2回目では、すべてを突き止めた時にはもう遅かった。
今回はそうなる前に先手を打つことにした。
危ない賭けだとは分かっていたが、黙ってまた同じ日を迎えるよりはましだった。
退勤時間、BND側のガラス扉の前で待った。
ドンミンではなく、別の人を見ようとして立っているのは初めてだった。
ほどなく見覚えのある顔が出てきた。
まだあどけない顔、軽い足取り。2回目では何か月もかけてようやく見つけた顔を、今回は名前も知らないまま先に見つけた。
"…あの。"
"…はい? 私ですか?"
ウンハクは困惑した顔で足を止めた。見知らぬ相手にいきなり呼び止められたのだから当然だった。
"キム・ウンハクさん、ですよね。"
"…え、どうして僕の名前を……。"
"ソンイルキャピタルの口座のほう、承認欄に番号を上げてますよね。末尾が5321の番号で。"
ウンハクの顔から血の気が引いた。逃げるように半歩下がった。
その半歩で心臓がどきりとした。ここでそのまま振り返って走り去られたら、次に何をするかは目に見えていた。ソンホのほうに電話をかけること。
"…どちら様ですか。"
"敵ではありません。むしろ反対側です。その番号、ソンホ室長のほうであなたを引き入れるときに使ったものでしょう。今からでも手を引きたいなら、少し話しましょう。"
言いすぎた。しかも、早口すぎた。
初対面の相手に、ここまで確信を持って押し切ったことはなかった。
今さら取り消すこともできなかった。
ウンハクがそのまま背を向けて行ってしまえば、次の瞬間ソンホ側がどんな手を使うか分からなかった。
ウンハクはしばらく私を見つめた。
瞳が忙しなく動いた。
逃げるか、声を上げて人を呼ぶか、それとも別の手を使うかを探る目だった。
その沈黙が長引くほど、心臓が締めつけられた。
やがてその目に、怯えた色と、何かがばれたという安堵のようなものが混じって浮かんだ。
"…あなた、いったい何なんですか。本当に会社の人でもないし、警察でもない。"
"会計事務所の社員です。まあ、知るしかない事情があるとだけ言っておきます。"
"そんなの、どうやって信じろっていうんです。"
"信じなくてもいいです。その代わり一つだけ聞きます。今みたいに続けていて、最後にいいことになりますか?"
ウンハクは黙った。その沈黙がもう答えだった。
"信じるにしても信じないにしても、今のあなたにとって一番危ないのはあっちです。私のほうじゃありません。"
ウンハクが何も言えずに立っている間に、釘を刺すように付け足した。
"明日の午後にまたお会いしましょう。資料室に来てください。誰もいない時間に。"
*
その夜、事務所に一人残ってモニターをつけた。
ソンイルキャピタルの帳簿、2億4千万ウォンが抜けているその行が、そのまま表示されていた。
あの穴を埋めるのにウンハクが手を出したなら、証拠もその手の中にあるということだった。
明日になれば分かるはずだった。
*
翌朝、事務所のコーヒーポットの前でドンミンと顔を合わせた。
マグを2つ取り出し、そのうち1つを差し出した。
"…これ、どうぞ。"
ドンミンはマグを受け取らず、私を見た。表情が複雑だった。
"…どういうつもりですか。"
言い訳はいくらでもあった。コーヒーを淹れたついでに、通りがかりに思い出して。前はいつもそんなふうにごまかしていた。
今回はそうしたくなかった。
"…ただ、ドンミンさんに気があって差し上げてるんです。"
ドンミンの目が揺れた。
受け取るかどうか、手が一度浮いたが、結局そのまま下がった。
"…忙しいので。"
短く言って背を向けた。
その手が空中で止まってから落ちる瞬間を、見逃さずに見た。
受け取りたいのに受け取らない手だった。
2回目で自分が何度もしていた仕草とまったく同じだった。
断られたマグを手にしたまま立って、それでも笑った。
あのとき自分がなぜあんなふうに手を引っ込めたのか、今はもう痛いほど分かる。
惹かれる気持ちを知られたら、どうにかして引きずり込まれてしまう気がしたからだ。
その気持ちを知ってしまった以上、押し返されても構わなかった。
今回は諦めるつもりはなかった。
*
午後、廊下の奥の資料室でウンハクとまた向かい合って座った。
昨日、その場で押さえておいた約束だった。
"…そちらの事務所で見ているソンイルキャピタルの帳簿、そこに空いてる金がありますよね。その口座たち、私が直接動かしたものもいくつかあります。"
ウンハクはそう認めた。
だが、手にしたものを差し出すことは何もなかった。
まだ証拠まで渡すつもりはないらしかった。
"それで、私は何をどうすればいいんですか。"
"今すぐ何か出せと言ってるわけじゃありません。考える時間、必要なら取ってください。その代わり長くは待てません。"
"…どうして私を信じて、そんな話をするんです。私がそのままソンホ側に全部伝えたらどうするんですか。"
"そのときは、そのときでしょう。それでも声はかけてみるべきでした。"
ウンハクはしばらく私を見て、結局視線を落とした。
"…考えてみます。それしか今は言えません。"
確答ではなかった。
それでも拒絶でもなかった。
今はそれで十分だと思った。
ちょうどそのとき、ガラス扉の向こうを通り過ぎるドンミンと目が合った。
ウンハクと頭を突き合わせて座っている姿は、遠目には別の絵に見えてもおかしくなかった。
ドンミンの足が止まった。
一瞬よぎった表情は、さっきまでのあの無関心さとはまるで違っていた。
目尻がわずかに細まり、足を出しかけてもう一度止まるのが見えた。
'…あれ、まさか。'
ドンミンはすぐに視線を外してまた歩き出した。
足取りはさっきより少し速くなっていた。
けれど、その短い隙に見えた顔は、隠そうとしても隠しきれない顔だった。
さっきコーヒーを断ったときのあの無関心さとはまったく違う、尖った顔だった。
ウンハクはその後ろ姿を見てから、何か分かったように小さく笑った。
"…あの人、今、完全に勘違いしてるみたいですけど。"
"…そうみたいですね。"
"ほどいてあげないんですか?"
"私たちが何をしてるかは言えないので……"
"どうやら、かなり秘密めいてますね。"
冗談めかして笑って流したが、実際に誤解を解くつもりはなかった。
本当の理由を話すには、ウンハクを探っていることから、なぜそうするのかまで全部説明しなければならない。
それは、ドンミンを巻き込まないと決めた誓いを、その場で破ることだった。
むしろ嫉妬だと勘違いさせておくほうがよかった。
その誤解がドンミンをもっと傷つけると分かっていても、今はそれがいちばん安全な選択だった。
*
退勤間際、廊下で書類を整理しているとドンミンと顔を合わせた。
いつもならそのまま通り過ぎる間柄なのに、ドンミンが先に足を止めた。
"…ウンハクと、何かあったんですか?"
声はいつもより硬かった。
何でもないと流してもよさそうな質問だったが、尋ね方に棘があった。
"…ただ、仕事の話を少し。"
"仕事の話を、資料室で、あんなにくっついて?"
言い終わる前に、ドンミン自身もまずいと思った顔になった。
今の言い方がどう聞こえたか、遅れて気づいたらしかった。
"…いや、そういう意味じゃなくて。"
"分かってます。そういう意味には聞こえませんでした。"
本当は、まさにその意味に聞こえた。
それでも、そう言ってあげたかった。
ドンミンは口を閉ざして視線を逸らした。
いつもの無関心そうな顔に戻ろうとしていたが、耳の先が少し赤くなったのは隠せなかった。
"…ただ、気になって。あいつ、ちょっとああでしょう。人にぐいぐい行くっていうか。"
間違ったことではなかったが、今のこの状況にふさわしい言い訳でもなかった。
気になる、とただそれだけ言えばよかったのに。
わざわざウンハクを引き合いに出すほうが、かえって多くを語っていた。
家に戻って、手首の壊れた時計をいじった。
前は自分がそうだった。
好きなのに、好きだの一言が言えなくて、むやみに線を引いて距離を置いた。
今はドンミンがそうしていた。
気になってるの一言で済むのに、その言葉をまっすぐ言えず、妙にウンハクを言い訳にしていた。
隠さないと決めたのは自分なのに、肝心の言えない言葉を抱え込んでいるのは向こうのほうになっていた。
役割が完全に入れ替わった気分だった。
