番外編:ねえちゃんが眠っている間に
問題がある場合は削除します、アーティストを貶める意図はありません。
すべての内容は現実とは無関係です。
<オオカミ?ワンコ!>
夕飯を食べ終えたハナは、ソファに寄りかかった途端にこっくりこっくりし始めた。
ハナ「むにゃ…お姉ちゃん、ちょっとだけ10分目を閉じるね…」

その10分のあいだに、ちびっこ3人がテレビの前にちょこんと集まって座った。
リモコンを握っていたのはリンリンだった。

誰にも気づかれないうちにチャンネルを回して止まった先は「動物王国」だった。
画面の中では、オオカミの群れが雪原を走っていた。

ナレーター「オオカミは群れを率い、最後まで家族を守ります。」
ミョンミョンの目がきらりと光った。
ミョンミョン「……かっこいい…」
ミョンミョン「ぼくもオオカミだあ! ぼくも家族守るんだあ!」

テプン「お前、子犬じゃん」

ミョンミョン「オオカミと子犬はいとこだってぇ!」
リンリン(小声で)「…ポメくらい?」
ミョンミョン「ポメじゃないもん!!」
ミョンミョンはソファのひじ掛けの上によじ登り、画面の中のオオカミみたいに顎を上げた。
ミョンミョン「アウウウウ〜!!」
でも、意気込みとは裏腹に出てきた声はこうだった。
ミョンミョン「アウ… キュン…」
テプンは床をころころ転がりながら笑った。
テプン「ぷはっ、キュンだって、キュン」

ミョンミョン「もう一回やるう! アウウ〜 キュン!!」
リンリンは何も言わず、ひまわりの種をひとつミョンミョンの前に転がしてやった。
拍手なのか慰めなのかは、リンリンだけが知っていた。
そのときソファの上でハナが身じろぎした。
ハナ「むにゃ… ミョンミョン、静かにして…」

3人はそのまま石になった。
息をひとつも立てずに5秒
ハナがまたすやすや眠ると、
3人は同時にふうっと息を吐いた。
<お菓子大作戦>
一騒動が過ぎると、今度はお腹がすいてきた。
テプン「台所の上の棚にお姉ちゃんのお菓子あったよ、昨日見た」

ミョンミョン「お姉ちゃんの食べたら怒られるう…」

テプン「バレなきゃ大丈夫」
テプンが作戦を立てた。
テプン「ミョンミョンがイスを押して、ぼくが上がる。リンリンはお姉ちゃんが起きてないか見張ってて」
リンリン「…見張りは得意」

ミョンミョンがうんうん言いながら、ダイニングチェアをシンクの前まで押した。
テプンはイスの上でつま先立ちになって、上の棚の扉をそっと開けた。
ガサガサ
3人は同時にソファのほうを振り返った。
ハナは口を少し開けたまま眠っていた。

リンリン(手で丸)
作戦成功
3人は食卓の下にしゃがみ込み、お菓子の袋を1つ分けて食べた。
ミョンミョンはひとつ食べるたびに「おいしぃ…」とささやき、
証拠を消すために、テプンはお菓子のくずを丁寧にはたき落とした。
リンリンは頬にお菓子をせっせとためていた。
食べ終わると、テプンは空の袋をくしゃっと丸めてミョンミョンに渡した。
テプン「お前が捨てろ」

ミョンミョン「なんでぼくぅ!」
テプン「お前が一番食ったじゃん」
ミョンミョン「……それはそう」

ミョンミョンは袋をゴミ箱に入れて戻ってきながら、
口のまわりにお菓子のくずをいっぱいつけたまま、急に足を止めた。
ミョンミョン「…でもこの家でいちばんお兄ちゃんって誰だあ?」
<誰がお兄ちゃんだ!>
ミョンミョン「とにかく! ぼくが一番最初に来たんだから、ぼくがお兄ちゃんだあ!」
ミョンミョンは胸を張って宣言した。
当然テプンが反対すると思ったのに、意外だった。
テプン「いいよ、お前がお兄ちゃんやれ」
ミョンミョン「……ほんとぉ?」
テプン「うん。でもお兄ちゃんなら、こういうのもやらなきゃなんだよね?」
テプンはソファに寝転がりながら、指を一本ずつ折っていった。

テプン「お兄ちゃんなら、弟に水を持ってきてあげなきゃ」
ミョンミョン「水! わかったあ!」

ミョンミョンはとことこと走って、水のコップを持ってきた。
テプン「お兄ちゃんなら、弟にリモコンも持ってきてあげなきゃ」
ミョンミョン「リモコン! はいぃ!」
テプン「お兄ちゃんなら、弟に毛布もかけてあげなきゃ」
ミョンミョン「毛布! お兄ちゃんだからあ!」
ミョンミョンはうれしそうにリビングを行ったり来たりし、
テプンはソファに寝転んで、しっぽの代わりにつま先だけをゆらゆらさせた。
しばらくして、毛布を全部かけてやったミョンミョンが首をかしげた。
ミョンミョン「……あれ? でもこれ、おかしいぞお?」
リンリン「…やっとわかった?」

ミョンミョン「お前ぇ!!!」
こうして始まった第2ラウンドは、ハナの隣の席争奪戦だった。
ミョンミョンが眠るハナの腕枕側を占領すると、
テプンはハナのお腹の上に乗って、丸く体を縮めた。
ミョンミョン「そこ、ぼくの場所だぞお!」
テプン「お腹は場所じゃないけど?」
見かねたリンリンが静かに手を挙げた。
リンリン「…お姉ちゃんの隣は順番にしよう。月水金はミョンミョン、火木土はテプン」
ミョンミョン・テプン「じゃあ日曜は?」
リンリンは答えの代わりに、はにかんで笑うと、ハナの枕元にすっと入り込んで横になった。
リンリン「…ぼく」

静かなリンリンが最後の勝者だった。
ミョンミョン「……ちぇっ」
テプン「……けっ」
2人はぶつぶつ言いながらも、ハナの両脇にそれぞれ場所を取って横になった。
お腹いっぱいで、あったかくて、お姉ちゃんの匂いがした。
ソファの上で、ハナとちびっこ3人はくっついて、そのまま眠ってしまった。
<オオカミの最初の任務>
真夜中だった。
ドン!
玄関のほうから何かが倒れる音がした。
ミョンミョンがぱっと起き上がった。
横を見ると、リンリンは毛布をぐるぐる巻きにしたままぐうぐう眠っていて、テプンの場所は空だった。
ミョンミョン『……こわいよお』
足ががくがく震えた。
もう一度布団の中に戻りたかった。
そのとき病院で看護師さんが言ってくれたことを思い出した。
『ほんとうのお兄ちゃんはね、一番こわいときに、弟たちとお姉ちゃんを守るんだよ。』
ミョンミョンは両手をぎゅっと握った。
ミョンミョン「……ぼくはお兄ちゃんだあ、ぼくはオオカミだあ」

ミョンミョンはひとりで真っ暗な廊下を通って玄関へ出た。
ミョンミョン「ア、アウウウ…!」
震える声で叫んでから玄関を見ると、
そこにあったのは倒れた宅配の箱と、
その横にしゃがみこんで、つま先で箱をとんとん蹴りながら遊んでいる黒髪のちびっこだった。
人の姿でも夜になると目がぱっちり冴える夜行性、テプンだった。
テプン「…なんだよ、お前ほんとに来たの?」
ミョンミョン「お姉ちゃんとリンリンを守らなきゃいけないからあ! ぼくお兄ちゃんだもん!」
テプン「……」

箱を蹴っていたつま先が空中でぴたりと止まった。
テプンはわざと手の甲で顔をこすり、ミョンミョンと目が合うと、そっと顔をそらした。
テプン「……バカ、ただ箱が倒れただけだし」
ミョンミョン「ほんとぉ? よかったあ…」
ミョンミョンはへなへなと座り込み、ふうっと息を吐いた。
テプンは倒れた箱を足でそっと押して、元の場所に立て直した。
何事もなかったみたいに
ミョンミョン「また何か音がするかもしれないからあ、ぼくここにいるう」
テプン「……好きにしろ」
ミョンミョンは玄関の前にしゃがんでドアを見張っていたが、結局その場でこっくりこっくり眠ってしまった。
テプンはソファの上の毛布を両手でずるずる引っ張ってきてミョンミョンの上にぽんとかけると、さっと消えた。

<翌朝>
アラームで起きたハナが身支度をしていたら、
玄関前で毛布をかぶって丸くなって眠るミョンミョンを見て、ハナは首をかしげた。
ハナ「……こいつ、なんでここで寝てるの?」

台所のゴミ箱にはお菓子の袋がひとつ捨てられていて、
ミョンミョンの口のまわりにはお菓子のくずがそのままついていた。
ハナ「ミョンミョン… お前、お姉ちゃんのお菓子食べたでしょ?」
ミョンミョンは寝ぼけた目をこすりながら顔を上げた。
ミョンミョン「……うん?」
テプンとリンリンはその言葉を聞くやいなや、2人そろって知らんぷりをした。
ハナ「ミョンミョン、今日はおやつなし!」
ミョンミョン「ひぃん… ぼくばっかり食べたわけじゃないのにぃ…」

ハナは最後まで知らなかった。
昨夜、この家に小さなオオカミがいたことを
そのときつけっぱなしだったテレビから朝のニュースが流れた。
アナウンサー「城北区の住民の間で話題になった『イケメンうさぎ』が最近姿を消し、
ファンたちが直接探しに出ています。」
画面いっぱいに白いうさぎの写真が映った。
出勤準備をするハナを待ちながら、
玄関に並んで座っていた3人が、同時にテレビのほうへぱっと振り向いた。
テプン「……あいつも?」


