“これ……私、だよね?” ヒロインは写真を手に、リビングの真ん中に立っていた。古い写真だった。少し色あせていて、角もすり減っていた。写真の中には幼い女の子と男の子が三人、並んで立っていた。女の子はぎこちなく笑っていて、その隣の子はふざけてVサインをしていた。別の子は少し後ろで無表情のままカメラを見ていて、一番背の高い子は女の子の肩に手を置いて笑っていた。ヒロインは写真の中の女の子の顔から目を離せなかった。間違いなく自分だった。今よりずっと幼いけれど、その顔はどう見ても私だった。
リビングでは、誰も簡単には答えられなかった。ジョングクはさっきまで持っていたお菓子の袋をテーブルの上に置き、ソクジンはキッチンのほうに立ったまま、じっと写真を見つめていた。テヒョンは窓際に座っていた。彼はヒロインが写真を取り出した時から、一度も視線をそらしていない。ヒロインはもう一度言った。"どうして誰も答えないの?" 声は思ったより落ち着いていた。けれど指先は震えていた。写真を握る手に力が入る。"私だけ知らない話なの?" ジョングクが先に口を開こうとした。"それは……" だがソクジンが低く呼んだ。"ジョングク。" その一言で、ジョングクは口をつぐんだ。
ヒロインは、笑いがこみ上げてくるような気がした。あまりにも呆れて。ここ数日、ずっと変だと思っていた。ソクジンが自分の食べられないものを平然と避けてくれたことも、ジョングクが自分の好きな間食を知っていたことも、テヒョンが雨の日に窓を開けたままにするなと言ったことも。最初はただの偶然だと思っていた。
でも、偶然じゃなかった。三人は自分を知っていた。自分だけが知らなかった。"初対面じゃなかったんですね。" ヒロインはゆっくり言った。"それなら最初から言うべきでした。" ソクジンは静かに頭を下げた。"ごめん。" "ごめんなさい、じゃなくて説明してください。" ヒロインの目が赤くなる。"なんで私がここにいるのか、なんでこの写真に私がいるのか、なんであなたたちはみんな知っている顔で私を見ていたのか。"
ジョングクは我慢できずに立ち上がった。"俺たち、言いたかったんです。" "ジョングク。" "ヒョン、いつまで隠すつもりなんですか。" ジョングクの声が少し上がった。彼はヒロインを見た。いつものいたずらっぽい顔はなかった。代わりに、長く耐えてきた人みたいに固くなっていた。"ヌナはここに住んでたんです。いや、正確には俺たちの隣の家に。すごく小さい頃。俺たち四人は毎日一緒に行動して、しょっちゅう喧嘩して、遊んで、叱られて、それを繰り返してたんです。" ヒロインは息をのんだ。ヌナ。その呼び方が妙に懐かしかった。ジョングクは続けた。"俺は毎日ヌナのあとをついて回ってて、テヒョンヒョンは何も言わないけどヌナばっかり見てたし、ソクジンヒョンは俺たち三人が騒ぎを起こすたびに、いつも後始末してくれてた。"
"でも、どうして私は覚えてないの?" ヒロインの問いに、また沈黙が落ちた。今度は誰もすぐには答えなかった。ソクジンがゆっくりリビングへ歩いてきた。彼はヒロインの前に立ったが、近づきすぎはしなかった。いつものように、ほどよい距離を保った。"ある日突然、引っ越したんだ。何も言わずに。" "私が?" "うん。" ソクジンの声は慎重だった。"その日はひどい雨で、お前は泣いてた。俺たちはついて行こうとしたけど、大人たちに止められて、それから連絡が途切れた。" ヒロインは写真を見下ろした。雨。また雨だった。この家に入ってからずっと、自分につきまとっていた言葉。記憶の向こう側で、何度も扉を叩いていた場面。
その時、テヒョンが初めて口を開いた。"お前はあの日、俺に約束した。" ヒロインの視線がテヒョンへ向いた。テヒョンはゆっくり立ち上がり、ヒロインを見つめた。顔は静かだったが、目はまったく静かではなかった。"また来るって。" "私が?" "うん。" テヒョンはほんの少し笑った。笑っている顔なのに、なぜか悲しそうに見えた。"だから待ってた。" ヒロインは何も言えなかった。テヒョンの言葉があまりにも重かった。待っていた、という言葉が単なる挨拶には聞こえなかった。ずっと閉ざした扉の前に立ち続けていた人の言葉みたいだった。
ジョングクはうつむいたまま指先だけをいじっていた。"最初は本気で腹が立ったんです。どうして何も言わずに行くんだって。けど時間が経つと、怒ることもできなくなった。ヌナがなんで行ったのかも分からないから。" 彼は無理やり笑った。"でも、また会ったら、ヌナは俺たちのことを本当に一つも覚えてなくて。だから余計に腹が立ったんです。うれしいのに、寂しくて、可笑しいのに、イライラして。" ジョングクの声が少し掠れた。"俺は今でも、全部覚えてるのに。" ヒロインは胸の片隅が妙に痛んだ。覚えていないことを申し訳なく思うべきなのか、分からなかった。でもジョングクの顔を見ると、妙にすみません、という言葉が喉元まで上がってきた。
"どうして言わなかったんですか?" ヒロインは聞いた。今度はテヒョンを見ていた。テヒョンはしばらく黙ってから答えた。"お前が怖がるかと思って。" "もう怖いです。" "分かってる。" "じゃあ、なんで隠し続けたんですか?" テヒョンはうまく答えられなかった。その代わりソクジンが言った。"お前が記憶を失ったのか、忘れたいのか分からなかった。" その言葉で、ヒロインの手の中の写真が少し下がった。ソクジンはゆっくり続けた。"人は時々、あまりにもつらい記憶をわざと押しのけたりするだろ。俺たちがそれを無理やり引っ張り出していいのか分からなかった。" ヒロインは唇をきゅっと結んだ。その言葉が正しいのか間違っているのか、分からなかった。けれど確かなことが一つあった。この家にいる間、自分はずっと何かを思い出そうとしていて、同時にそれを怖がっていた。
あの日以来、家の中の空気は変わった。三人はもう完全には隠さなくなったが、だからといって全部を話してくれたわけでもなかった。ヒロインはますます混乱した。ソクジンは相変わらずご飯を用意してくれて、ジョングクは相変わらず騒がしくて、テヒョンは相変わらず静かだった。変わったのは、ヒロインがそのすべての行動を以前みたいには受け取れなくなったことだけだった。ソクジンが「にんじん嫌いだろ?」と聞く瞬間、ジョングクが「ヌナ、前からこのお菓子好きだったじゃないですか」と言う瞬間、テヒョンが黙って玄関の傘を用意しておく瞬間ごとに、ヒロインは知らない記憶の前に一人で立っている気分になった。
結局、ヒロインは荷物をまとめ始めた。夜遅くだった。キャリーケースを広げて、服を適当に詰め込む。この家にこれ以上いるべきじゃない気がした。ありがたい人たちなのに、息が詰まった。自分を知っている人があふれる場所で、自分だけ何も知らない人でいるのは、思っていたよりずっとつらかった。キャリーケースのファスナーを上げようとした瞬間、部屋のドアが静かに開いた。
ジョングクだった。彼はドアの前に立ってヒロインを見ると、表情が固くなった。"行くんですか?" ヒロインは答えられなかった。ジョングクは一歩入ってきた。"なんでですか。俺たちのせいで?" "ジョングクさん。" "またジョングクさんだ。" ジョングクは小さく笑ったが、すぐに笑みを引っ込めた。"行かないでください。" その言葉はふざけていなかった。"覚えてなくてもいいから、ここにいてください。俺たち、知り合いぶらないから。気まずかったら話しかけないし。だから行かないで。"
ヒロインはジョングクを見てから、視線をそらした。"ごめんなさい。" "その言葉は言わないで。" "ここにいると、ずっと変なんです。自分が自分を知らないみたいで。" ジョングクはそれ以上引き止められなかった。手を伸ばしかけて、結局引っ込めた。その時、ソクジンが廊下の端から歩いてきた。彼はジョングクの肩を軽くつかんで後ろへ下がらせた。"ジョングク、ちょっと。" ジョングクは不満そうな顔でソクジンを見たが、何も言わなかった。ソクジンはヒロインを見た。"本当に出ていきたい?" ヒロインはうなずいた。ソクジンはため息みたいに息を吐いた。"じゃあ俺が送る。夜も遅いし。" その言葉のせいで、むしろ泣きそうになった。引き止めない優しさのほうが、もっと痛かった。
最後に現れたのはテヒョンだった。彼は廊下の壁にもたれて立っていた。最初から全部聞いていた人みたいに静かだった。ヒロインがキャリーケースを引いて出てくると、テヒョンはゆっくり体を起こした。"行けば楽になる?" ヒロインは答えられなかった。テヒョンはヒロインのキャリーケースを見てから、もう一度ヒロインを見た。"なら行け。" ジョングクが驚いたようにテヒョンを振り返った。"ヒョン。" テヒョンはジョングクを見なかった。"でも、逃げるつもりなら、また後悔する。" その言葉にヒロインの心臓が沈んだ。また。その一文字が妙に痛かった。ヒロインは歯を食いしばった。"私のこと全部知ってるみたいに言わないで。" テヒョンの目が揺れた。"知りたくて知ったわけじゃない。" "じゃあ何なんですか。" "忘れられたくなくて覚えてた。"
ヒロインはそれ以上聞けず、玄関へ向かった。スニーカーを履いて、ドアを開ける。外ではいつの間にか雨が降っていた。昼から曇ってはいたが、こんなに降るとは思わなかった。雨音が玄関の中まで押し寄せてくる。ヒロインは立ち止まった。妙に足が動かなかった。雨の匂いが鼻先に触れた瞬間、頭のどこかが強く揺れた。古びた路地、濡れた運動靴、幼いジョングクが泣きそうな顔で手を握っていた場面。ソクジンが傘をかけてくれて、大丈夫だと言った声。そしてテヒョンが門の前に立ち、自分を見つめていた目。
"行かないで。"
幼い声が聞こえた気がした。ヒロインは息を呑んだ。頭が割れそうに痛い。キャリーケースの持ち手を握っていた手から力が抜けた。ドン、と音を立ててキャリーケースが床に倒れた。後ろからジョングクが慌てて駆け寄ってくる。"ヌナ!" ソクジンがヒロインの肩をつかみ、テヒョンは雨に濡れた玄関先まで出てきた。ヒロインは両手で頭を抱えた。消えたと思っていた場面が、一気に押し寄せてくる。雨の日、自分を呼ぶ三人。閉まりかける車のドア。最後まで離せなかった小さな手。そして、自分が泣きながら言った言葉。
絶対、また来る。
ヒロインはゆっくり顔を上げた。雨音の向こうに、三人の顔がぼんやり見えた。ジョングクは今にも泣きそうな顔で、ソクジンはヒロインが崩れないよう肩を支えていた。テヒョンは何も言わなかった。ただ、長く待っていた人みたいに、ひどく静かにヒロインを見ていた。ヒロインの唇が震えた。
"私……" 三人の視線が同時にヒロインに届いた。
ヒロインは濡れた息をのみ込み、ずっと埋もれていた名前たちを、初めてきちんと思い出した。
"あなたたち……思い出した。"
次回へ続く >>>
