テサンは廊下をうろうろしている。
自習室の前に部活の申込書を出さないといけないのに、まだ道を覚えていないので、自習室がどこなのかわからない。
「どこの学校に地図が貼ってないの……」
エレベーターと階段の周りまで行ったのに、学校案内図はなかった。
「あの……」
「はい?」
「どこへ行かれるんですか?」
女子生徒が一人、声をかけてきた。制服が緑色だったので、3年生らしかった。
「あ、 自習室……」
「自習室は3階にあります。行くと音楽室が見えるので、そこで左に行けば見えるはずです。」
「あ、はい、ありがとうございます……!」
テサンはぺこりと頭を下げた。女子生徒は少し微笑むと、階段を下りていった。
「キム・ヨジュ……」
その短い間に見た名札に刻まれた名前を、テサンは何度も噛みしめるようにして覚えた。今度会ったらお礼くらい言わないとな、と決意しながら。
テサンは結局、読書部に申込書を提出した。部活紹介に書かれていた読書討論や図書館探訪みたいな探訪はしたくなかったが、うるさい教室で本を読むのはあまりに大変だった。
『まあ、筋の通る理由なら何でもいいだろ。』
///
「迷ったのか?」
ヨジュは遠くから一人の男子生徒を見つけた。周りをきょろきょろ見回し、どうしていいかわからない様子だった。声をかけるとびっくりして跳ね上がるような反応が、かなりかわいかった。
『新入生みたいね。』
ヨジュは小さく目元を緩めて、道を教えてあげた。自分にお礼を言って足早に逃げていく彼を見て、くすっと笑った。
『新入生ってやっぱりかわいい。』
ヨジュは頭の中で『ハン・テサン』という名前を反芻した。
『今度また会えたらいいな。』

