[태山憑依文] 3つ目の結末

第16話。流れていった場所

数日間、ヨジュはソンイルキャピタルから流れ出た2億4千万ウォンの流れを逆にたどっていた。

ひとつの口座から別の口座へ、その口座がまた別の口座へ。

以前はソンホ実長のところで終わっていた流れが、今回はもう一段階先まで行っていた。

 

最後の口座の名義人欄。指先が止まった。

ソンイル持株。

すぐにドンミンを呼んだ。

 

「…ここです。お金はソンイル持株に入っています。ソンホ実長が抜き出した金が、結局イ・サンヒョク側の会社に入ったんです」

 

ドンミンが画面をのぞき込み、息をのんだ。

 

「…これなら、単なる横領じゃなくて指示されてやったってことじゃないですか」

「そうです。ソンホは実行、イ・サンヒョクは受取。これなら証拠になります」

 

 

 

*

 

 

 

その日の午後、空気がおかしくなった。

ウナクから連絡が来た。BNDサーバー側へのアクセス記録が昨日付で全部削除されたというのだ。

 

「…誰が消したんですか?」

「管理者権限でです。私も止められませんでした。ログというログは全部消えてました」

 

ドンミンの顔がこわばった。

 

「…僕らが何を見つけたのか、気づかれたんです。それ以外に、このタイミングで全部消す理由なんてありません」

 

心臓が速く打った。証拠を見つけてから半日もたたないうちに、向こうも動き出した。

 

「…うちの資料は?」

「それは私のパソコンにしかないので大丈夫です。でもこの速さなら、次は口座の資料かもしれません」

「…これ以上遅れる前に動かなきゃ」

 

 

 

*

 

 

 

夜、三人は急いで再び集まった。

 

「…金融監督院か、警察の経済犯罪捜査隊か、どこかに行かなきゃ。これ以上引き延ばしたら、向こうが先に資料を消します」

 

ヨジュが言った。ウナクがうなずいた。

 

「金監院のほうがいいと思います。横領資金の流れを追うのはそっちの専門ですから、資料さえ渡せばすぐ調査に入るはずです」

「明日です。明日の朝すぐ行きましょう。精算日が明後日だから、その前に終わらせないと」

「…じゃあ、一緒に行きましょう」

 

ウナクが当然のように言った。ヨジュが首を振った。

 

「…いいえ。私ひとりで行きます」

 

ドンミンの表情がそのまま固まった。

 

「…どういう意味ですか、それ」

「資料を持って三人で一緒に動くほうが、かえって危ないんです。ソンホ実長側が今いちばん気にしてるのがこの資料でしょう。三人まとめて露出するより、私ひとりで持っていくほうがいいんです」

「その言葉、ついこの間、僕に直接言いましたよね。ひとりで抱え込もうとしてウナクさんを巻き込んで、僕だけ外したって」

 

ドンミンが低く言った。

ヨジュは一瞬、言葉を失った。

 

「…またひとりで背負うのを、始めるんですか?」

「そういうんじゃなくて—」

「違くないです。危ないと思ったらひとりで引き受ける、そういう癖じゃないですか。僕もウナクさんも知ってます」

 

ウナクが慎重に口を挟んだ。

 

「…僕も兄さんの言うとおりだと思います。ひとりで行ったほうがいい理由、今のところそちらが挙げたこと以外ないです」

「…でも」

「だめです。明日は一緒に行きましょう。三人で」

 

ドンミンはヨジュの手をぎゅっと握った。これ以上言わせないようにするみたいに、強く。

 

「…何があっても、今回は最後まで一緒にいます」

 

ヨジュは口を閉じた。

負けそうな顔ではあったが、心の片隅はまだ負けていなかった。

 

 

 

*

 

 

 

ウナクが先に帰り、ドンミンが家まで送ってくれた。

 

「…ドンミンさん、一つだけ絶対に覚えておいてください」

「何ですか」

「二回とも、死に方は同じでした。車です。最初はブレーキ、二回目はひき逃げ。明日行く道では、車に気をつけてください。大通りだけ、歩道の内側で」

 

ドンミンは足を止めてヨジュと向き合った。ふざけた気配ひとつない顔だった。

 

「…わかりました。三人ともそうやって行動しましょう。ウナクさんにももう一度言っておきます」

「…ありがとう。こんなこと言っても、信じてくれて」

「信じない理由がありません。二回も経験した人の言葉なんですから」

 

ヨジュはそこでようやく笑った。

ドンミンがその肩を引き寄せて抱きしめた。

 

「…明日は、僕も緊張します。そっちひとりを緊張させたりしません」

「…さっきの話、まだ気にしてる?」

「気にしてるんじゃなくて、怖いんです。そちら、さっきの表情を見る限り、完全に諦めた顔じゃなかった」

 

胸がひやりとした。間違いではなかった。

 

「…連絡が途切れたら、僕は黙ってません。そのときは本当に全部放り出して追いかけます」

 

冗談めいた口調ではなかった。

 

額が触れ合った。短い口づけのあと、ドンミンが低くささやいた。

 

「…明後日の朝は、ただ一緒に起きるだけの、普通の日だったらいいのに」

 

その言葉に胸がじんと熱くなった。

 

「…そんな日、来ます」

 

 

 

*

 

 

 

家に戻ってカレンダーを見た。

丸をつけたその日付が目の前にあった。

そうしないと約束したのに、何度もその言葉が心に引っかかった。

 

 

 

*

 

 

 

翌朝、約束した地下鉄駅の前にウナクが先に来ていた。

ドンミンもすぐに到着した。

 

「…ヨジュさんは?」

「まだです。電話も出ません」

 

さらに数分が過ぎた。

ドンミンがもう一度電話をかけた。

呼び出し音だけで、出ない。

 

そこでようやく、メッセージが一通届いた。

 

「先に行ってます。心配しないで」

 

ドンミンの顔から血の気が引いた。

 

「…くそ」

 

低く息をのみ、そのまま体の向きを変えて走り出した。

 

「兄さん! どこ行くんですか!」

 

ウナクが後ろから叫んだが、答える暇はなかった。

昨夜のあの表情が、そこでやっとまったく別の意味で読めた。

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