この文章はフィクションです

/
オフィスの空気は昨日とは違って重い ヨジュの顔色をうかがう社員たち、心配そうな
目で彼女を見つめてささやく社員たちまでさまざまだった。ヨジュは平気な
ふりをしていつも通りに振る舞おうとしたが、思い通りにはいかない。一方、ボムギュは
冷たいままのヨジュをただ見ていることしかできなかった。そして昼休みが過ぎた
ころ、静かだったオフィスの空気が冷え込む。別の部署のチーム長が呆れた
表情でヨジュの前に現れた。
「ソチーム長、私ね、気になることは我慢できない性格だって知ってるでしょ?」
「え? はい、ユーチーム長さん。どういったご用件で?」
「どういった用件? 婚約破棄したって? なんでとっくに言ってくれなかったの?」
「昨日ニュースで見て、どれだけ驚いたか。私たちはそれさえ
知らずに、結婚祝いに何を贈ろうか悩んでたのよ。それなのに、結婚の準備をしてるふり? 」
いきなり詰め寄るユーチーム長に、なすすべもなくやられるヨジュ
ユーチーム長の態度に呆れる部署の社員たちは、口をそろえて言う
「いや、ユーチーム長さん、ソチーム長さんが悪いわけじゃないのに、慰めるどころか
なんで責めるんですか。本人がどれだけつらいか、それを何が楽しくて言うんですか」
「みなさん、やめてください。私、婚約破棄したのは事実です。ニュースで言っていることも全部本当です
事前にお伝えできなくてすみません。あのとき本当に動揺していて、話すタイミングを
逃しただけなんです」
「いや、一日二日じゃないのに、別れてからかなり経ったっていうのに、私たちがヨジュチーム長でもない
ニュースを見て知れっていうの? そうだろ? 改めて考えても驚くことだ、本当に。
ヨンジュンさんがYJ建設の息子だってことも、その相手がT企業のカン・へウォンだってことも」
自分の部署へ向かうユーチーム長の、ひらひらと手で扇ぐ後ろ姿を見て、よろめくヨジュ
「チーム長、だいじょうぶですか?」
「……はい。仕事をしてください」
社員に、平気だと無理に言ってみたものの、こみ上げる涙はこらえきれなかった。
急いでオフィスを飛び出すヨジュを追いかけるボムギュ。屋上に上がってきた
ヨジュは木の椅子に座り、うつむいたまま泣いている。馬鹿みたいに泣かないと
決めたのに、また泣く。昨日から休まずヨンジュンから電話が来ていたが、出なかった
電源ボタンをそのまま切って、コートのポケットに入れる。その頃、まったく電話を
切っているヨジュを心配するヨンジュンだった。一言の相談もなく、こんな記事を
出すなんて、へウォンの仕業に違いなかった。だが、記事を下ろしたところで大衆は刺激的な
内容しか覚えない。それでも、この事実は変わらない。眉間を寄せた
ヨンジュンはスビンに電話をかけた。
「ああ、スビン。ちょっと会おう。そこで待ってるよ」
/
テヒョンは昨日ホテルで客たちの会話を聞き、スマホでヨンジュンとへウォンの
記事を目にした瞬間、瞳が大きく開き、ヨジュのことが心配になった。爪を噛みながら、間違いなく
へウォンの仕業だと思った。へウォンの部屋のドアを慌てて開け、思わず
大きな声を出したテヒョン。はっとして声を落とし、問い詰めた。
「姉さん、そこまでやる必要ある?」
「なんでまた言いがかり?」
「これ、姉さんが記事を上げたんじゃないの? どうしてこれが乗り換え破局なんだ?」
「テヒョン、あのね、私が言わなくても記者たちが勝手に載せてくれたの
私は何も言ってないわ。でも、それがどうしたの? すごい家の子どもたちが結婚するんだから
韓国の庶民が知るべきじゃない?」
へウォンの言葉に呆れて言葉を失うテヒョン。口を開く前に
実の母が入ってきて、冷えきった空気を支配した。
「なんでそんなに騒がしいの? テヒョン、姉さんは今がいちばん気をつけなきゃいけない時だって言ったでしょ?」
「……」
「へウォン、大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「ごめんなさい、お母さん」
「テヒョン、あなた最近お姉ちゃんにちょっと神経質すぎるけど、何か理由でもあるの?」
「いいえ、ありません」
「そう。あなたたち姉弟はお母さんの大きな夢であり、誇りよ。だから少しは気をつけましょうね」
冷たい表情でテヒョンを横目に見ながら出ていく実母。へウォンが再び口を開く。
「カン・テヒョン、この話はもう終わりじゃなかったの? こうする理由があるはずでしょ
姉さんがチェ・ヨンジュンと結婚するのが、そんなに嫌?」
「ああ」
「は?」
「嫌いだよ。よその男を奪ってへらへらしてるのも嫌だし
その女が苦しむのは、もっと嫌だ」
「は? その女が苦しむほうがもっと嫌だって? ソ・ヨジュのことを言ってるの?」
「……」
「それってあなたとソ・ヨジュに何の関係が……まさか……いや、違うよね?」
「そうだ」
「あんた、正気?」
「姉さんほどじゃない」
「はあ、いいわ、カン・テヒョン。お母さんが知ったら、ただで済むと思う? あとで話しなさい」
テヒョンの目は本気だった。あのときのシン・ジュアの時とは違うと感じたへウォンだった。
会社から呼び出しが来て、仕方なく会社へ戻るへウォンだ。
テヒョンはベッドに寝転んでメッセージ欄を開き、ヨジュに
会いたい を消しては書き込み、
繰り返した。
/
カクテルバー
久しぶりにやつれたヨンジュンを見ると、ヨジュのことを思い出した。ヨンジュンの有様を見ると
ため息しか出ない。ノンアルコールカクテルを一口飲むスビン。
「お前も私の顔見るとため息か? 誰かを思い出すな」(テヒョンのことらしい)
「飯はちゃんと食ってる?」
「なんで? 私、そんなにひどい?」
「……」
「私が任されてるプロジェクトがあって、それがすごく厄介なの」
口元は笑っているのに、目は悲しそうだ。まるでヨジュを見ているみたいだった。もどかしさに
カクテルを一気に飲み干すスビンを見ると、ヨンジュンの瞳が大きくなる。
「スビン、何かあったんじゃないよな?」
「仕事は何もないわ。酔っちゃいけないからノンアルで飲んでるの」
「誰が聞いた?」
「私を呼んだ理由があるんでしょ」
「……」
「なんでヨジュが心配なんだ?」
ヨジュという言葉に目を見開くヨンジュン。昨日から連絡も取れず、携帯の電源も
切れていたので、スビンに気づかれるかと思ってこんなふうに会ったのだった。
瞬間、スビンの目つきが鋭くなった。
「ヨジュに連絡がつかないの。あなたなら分かるでしょ」
「何を知りたいんだ?」
「あの記事のことよ。ヨジュが見たんでしょ? そうでしょ? だから私の連絡を取らないんでしょ」
「財閥の子どもたちが結婚するって、韓国の人間が知らないわけないだろ
あからさまに宣伝してるんだ。ヨジュのことは気にするな。お前みたいなクズは忘れてるから」
スビンの言葉に、諦めたようにうつむいたまま、気が触れたように笑う。
「……ヨジュを連れて逃げようか?」
「まさか」
「行けるってば」
「くだらないこと言うな」
「……」
「ヨジュは元気にしてるから心配するな」
「会いたくて狂いそうなのに」
「あんたのやってることを見て、会いたいなんて言える?」
乗り換え破局? 笑わせる。浮気したのはお前なのに、なんで乗り換え破局に仕立て上げるんだ!?
「……」
「乗り換え破局はともかく、妊娠? それでヨジュを二度殺すつもりか、このクズ」
拳を握りしめ、カクテルを一気に飲み干すスビン。
ヨジュに会いたいと口にするくせに、ふたりが同じだと思っているスビンは、もどかしい
気持ちで酔いたいが、ヨジュのためにこらえてみる。
ㅡ
コメント🫶
ドロドロかと思えばドロドロじゃない、ドロドロみたいな内容🤯
VR見てくるね 🫠🫠🫠
