[ピンサ恋愛] 貴公子

第12話。ぎこちない直球

授業が終わって講義室を出た途端、携帯が鳴った。

 

お姉さん、どこですか?

 

私、講義室の前。

 

私、今行きます。

 

私はくすっと笑った。

昨日あんなに自信満々に言ってたのに。

 

今日はもたつかないですよ。

 

いったいどれだけうまくやるのかと思った。

 

 

*

 

 

しばらくして、廊下の端からウォンビンが歩いてきた。

私を見つけた瞬間。

ぴたりと止まった。

目が合った。

そして少しの静寂。

 

"...お姉さん。"

"うん。"

"...こんにちは。"

 

私はつい吹き出した。

 

"なにそれ。"

"...なんですか?"

"昨日なんて言ったっけ?"

 

ウォンビンは少し考えてから目をそらした。

"...覚えてないんですけど。"

"今日はもたつかないって言ってたよね。"

"あ。"

 

ウォンビンの耳が赤くなった。

 

"...それは。"

"失敗?"

"...はい。"

"ほんと、あなためっちゃ面白い。"

 

ウォンビンは唇をぎゅっと結んだ。

それから、勇気を出すみたいに私の隣へ近づいてきた。

 

"でも今日は、僕がデートコース決めました。"

"デート?"

"...はい。"

 

ウォンビンは言ったあと、自分でも戸惑ったみたいに俯いた。

"いや、ただ...一緒に遊びに行くってこと。"

"デートって言ってもいいけど。"

"..."

 

ウォンビンが私を見つめた。

"本当に?"

 

私は笑ってうなずいた。

 

"うん。"

 

その言葉に、ウォンビンの顔が少し明るくなった。

 

 

*

 

 

ウォンビンが連れて行ってくれたのは、学校の近くに新しくできたセルフ写真館だった。

 

"ここ?"

"はい。"

"こういうところ、来たことある?"

"初めてです。"

"でもお姉さんと撮りたくて...."

 

私はつい笑みがこぼれた。

私と会うために、あれこれ調べてくれたらしい。

ブースに入ると、画面にカウントダウンが始まった。

 

5

4

3

2

1

カシャ。

 

写真を確認すると、ウォンビンの表情はあまりにも固まっていた。

"ふはは。"

"なんですか。"

"なんでそんなに固まってるの?"

"...緊張してて。"

"写真撮るのに?"

"...お姉さんと撮るから。"

 

一瞬、笑いが止まった。

ウォンビンは自分が何を言ったのか気づいたみたいに、すぐ視線をそらした。

 

"もう一回撮ろう。"

 

二枚目の写真。

今度は私がウォンビンの隣に寄り添った。

 

"笑って。"

"..."

"ウォンビナ。"

"はい。"

"笑って。"

 

私は指でウォンビンの口角をそっと上げた。

カシャ。

 

写真が撮れた瞬間、ウォンビンはそのまま固まった。

 

"どうしたの?"

"...なんでもないです。"

"耳、赤くなってるよ?"

"暑いからです。"

"ここが?"

"...はい。"

 

私は結局、笑った。

 

"ほんと可愛い。"

"...お姉さん。"

"ん?"

"その言い方、やめてください。"

"なんで?"

"もっと緊張するんです。"

 

 

*

 

 

写真を選んで出る道。

私たちは近くのカフェに寄った。

写真を見ながら笑っていると、ウォンビンが私が選んだ写真を熱心に見つめていた。

 

"これ、僕も欲しいです。"

"なんで?"

"...気に入ったので。"

"何が?"

"写真です。"

 

私は何も考えずに写真を一枚手渡した。

 

"持っていって。"

 

ウォンビンは慎重に写真を受け取り、バッグに入れた。

そのあとは、ふつうにカフェで話をした。

 

 

*

 

 

家に帰る前、雑貨屋の前を通りかかった。

私はショーケースに置かれた小さなキーホルダーを見て足を止めた。

 

"あ、これ可愛い。"

"買うんですか?"

"ううん。"

 

私は笑ってまた歩き出した。

 

"ただ可愛かっただけ。"

 

ウォンビンは少しのあいだショーケースを見つめていた。

 

"...行きましょう。"

"うん。"

 

私は何も知らないままウォンビンについていった。

 

 

*

 

 

家の前に着いたときには、いつの間にか夜になっていた。

 

"今日は楽しかった。"

"僕もです。"

"写真もよく撮れたみたいだし。"

"はい。"

"今度また撮ろう。"

 

ウォンビンが笑った。

"...はい。"

 

私は手を振った。

 

"入るね。"

 

数歩歩いたときだった。

 

"お姉さん。"

 

後ろからウォンビンの声が聞こえた。

振り返ると、ウォンビンが私を見ていた。

 

"...どうしたの?"

 

ウォンビンは少しためらってから、私のほうへ近づいてきた。

そして私の手をほんの少しだけ握った。

私はそのまま止まった。

ウォンビンも驚いたみたいに手を離そうとした。

でもすぐに、慎重に口を開いた。

 

"...もう少しだけいてから帰っちゃダメですか?"

 

心臓が一瞬、大きく跳ねた。

 

"なんで?"

"...今日、別れるのが名残惜しくて。"

 

私は何も言えなかった。

初めて会ったときは、人とちゃんと目も合わせられなかった子だったのに。

そんなウォンビンが今は、私の指先をつかんでいた。

それが妙に胸をときめかせた。

 

"...わかった。"

 

私はもう一度、遊具広場のベンチに座った。

ウォンビンも私の隣に座った。

少しの沈黙。

それからウォンビンがバッグから小さな封筒を取り出した。

 

"これ。"

"なにこれ?"

"プレゼント。"

 

封筒を開けると、さっき雑貨屋で見たキーホルダーが入っていた。

私は目を大きく見開いた。

 

"これ、さっきのやつじゃん。"

"...はい。"

"あなたが買ったの?"

"はい。"

"いつ?"

"お姉さんが見てないときに。"

 

私はキーホルダーを手のひらの上に乗せて、しばらく見つめた。

 

"私がただ可愛いって言っただけなのに。"

"覚えてました。"

"...なんで?"

 

ウォンビンは少し私を見つめた。

 

"お姉さんが好きだって言ったから。"

 

なんてことない言葉なのに。

妙に心があたたかくなった。

 

"私、こういうの初めて受け取った。"

"本当ですか?"

"うん。"

 

私はすぐバッグにキーホルダーを付けた。

"きれい。"

"よく似合ってます。"

 

ウォンビンが笑った。

その顔を見ていたら、また心臓が妙に高鳴った。

可愛い後輩だと思っていただけなのに。

今日はやけに男の人に見えた。

私は無意味にキーホルダーばかりいじっていた。

 

"...ありがとう。"

"大したことじゃないです。"

"そんなことない。"

 

私はウォンビンを見つめた。

 

"すごく好き。"

 

ウォンビンの耳がまた赤くなった。

それを見て笑みがこぼれた。

それに、家に入ってベッドに横になってからも。

さっき私の指先をつかんだ感触が、ずっと頭から離れなかった。

 

'...大変だ。'

 

どうやら私は。

パク・ウォンビンのことを、少しずつ好きになっているみたいだった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

いや、でも私だけお姉さんって見えてますか????

修正しようと入ると、全部ヌナって書いてあったんですけど................

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