ—
体が自然と動くまま、適当に教室に入った。
騒がしかった教室は、瞬時に静まり返った。
そして、自分の席はすぐに分かった。
机の上に置かれた高級な香水やアクセサリーを見れば、一目瞭然だった。
席に座るや否や、怒りを滲ませた声が私の名前を呼んだ。

「ハンスジ。もう一度でも騒ぎを起こしたら、殺すって言ったよな?」
ハンスジ。
それが、この体の名前らしい。
だが、この男は誰だ?
高校生のくせに、なぜこんなにも殺気が込められているんだ?
「……。」
「本当に死にたいのか? 何も言わないってことは。」
どう返事をすればいいのか分からなかった。
いきなり殺すとかなんとか。
何も知らない私に向かって、何を言っているんだ。
ただただ、イライラする。
「殺せば?」
「…は?」
男の眉がピクリと動いた。
私は、自殺を試みた人間だ。
死ぬために人生を捨てた。
そして、今すぐ死んで、この訳の分からない状況から解放されるなら、それはむしろ私にとって好都合だった。
「殺すんでしょ? ほら、やれよ。」
淡々と言うと、なぜか男の怒りがさらに増したようだった。

「また何の演技だよ。」
「演技なんかしてないけど?」
「どうせまたくだらないキャラ作りだろ? 話題を集めたいだけの。」
「…勝手に思えば?」
本当に何の考えもなかった。
この女が彼に何をしたのかは知らない。
でも、それは私には関係ない。
私が思うことはただ一つ。
早くここから抜け出したい。
それと、この制服、すごく着心地が悪い。
「頼むから、会社にだけは手を出すなよ。」
「ああ、うん。」
意味は分からなかったが、とりあえず返事をした。
そして、去るかと思いきや、男は振り返って言い放った。

「そのクソみたいな制服、捨てろよ。」
「……?」
何なんだ、この関係は?
