ジソク短編集
画面の向こうのいちごシャンプーの香り

정화랑
2026.07.24閲覧数 47
人生最高の車内カラオケタイムを45分間走り抜けたあと、私たちはいとこの兄の家の近くにある公園へ向かった。ただのありふれた公園じゃなかった。私といとこの兄が毎年夏にしていた伝統の場所だった。名付けて「公園スピードラン」。何歳になっても、私たちはいつも公園のコースを誰が早く抜けるか賭けて、夕飯を食べに家まで全力で走って帰っていた。誰か特別な人... 私にとっていちばん特別な人と、この大切な思い出と場所を分かち合いたかった。
今回は車までのレースだった。子どもの頃に感じたよりもずっと深いときめきが心臓を突いた。私は恥ずかしそうに手を伸ばして彼女の手を握り、彼女の目をまっすぐ見つめた。
「つまり、あのブランコの間を通って、階段を上がって、滑り台で下りて、あの飛び石を渡ったら、また車まで走って戻ってくるんだ。準備はいい?」
彼女は顔いっぱいに明るい笑みを浮かべてうなずいた。もう楽しそうにしているのを見て、気持ちがずいぶん楽になった。
「3、2... 1!」私は叫びながら前へ猛然と突進した。
'わざと負けてあげようか? それとも勝って、勝利のキスをしてって言おうか? それも喜んでくれるかな?'
考え事をしすぎてぼんやりしていたせいで、彼女がもう最後の障害物に着いていたことに気づかなかった。私が慌てて追いかけたが、彼女がわずかの差で先に車体にタッチした。彼女はその場でぴょんぴょん跳ねてゲラゲラ笑い、やがて息が切れたのか路肩にへたり込み、車にもたれてはあはあしていた。私は吹き出して、彼女の隣に並んで座った。
「優勝記念のプレゼントに何がほしいですか?」
「ごはん。おなかすいた」彼女は笑いながら言った。「飛行機、ほんとに長かったんだもん」
「これ見せるのに夢中で、ごはん食べさせるの忘れてた! ごめん」私は今にも泣きそうな顔でぐずった。
「大丈夫。うちに帰ってデリバリー頼もう? 帰り道に何を食べるか決めよう」
私はにっこり笑ってうなずき、彼女の手を取って立たせた。
デリバリーアプリには食べ物があふれていて、韓国料理にあまりなじみのない彼女がたった一つ選ぶのはとても難しかった。彼女は私のスマホ画面をずっとスクロールしながら悩んでいた。おいしそうなものが見つかるたびに声が一段高くなるのに、すぐに今じゃないかもと気が変わっていた。
ようやく家に着いたとき、彼女は久しぶりに食べるなじみのある料理、ジャージャー麺に最終的に決めた。『ほかのメニューは明日から挑戦する』といいながら。
ひと口食べるたびに嬉しそうに体を弾ませる彼女を見て、私は思わず笑顔になった。疲れて見えたけれど、その姿すらたまらなく愛おしかった。私、ほんとにこの子に完全にハマったのは間違いない。
「飲み物、もう少しもらえる? どこにあるかよく分からなくて」彼女は口いっぱいにジャージャー麺をもぐもぐさせながら訊いた。
私はうなずいてコップを受け取り、立ち上がった。だがその拍子に体をひねってしまい、食卓の上にあったソースと飲み物を彼女の白いシャツに全部こぼしてしまった。私たちは二人ともショックでそのまま固まった。私がどうしていいか分からず慌てふためいてパニックになっていると、逆に彼女は大笑いした。
「だから白い服は着ちゃだめなんだってば。荷物はまだホテルだし、今すぐ着替える服もないのに」
私は急いでティッシュを押しつけ、それから着替えられそうな服を探しに自分の部屋へ駆け込んだ。
「ベッドの上にシャツを一枚置いてあるから、とりあえずそれに着替えて! 私がここで起こした事故をさっさと片づけておくから」
彼女は私が指した方へうなずきながら歩いていった。
「この服、どうするの?」しばらくして振り向いた私の目の前で、彼女が汚れたシャツを両手で持ち上げたまま立っていた。
返事をしようとした瞬間、声が出なかった。私のシャツを着た彼女の姿が、あまりにも小さくて、なのに大きく見えたからだ。私にとってもオーバーサイズでゆったりしたシャツだったのに、彼女が着ているのを見ると、この服がどれだけ大きいのか改めて実感した。じっと私を見て、不思議そうに笑う彼女に、頬が一気に熱くなるのを感じた。私は黙って彼女の手から濡れたシャツを受け取り、ランドリールームへ向かった。可愛すぎて口角が下がらず、一人で声を殺してくくっと笑った。
リビングに戻ると、彼女は伸びをしながらあくびをしていた。長時間のフライトに時差ぼけまで重なって、疲れが一気に来たみたいだった。私はソファに座る彼女のそばへ寄り、そっと距離を詰めた。できるだけ自然で格好よく肩に腕を回すタイミングをうかがっていると、彼女がふっと笑った。
「抱きしめたいなら、そのまま抱きしめていいよ。そんなふうに、してないふりしなくていいから」
自分の姿がおかしくて苦笑いをこぼし、結局私は彼女をやわらかく腕の中に引き寄せ、そのままソファに楽に身を預けた。こうして画面越しじゃなく、実際に顔を合わせて同じ空間にいるのは初めてだった。彼女の髪から漂うほのかなストロベリーシャンプーの香り、やわらかな髪質、私の腕の中にもっと心地よく潜り込んでくる気持ちいい重み、そして少しずつ落ち着いていく彼女の呼吸... まさに天国そのものだった。この瞬間が永遠に終わらなければいいのに、と思った。私は彼女の頭頂にそっと口づけし、自分もより楽な姿勢で目を閉じた。
「愛してる」
「私も愛してる」