スイセン

10

ハンドンミンが帰国してからというもの、ソ・ジェヒはイハンに会いに行けなかった。
何を考えているのか、ハンドンミンは毎日のようにソ・ジェヒの家を訪ねてきた。
毎日一輪の花を持って訪ねてきては、茶を飲み、夕食を共にして帰っていく彼の考えは、なかなか読み取れなかった。
結局、彼が帰る時間になると、ソ・ジェヒは門の前で尋ねた。

ソ・ジェヒ:「どういうおつもりで毎日いらっしゃるのか気になりますね、坊っちゃま」

ハンドンミン:「……僕はお嬢さんの婚約者です。それ以上の理由はないと思いますが」

ソ・ジェヒは苦笑を漏らしながら尋ねる。
顔は笑っているのに、声は霜でも降りたように冷たい。

ソ・ジェヒ:「……婚約者、ですって? そんなふうにお考えの方だったんですね。知りませんでしたけど?」

少し言葉を切り、ふつふつと煮えたぎる怒りを抑えたソ・ジェヒは、再び口を開いた。

ソ・ジェヒ:「坊っちゃま、私はあなたのせいで婚約者に捨てられたという汚名を着せられていました。それなのに、こうして訪ねてこようなんて気が起こるんですか?」

ハンドンミンはしばらく何も言えなかった。

ソ・ジェヒ:「言い訳は、聞きたくありません。坊っちゃまが勉強をなさったのか、自由をよく楽しんでいたのか、私は知りようがありませんから」

ソ・ジェヒはそう言い切ると、ハンドンミンの目の前で門を閉めた。
ハンドンミンは数分のあいだ、その場にじっと立っていた。

ハンドンミン:「……ずいぶん……遅かったな」

ソ・ジェヒは自分の部屋に入ると、ベッドにどさりと倒れ込んだ。

ソ・ジェヒ:「……ほんと、呆れた人」

頭の中がぐちゃぐちゃで、長いあいだ眠れなかったソ・ジェヒは、結局夜の散歩に出た。
夜の散歩といっても、家の中の庭をうろつくだけだった。
冷たい夜気の中で息を吐くと、白い吐息が顔のまわりを漂ってから消えた。
そろそろ寒くなって部屋に戻ろうとしたその時、近くで銃声が鳴り、塀の向こうから人が転がり落ちてきた。

ソ・ジェヒは息を呑んだ。
塀の向こうからぶつぶつとつぶやく声が聞こえたかと思うと、何人もの足音が遠ざかっていった。
塀の向こうから落ちてきた人は、浅く荒い息をしているようだった。
ゆっくり男に近づいたソ・ジェヒは、ぎょっとして男をまっすぐ座らせた。

ソ・ジェヒ:「……トンヒョン兄さん..??!」

イハン:「はぁ……ジェ..ヒ…?」

イハンの目はぼんやりとして焦点が合っておらず、瞳は周囲を絶えず探っていた。

イハン:「……ここは……どこ……うっ..!」

イハンの左肩から赤くねっとりした液体がにじみ出ていた。

ソ・ジェヒ:「血が出てるじゃないですか! これは一体どういうこと……」

ソ・ジェヒはイハンを支えて、自分の部屋に寝かせた。
薬をしまってある部屋から薬草を取り出し、冷水に浸し始める。
子どもの頃、冬ごとにひどい風邪をひいて苦しみながら、必死に暗記させられた薬草が、こんな時に役立つとは思わなかった。
ソ・ジェヒは消毒したピンセットで、肩に斜めに刺さった弾丸を抜き取った。
本物の弾丸だった。

ソ・ジェヒ:「いったい何の仕事をしてるからって、弾丸なんか……!」

ソ・ジェヒがさらに何か言う前に、イハンは傷のない腕を上げてジェヒの口をふさいだ。

イハン:「……少し静かにして」

二人とも黙ると、部屋の中は、いや屋敷全体が静寂に包まれた。
そこでようやく、真夜中に自分があまりにも大声で話していたことに気づき、ソ・ジェヒは声を落とした。

ソ・ジェヒ:「……あとで全部説明してもらいますから、覚悟してください……今は……怪我してるから、見逃してあげるだけです」

イハンのファンに人気のストーリー