퇴勤途中、ドンミンがまたその質問を切り出した。
"…そちらは。部長級の決裁ラインだってこと、どうやって知ったんですか。まだ答えてくださってませんよ。"
もう先延ばしにはできない質問だった。
ひと息整えて、口を開いた。
"…ウナクさんと、数週間前から一緒に探ってました。ソンホ室長のところ、その上に誰がいるのか。"
ドンミンはしばらく何も言わなかった。
"…そのとき、資料室で二人がくっついてたのも。"
"はい。あれでした。"
"…じゃあ、あの日私が無駄に嫉妬しただけだったんですね。"
苦い笑いが混じっていた。
不機嫌な笑いではなかった。
"先に言えなくてごめんなさい。証拠もないのに、ドンミンさんが信じている人を疑えなんて言えなかったんです。"
"…分かりますよ、その気持ち。僕もそちらを守るために同じように隠してたから。"
"私も分かります。だから余計にごめんなさい。同じ理由で隠していながら、私だけが悔しがっていたんですから。"
それぞれ別の理由で隠していたことが、結局は同じ場所で出会った。
*
ドンミンは少し歩いてから、また口を開いた。
"…じゃあもうウナクも一緒に見ましょう。三人で別々に動くより、足並みをそろえたほうがいいです。"
"それはだめです。"
返事があまりに早く出た。
ドンミンが少し驚いた顔をした。
"どうしてです。"
"…ただ、人が増えるほど危険も増えるからです。"
"そうやって逃げないでください。さっきまでウナクと一緒に探ってたって言ったじゃないですか。人が増えて危ないのが問題なら、僕だってもう増えた人間です。"
もっともな話だった。
それでもすぐにはうなずけなかった。
"…僕を信じてないんですか?"
"そういうことじゃないです。"
"じゃあ何ですか。どうして特に僕だけ、この中に入れるのを嫌がるんです。"
ドンミンの声には、寂しさがにじんでいた。
理由を言わなければ、この人はずっと寂しがるだろう。
そしてその寂しさは、三回とも自分が作り出したものだった。
"…座って話しましょう。長い話なので。"
近くのベンチに並んで座った。
街灯の明かりが遠くて、お互いの表情は半分闇に隠れていた。
それがかえって、話しやすくしてくれた。
"…私、実はこれが三回目です。同じ人生を三回目に生きてるってことです。"
ドンミンは何の反応も示さなかった。
信じがたい話を聞くと、みんなああして呆けるものなのかと思いながら、話を続けた。
"最初の二回は、ドンミンさんと私、二人ともこの事件で死にました。最初は車のブレーキが故障して橋の上で、二回目は精算日に当て逃げで。どっちもドンミンさんが私をかばって、一緒に死んだんです。"
声の震えを隠せなかった。
"だから今回は一人で引き受けようとしたんです。好きだという気持ちは全部見せても、この事件だけはドンミンさんを外しておきたかった。ウナクさんを巻き込んだのも、ドンミンさんまで引き入れないための回り道でした。"
しばらく何の音もしなかった。
聞こえるのは風の音だけだった。
信じてもらえるとは思っていなかった。
なのにドンミンの顔に最初に浮かんだのは、疑いではなく、何かが噛み合ったような表情だった。
"…あの場面、あれだったんですね。"
"…え?"
"私に何度もちらついてた場面です。車、ブレーキ、割れるガラス。それが本当にあった出来事だってことですよね、今。"
二人が同じ瞬間を抱えていたのだと、今になってちゃんと向き合って確かめた。
"…じゃあ、なぜ一人で全部背負おうとしたんです。僕ももう経験したことだって言うのに。"
"経験したのは本当ですけど、覚えてるのは私だけだったからです。ドンミンさんはただ感覚で知ってるだけで。きちんと分かってるのが私一人だから、責任も私一人が負えばいいと思ってました。"
"…なんでそれが一人で負うべき責任なんです。僕だって同じように二回死んだ人なのに。"
間違ったことは言っていなかった。
それでもすぐには答えが出なかった。
"…僕を信じてないんですか?"
"そうじゃなくて。"
"じゃあ何ですか。二回も僕のせいで先に死んだって言いながら、三回目はどうしてまた一人でその場所に立とうとするんです。"
言葉に詰まった。
ドンミンが近づいてきて、手を取った。
"…一人であの長い時間を全部背負ってたんですね。二回も僕を先に送って、それでもまた一人で耐えてたんだ。僕は覚えてすらいないのに、そちらだけが。"
声が震えていた。
我慢してきたものが、その手のひと触れで一気に崩れた。
涙が先に落ちた。
"…今まで一人で、どれだけ。"
言葉を最後まで続けられなかった。
ドンミンはそのまま引き寄せて抱きしめた。
胸に寄りかかったまま、三つの人生を通して初めて声を上げて泣いた。
"…ずいぶんつらかったんですね。"
その一言で、涙がさらにあふれた。
ドンミンは背中を静かに撫でながら、泣き声が落ち着くまで何も言わずにただ抱きしめていた。
しばらくして、少しずつ息が落ち着いていった。
ドンミンが額を合わせてきた。
"…もう一人にはしません。何を経験しても、また何を経験することになっても。"
その言葉の終わりに、まず額に口づけた。
そしてゆっくり、慎重に唇が触れた。
短い口づけだったのに、三つの人生を通していちばん鮮明な瞬間だった。
最初の二つの人生では、こうして何もかも知ったまま最後まで一緒にいたことはなかった。
隠さず、逃げず、お互いの重さを分け合うのは今回が初めてだった。
"…ありがとう。"
"ありがとうって言うのは僕にじゃないです。一緒に行くんです、もう。"
その言葉を聞いてやっと、本当に一人じゃないんだと実感できた。
ついに誤解が解けて気持ちを確かめ合う瞬間!!!!!!
ストーリー、ちゃんと理解できましたか???
気になることがあれば、いつでもコメントを残してください!!! 🩷
