《Dear, Another Me》
第2部 君はハンノアじゃない- 1話。いつもと同じ一日

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2026.10.05閲覧数 3
教室は生徒たちの話し声であふれていた。
ナム・イェジュンは自分の席に座って窓の外を眺めていた。
そのとき、誰かがイェジュンの肩を軽く叩いた。
「イェジュナ。」
「ん?」
イェジュンが振り返った。
ハン・ノアだった。
「来てたんだ?」
「うん。今日も早いね。」
ノアはいつもと変わらない顔で笑った。
イェジュンも自然に笑った。
「お前も早く来てるじゃん。」
「そうかな?」
ノアが自分の席に座った。
二人は特に何も話さず、それぞれの持ち物を取り出した。
しばらくして、イェジュンがノアを見た。
「おい。」
「ん?」
「今日の昼、何食うの?」
「うーん……給食。」
「それは俺も知ってる。」
イェジュンが笑った。
ノアもつられて笑った。
「じゃあお前が決めろ。」
「やだ。」
「なんで?」
「俺が決めると、お前いつも微妙って言うじゃん。」
「そんなことないけど?」
「あるって。」
二人はしばらく他愛ない話をしていた。
何もおかしくなかった。
ノアはいつも通りだった。
話し方も。
表情も。
しぐさも。
イェジュンの知るノアとまったく同じだった。
昼休み。
二人は並んで食堂へ向かった。
「今日、おいしそうだ。」
イェジュンが食器トレイを見ながら言った。
ノアはうなずいた。
「そうだね。」
「お前、これ嫌いだったよな?」
イェジュンが一品のおかずを指さした。
ノアはしばらくそれを見てから言った。
「あ、そうだった。」
「だろ?」
「でも今日は食べてみようと思って。」
イェジュンは何も考えずにうなずいた。
「うん。食べてみなよ。」
二人は席に着いた。
そして普通に昼食を食べた。
授業が終わったあとも同じだった。
「ノア。」
「ん?」
「一緒に帰る?」
「どこに?」
「家。」
ノアが少し止まった。
そして笑って答えた。
「いいよ。」
二人は一緒に教室を出た。
廊下を歩きながら、イェジュンはいつものようにノアと話した。
今日あったこと。
宿題の話。
来週の試験の話。
本当に何も特別ではない会話だった。
でも誰も知らなかった。
ノアの意識の深いところでは、今もなおハン・ノアが目覚めていることを。
闇の中。
鎖につながれたハン・ノアがかすかに目を開けた。
遠くから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「ノア。」
イェジュンの声だった。
ノアは苦しそうに顔を上げた。
「……イェジュン……。」
だが声は外へ出なかった。
ガチャン。
鎖が揺れた。
ハン・ノアは全力で叫んだ。
『イェジュナ!』
しかし、誰にも届かなかった。
外ではハン・ソアがハン・ノアの顔で笑い、イェジュンと一緒に歩いていた。
「また明日。」
イェジュンが手を振った。
「うん。また明日。」
ノアも手を振った。
イェジュンはそのまま家へ帰った。
まだ何も知らなかった。
今日一日ずっと一緒にいた相手が、
自分の知っている友達とはほんの少し違う存在だということを。
そしてその違いに気づくには、
もう少し時間が必要だった。