[태山憑依文] 3つ目の結末

12話。ひとりで行こうとする人

— ドンミン視点 —

 

おかしいと感じたのは、あの日のエレベーターからだった。

 

目を開けた瞬間、頭の中に何かが流れ込んできた。

車の中、ブレーキ、砕けるガラス、そして腕の中に抱いていた人。

確かに初めて経験する場面なのに、生々しかった。

息ができなくなるほど。

 

それからも似たような場面が次々に割り込んできた。

順番もなく、前後もつじつまが合わなかった。

ある日は手をつないで歩く場面、ある日は車がぶつかる音。

ヨジュを見るたび、そのうちのひとつが飛び出してきた。

 

最初は、ただ夢がまだ覚めきっていないせいだと思った。

でもヨジュがコーヒーを差し出したとき、手を引っ込めた瞬間に感じたあの感情は、夢なんかじゃなかった。

確かに前にも同じように手を引っ込めたことがあった。そのときも今みたいに胸が痛んだ。

 

ウナクと資料室に並んで座っているのを見たときに込み上げたあの嫉妬も、初めて感じる感情じゃなかった。

もっと昔から、もっと深いところから上がってきた感情みたいだった。

 

全部を説明することはできなかった。

なぜこんな場面が割り込んでくるのか、これが本当にあったことなのか、それともただ妙な予感なのかさえわからなかった。

 

だからヨジュにはちゃんと話せなかった。

わからない、整理できたら話す、と言ったのは嘘じゃなくて本当だった。

 

確かなのはひとつだけだった。

あの場面の中で、ヨジュはいつも自分より先に危険な側に立っていた。

そしてその結末は、いつだってよくなかった。

 

今回もヨジュが何かをひとりで背負おうとしているのを見て、あの場面がまた重なって見えた。

理由を全部説明できなくても、今回ばかりは知らないふりで逃げられなかった。

 

会社のサーバーに入って、ソンイルキャピタルの資金の流れをもう一度開いた。

前は四半期末ごとに似たような穴ができては、精算前にこっそり埋められていた。

でも今回は、その穴が埋まらないままそのまま残っていた。

ソンホ室長のところで、もう止められなくなっているという意味だった。

 

なら、なぜ止められないのかが問題だった。

ソンホひとりで決められる金額じゃないなら、その上で誰かが止めているか、遅らせているということだった。

 

結局、知り合いの先輩にそれとなく聞いた。

ソンホ室長の決裁ラインの上に、何があるのか。

 

危ないとわかっていても、やめられなかった。

 

 

 

— ヨジュ視点 —

 

 

 

朝からソンイルキャピタルの資料を抱えていた。

過去3年分の取引履歴を日付ごとに整理しているところだった。

 

似たようなパターンが何度も繰り返されていた。

四半期末ごとに似た金額が似た口座へ流れ、精算前にこっそり埋められるという形だった。

 

今回みたいに埋めきれずにやり過ごしたことはなかった。

給湯室のほうで水をもらおうとしていたら、通話中のドンミンに出くわした。

 

声は抑えていたけれど、全部聞こえた。

「…だから、ソンホ室長の決裁ラインじゃなくて、その上に何があるかを見るなら、どのサーバーログを見ればいいんですか。」

 

心臓がどんと落ちた。

ウナクが突き止めたのとまったく同じことを、ドンミンがひとりで探っていた。

ドンミンが遅れて人の気配に気づいて振り返った。目が合うと、通話を急いで切った。

 

「…いつからそこにいたんですか。」

「…さっきです。」

 

嘘だった。ほとんど聞いていた。

 

「聞いたことは、気にしなくていいです。ただ業務上……。」

「業務上って、役員級の決裁ラインのサーバーログをなぜ見るんですか。」

 

言い方がきつくなった。

ドンミンの顔がこわばった。

 

でも返ってきたのは謝罪じゃなくて質問だった。

 

「…そっちは、どうしてそんなことを知ってるんです。役員級の決裁ラインがあるって、普通は知らない話ですけど。」

 

言葉に詰まった。

それはウナクを通して知ったことだった。

簡単には説明できないほうは、自分も同じだった。

 

「…それは今重要じゃないです。業務上っていうのは、嘘ですよ。」

「はぐらかさないで答えてください。どうして知ったんですか。」

 

今度は引けない質問だった。

ふたりとも、相手に同じことを聞いていた。どうして知ったのかと。

 

「…私も、突き止めた経路があります。でもそれは、ドンミンさんがなぜひとりで動いたのかより先に出す話じゃないです。私にはひと言も言わず、ひとりでここまで調べていたんですよね。」

 

ドンミンは何も答えられず、視線をそらした。

その反応だけで、もう答えだった。

さらに問い詰めたそうだったが、ドンミンが先に引いた。

 

「…わかりました。そっちがそれをどうやって知ったのかは、あとでもう一度聞きます。」

 

流されたのではなく、先送りにされた質問だった。

その質問がいつまた戻ってくるのか、そのとき何と答えるべきか、まだ決めていなかった。

 

 

 

*

 

 

 

午後、資料室でウナクと向かい合って座った。さっき聞いたことをそのまま伝えた。

ウナクの顔が険しくなった。

 

「…ヒョンが、どうしてそれを。」

「だからです。私の知らないうちに、ひとりで動いていたんです。」

「そのライン、僕もやっと端っこだけを追ってるところなのに。ヒョンがそれを直接覗こうとしたら、かえってもっと早く引っかかるかもしれません。僕より目立つ位置にいるんだから。」

 

不安がいっそう深くなった。

 

「…そっちは? 何かもっと出ました?」

「少し。役員級の決裁欄に、英字のイニシャルがひとつだけ出ました。『S』で署名されてるんですけど、それだけじゃまだ何もできません。」

 

ウナクが声をさらに落とした。

 

「でもそれより、昨日家の前でその人をまた見ました。数日見なかったのは、ただ休んでたみたいです。」

 

足から力が抜ける感じがした。2週間。その数字が、もういっそう近く感じられた。

 

「気をつけてください。家に入るときはひとりで行かないで。」

「そっちもです。ヒョンをひとりで動かせば、いちばん先に危険になるのはヒョンです。」

 

間違ってはいなかった。ドンミンがひとりでさらに深く入れば、守ろうとしたものがむしろ早く崩れるかもしれなかった。

 

 

 

*

 

 

 

退勤間際、廊下でドンミンをもう一度呼び止めた。

 

「…どうしてひとりで調べようとしたんですか。」

 

ドンミンはしばらく黙っていて、ようやく口を開いた。

 

「…そっちがひとりで何かしてるって、感じでわかりました。ウナクと何度も別々に会ってることも、最近ずっと表情が張りつめてることも。」

「それで。」

「…ただ、放っておけなかったんです。僕も、何であれ一緒に知っておくべきだと思って。」

 

声に震えが混じっていた。

 

「怖い気がするから、距離を置くって言ったじゃないですか。なのにひとりでこんなことを探り回るのは、怖くないんですか?」

「怖いです。でも、そっちがひとりで危なくなるよりは、そのほうがいいと思ったんです。」

 

その言葉に胸がちくりとした。避けると言っていた人が、避けながらも結局同じほうを見ていた。

 

「…じゃあ、もうひとりでやらないでください。私も一緒に知らないと、どっちがもっと危ないかわかりません。」

 

ドンミンはしばらく私を見て、それから小さくうなずいた。

 

「…その代わり、僕もひとつだけ聞きます。そっちがそこまでやる理由、僕のためですよね。」

 

否定できなかった。

 

「…ええ。ドンミンさんのためです。」

 

ドンミンはもう問い詰めなかった。

代わりに、初めて、逃げずに目を合わせた。

 

距離を取っていた側と近づいていた側が、今は同じ方向を見て立っていた。

家に帰ってカレンダーを見た。

2週間。

もう、それぞれ別々に数える数字ではなかった。

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