[태山憑依文] 3つ目の結末

第15話。名前ひとつ

翌朝、資料室に先に来ていたのはウンハクだった。

机の上に書類を一枚広げていた。

 

「…これを見てください。」

 

決裁欄の片隅に、前に見たあの英字イニシャル『S』の横へ、小さな社員番号コードが打たれていた。

 

「昨日ほかの書類で、もう一つ見つけました。今回は社員番号の後ろの桁まで出てきました。」

 

ヨジュは息を殺してそのコードを見つめた。

 

「…これ、照会できますか?」

「一人じゃ無理です。人事システムのアクセス権限が必要なんですけど、僕にはありません。」

 

ドンミンが書類を受け取り、コードを読んだ。

 

「…この先頭、BNDコードじゃありません。外部コードです。うちの社員番号体系と違います。けど少なくとも、BNDの社員じゃないってことですね。」

 

 

 

*

 

 

 

二日後、ヨジュはソニルキャピタル側の古い書類を漁っていて、同じコード形式を見つけた。

取締役会のオブザーバー名簿、いちばん下の小さな文字。

社員番号コードの横に、今回は名前がついていた。

 

イ・サンヒョク。

 

指先が震えた。初めて見た名前だった。

ソンホの上にいるというその人の、実体のある名前。

 

すぐにウンハクへ電話をかけた。

 

「…イ・サンヒョクです。ソンホ室長の上にいる人、名前はイ・サンヒョクでした。」

 

電話の向こうで、ウンハクはしばらく何も言わなかった。

 

「…その名前、決裁欄で一度もう一回見た気がします。探し直します。」

 

 

 

*

 

 

 

その日、仕事が終わる頃、携帯が鳴った。

ウンハクだった。

ちょうど隣で一緒に歩いていたドンミンも、スピーカー越しにその声を一緒に聞いた。

声がひどく震えていた。

 

「…さっきソンホ室長と会いました。廊下で急に呼び止められて、最近忙しいのかって笑いながら聞かれたんです。」

「…それで?」

「決裁ラインの資料をしょっちゅう見ていると聞いた、業務範囲を越えるのはお互いに良くないって。ほどほどでやめろって意味みたいでした。」

「…それだけですか?」

「はい。でも、あんなふうに笑いながら言うのが、もっと怖かったです。全部知ってるって感じでした。」

「…今どこですか。一人ですか?」

「会社の前です。」

「動かず、そこにいてください。僕とドンミンさん、すぐ行きます。」

 

十分も経たないうちに、二人は走って飛び出した。

ウンハクの顔は真っ青になっていた。

 

「…大丈夫ですか?」

 

「大丈夫です。ただ警告されただけで、行っちゃいました。」

 

ドンミンがウンハクの肩を短く抱き寄せた。

 

「…お疲れさまでした。これからはそのライン、僕とヨジュさんが受け持ちます。ウンハクさんは完全に手を引いてください。」

「でも、二人だけで残ったら……。」

「大丈夫です。ウンハクさんまでさらに危険になるよりはましです。」

 

ウンハクが言い返そうとしたが、まだ収まらない息を吐いて、ただうなずいた。

そのとき初めて、ドンミンがふと思い出したように口を開いた。

 

「…イ・サンヒョクって名前、思い出しました。昔、会社の忘年会で、部長がその名前を呼びながら電話に出るのを聞いたことがあります。すごく丁寧に。そのときは、ただ外部の取引先の人なんだろうと思ってましたけど。」

 

少しずつ、断片がつながっていった。

ソンホが一人ではないのは分かっていたが、その上にいる人物が会社の中でもむやみに扱えない存在だと、ようやく実感した。

 

 

 

*

 

 

 

ウンハクを家まで送り届けて戻る道、ヨジュの足取りは何度も遅くなった。

 

「…どうしたんです。」

「もうそのライン、私とドンミンさんが見るんでしょ。ソンホがウンハクさんのところにああやって直接出てきたなら、私たちにも同じように来るんじゃないですか。」

 

ドンミンは足を止め、ヨジュに向き合った。

 

「来るかもしれません。けど、今度は一人じゃないでしょう。」

「それでも怖いです。ウンハクさんの顔を見たら、次は私かドンミンさんかもしれないって。」

「…怖いのは当然です。けど、もう一人にしておくほうが僕はもっと怖いです。」

 

ドンミンはヨジュの手を取って、指を絡めた。

 

「…どうなっても、今回は一緒です。もしまた何かおかしなことが起きても、一人で行かせることはしません。」

「…そんなこと言わないでください。またそうなるんじゃないかって。」

「そういう意味じゃありません。そのぶん一緒に行くってことです。何が起きても、あっちだけ先に行かせるようなことはないってことです。」

 

ヨジュは足を止め、ドンミンを見上げた。

目尻が熱くなった。

ドンミンがヨジュを抱きしめた。

 

「…だから、怖くても、一人で怖がらないでください。」

 

その言葉で、震えが少しずつ落ち着いた。

 

 

 

*

 

 

 

数日後、ヨジュとドンミンは二人で資料室に残り、イ・サンヒョクという名前をもう一度掘り下げた。

 

「…ドンミンさん、その忘年会、もっと詳しくは思い出せませんか?」

 

「あのとき部長が電話を受けながら、『常務』って呼んでた気もします。確かじゃないですけど。」

「BNDの人じゃないって言ってましたよね。だったら常務って呼ぶ相手なら……。」

「…うちの親会社側かもしれません。BNDはソニル持株の傘下ですから。」

 

ドンミンはノートPCを開き、ソニル持株側の役員名簿を探した。

何度か検索した末、一行にその名前が引っかかった。

 

「…ありました。ソニル持株の取締役です。」

 

指先が冷たくなった。

ソンホの上にいたその人は、BNDの社員ではなく、BNDを持つ会社側の人間だった。

 

「だからBNDの社員じゃなくても、ソンホ室長はむやみに手を出せなかったんですね。」

「…一週間以内に、これをどこまで掘り下げられるかが問題ですね。」

 

ヨジュがきっぱりと言った。

二度の人生で経験した、あの日がまた浮かんだ。

 

「…そうですね。気をつけて進むしかありません。」

 

ドンミンがヨジュの手をそっと握った。

 

「それでも、今度は一人じゃないから。」

 

その言葉で、緊張が少しずつほどけた。

 

夜、家に戻ってカレンダーを見た。一週間。数日前より、数字はぐっと減っていた。

減っていく数字と同じだけ、一つの名前がくっきりしていった。

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