問題があれば削除します。アーティストを貶める意図はありません。
すべての内容は現実とは無関係です。

<コズ動物病院>
ハナ「あなた……けがしたの?」
真っ黒な猫は片方の前足を上げたまま、じっと私を見つめていた。
よく見ると、肉球に少し血がにじんでいた。
たった今鍵をかけた病院のドアを、もう一度開けるしかなかった。
獣医がけがをした子を置いて帰宅するわけにはいかないから。
ハナ「さ〜、おいで。お姉ちゃんがすぐに治してあげるよ〜」
猫「シャーッ!!!」
ハナ「……え?」
生まれて初めてのことだった。
動物たちが私を見て威嚇するなんて。
犬でも猫でもオウムでも、みんな私を見るとまず尻尾を振っていたのに。
ハナ「大丈夫〜。痛くしないからね〜」
そっとなだめながら、やっと診察台に乗せた。
傷を消毒して白い包帯をくるくる巻いてやるあいだ、猫は黄色い目で私を睨みつけていた。
明明「きーん…… きーん……」
診察室の外では、犬の明明がドアを引っかきながらくんくん鳴いていた。
ハナ『この子、なんでまたやきもち焼いてるの……』
治療を終えて、包帯を巻いた足をそっと撫でてやった。
ハナ「できたよ〜。よく我慢したね。もう痛くないよ」
猫は答えず、ぷいっと顔をそらした。
なのに、不思議と逃げはしなかった。
診察台の上で背筋をぴんと伸ばしたまま、私が片づけるのを最後まで見ていた。
ハナ『あなた、なんだか……人みたい?』
昨日から変なことが多すぎるからかな
まさか……いや、そんなはずないよね
<家>
けがをした子をまた路上に戻すわけにもいかず、結局うちに連れて帰った。
でもこの猫、すごく変だ。
私が先に近づくと、さっと避ける。
ハナ「おいで〜。おやつあげようか?」
猫(さっと)
だから黙っていると、後ろからずっとじーっと見てくる。
後頭部がむずむずして振り向くと、そっぽを向く
皿洗いをしていたら、足に何かがコツンとぶつかった。
猫が私の足に頭をすりすりしていた。
ハナ「まあ、あなた……!」
振り向いた瞬間、猫は何事もなかったみたいに向こうへ行って座っていた。
ハナ「あなた、駆け引きの達人だね?」
猫「にゃ。」
その間にしっかり休んだ明明は、また子どもの姿に戻っていた。
明明「おねえちゃ〜ん……あいつ変だよお……」
ハナ「変なのは〜、痛いからでしょ〜」
わちゃわちゃして家の中がいっぱいになるみたいで、なんだか嬉しい。
私が見ているときだけ、包帯を巻いた足をびっこひきながら
猫「にゃあ…… にゃああ……」
世界でいちばんかわいそうな声だった。
ハナ「まあ、そんなに痛いの? おいで、抱っこしてあげる」
私は猫を抱き上げて、おやつまで用意してやった。
それも病院で取っておいたいちばん高いチュールで

明明「おねえちゃ〜ん…… ぼくもチュール……」
ハナ「明明は痛くないでしょ〜。それにこれは明明のじゃないの!」
明明「ぼくも痛い! ここ! ここ痛い!」
明明はあちこち指さしたけれど、傷はひとつもなかった。

明明は、私の腕に抱かれた猫を、口をとがらせて見ていた。
猫はチュールをぺろぺろしながら、明明をちらりと見下ろしていた。
……今の、笑ったんじゃない?
そして私がトイレに行っているあいだ
猫はソファから降りると、ちゃんとした四本足で本棚のてっぺんまで一気に飛び乗った。
明明「……え?」
上から明明を見下ろしていた猫が、しっぽで明明の顔をぺしっと叩いた。
明明「おねえちゃあああん!!! あいつ痛くない!! あいつが先に叩いたー!!」
ハナ「何があったの!?」
私がトイレから飛び出したとき、猫は床におとなしく座って、けがした足を上げていた。
猫「にゃあ……」
ハナ「明明! 痛い子にそんなことしちゃだめ!」
明明「ほんとだもんおお……ほんとに痛くないってえ……」

明明は悔しくて、地団駄を踏んだ。
夕飯の支度をしているあいだ、リビングが妙に静かだった。
静かな子は危ない。
昨日病院でちゃんと習ったのに
リビングに出てみると、床一面が白かった。
テーブルの上のティッシュは全部引き出されて、雪みたいに散らばっていて、
そのど真ん中に、ティッシュを頭のてっぺんまでかぶった明明が立っていた。

明明「おねえちゃん…… これ、ぼくがやったんじゃないのお……」
ハナ「明明!!!」
遠くのソファの上では、猫がきちんと前足をなめていた。
あとで知ったけど、ティッシュを引き出してばらまいたのは猫で、
明明が片づけようと飛び込んできたら、上から残りのティッシュをぽとっと落としたのも猫だった。
でもそのときの私は知らなかった。
ハナ「明明、あなた今日はおやつなし!」
明明「ひぃん……」
私が背を向けると、猫は私の後ろで尻尾をゆらゆら揺らしていた。
めちゃくちゃになったリビングを見て、ため息が出た。
ソファの上の猫と目が合った。なんだかこの家に台風がひとつ入ってきた気分だった。
ハナ「あなたが来てから、家が台風にやられたみたい」
猫「にゃ?」
ハナ「そう、あなたの名前はタプンだ。タプン」
タプン「にゃあ〜」
今度は気に入ったみたいだった。
明明「……ぼくはやだ」
てんやわんやの一日が終わって、あたたかいお湯で体を洗って出てきた。
ハナ「明明〜。もう寝よう〜」
ところが
リビングに子どもが二人いた。
黒髪の明明の隣に、見たことのない黒髪の子どもが、ソファに足を組んで座っていた。

右手には白い包帯をくるくる巻いたまま
子どもは私を見るとにやっと笑って、包帯を巻いた手を振った。
タプン「おねえちゃん、ぼく、まだ痛い〜」
そう言うと、ててっと駆け寄ってきて、私の腕にすぽんと抱きついた。
ハナ「……タプン?」
明明「うそだあああ!!!!!」
タプン登場!
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