台湾に残る、あの日の約束

EP6 届いた一枚の絵

日本に帰国して、一か月。


台湾で過ごした日々は夢だったんじゃないか。

そう思うほど、日本での生活はいつも通りに戻っていた。

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仕事へ行き、家へ帰り、

夜になると祖父のスケッチブックを開く。


最後のページには、あの日二人で描き足した絵。

ガジュマルの木の下で笑う、二人の後ろ姿。

ページを閉じようとした、その時。

スマートフォンが震えた。


「荷物をお預かりしています。」


台湾からの国際郵便だった。



翌日、小さな箱が届いた。

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差出人は――王 奕翔


思わず胸が高鳴る。


丁寧に包装をほどくと、

枚の額装された水彩画が現れた。


見覚えのある景色。

あの学校の校庭。

ガジュマルの木。

そして、ベンチには小さく二人の後ろ姿が描かれている。


「……きれい。」


裏返すと、手書きのメッセージが添えられていた。


約束は、守るものじゃなくて、

育てるものだって祖父が言っていました。

だから、これは始まりです。

また会える日まで。

― 奕翔


私は何度もその文字をなぞった。


その夜。

見慣れない通知が届く。


『王 奕翔さんから友達申請が届きました。』


思わず笑ってしまう。


「今さら?」


そう呟きながら承認すると、

すぐにメッセージが届いた。


「こんばんは。」


たった五文字。

なのに、胸が熱くなる。


私は少し考えてから返信した。


「こんばんは😊」


送信。


数秒後。


「今日は日本も暑かったですか?」


なんでもない会話。

天気の話。

食べ物の話。

仕事の話。

台湾では毎日一緒にいたのに、

画面越しだと少しだけ照れくさい。






数日後。


ビデオ通話の着信が鳴った。

画面には台湾の青空。


「見えますか?」


彼はスマホを空へ向ける。

そこには、あの学校。


「えっ……学校?」


「祖父に頼まれて、少し掃除に来ました。」


風が窓の外のガジュマルの木を揺らす


私は思わず笑う。

「なんだか、私もそこにいるみたい。」


彼も笑った。

「そうですね。」


少し間が空く。

彼は照れたように視線をそらし、小さく言った。 


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「……会いたいですね。」


突然の一言に、心臓が跳ねる。


「え?」


「……あ。」


慌てて耳まで赤くなる彼。


「違います、その……。」


その姿がおかしくて、私は吹き出した。


「ふふっ。」


彼もつられて笑う。


画面越しに笑い合う時間が、

こんなにも幸せだなんて知らなかった。


通話を切る前。

彼は窓の外を見ながら言った。

「祖父がね。」


「うん?」


「まだ案内していない場所があるって。」


「まだ?」


「はい。」


少しだけ微笑んで続ける。

「だから、また台湾へ来てください。」


私は迷わず答えた。

「うん。また、この学校で。」


通話が切れたあとも、

画面には自分の笑顔が映っていた。


きっと私は――

台湾に恋をしたんじゃない。


あの場所で出会った、

あなたに惹かれ始めている。



──つづく

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