
연준の唇が手の甲に触れて離れたが、その残響のように冷たいぬくもりが、長いあいだスビンの肌の上に残っていた。
スビンは慌てて組んでいた手を外し、ベッドのそばへ退いた。
手の甲をもう片方の手でぎゅっと握ったまま、どうしていいかわからずにいるスビンの様子に、ヨンジュンは肩の痛みも忘れたように低く笑いを漏らした。
「そんなにわかりやすくしなくても、全部見えてるよ、スビナ。」
「...何をおっしゃっているのか、わかりません」
「耳の先からうなじまで赤くなって、体中で俺を気にしてるって言ってるじゃないか」
ヨンジュンが席を立って襟元を整えた。先ほど治療した肩のせいで動きはほんの少し鈍くなっていたが、その気だるく威圧的な態度は相変わらずだった。
ヨンジュンは床に散らばって砕けた家具の破片と、下級の連中の灰を見渡した。
「この部屋はしばらく使えないな。別の部屋へ移ろう」
ヨンジュンが先に歩き出すと、スビンはしばらくためらってから、その後を追って出た。
廊下は騒然としていた。
屋敷の使用人たちが、壊れた壁面を片づけ、血の跡を拭い取ろうと忙しなく動き回っていた。
スビンが通るたび、彼らの視線が集まるのを感じた。
主人の傷を応急処置し、その背後を守った人間。
ただの餌か飼育対象だと思っていたら、主人の信頼を得た異質な存在。彼らの目には警戒と好奇心が代わる代わるよぎった。
ヨンジュンがスビンを連れていったのは、屋敷の最奥、彼の個人執務室につながる自分の寝室だった。
昨夜スビンが過ごした部屋よりずっと大きく広く、ひんやりした薔薇の香りが濃く染みついた空間だった。
「ここで過ごせ」
「え? ヨンジュンさんの部屋じゃないですか」
「また下級の連中が押し入ってきたらどうする? いっそ俺の目の前に置いておくのが一番安全だ」
ヨンジュンはごく当然の理由だと言わんばかりに気だるげに言いながら、執務室の机にどさりと腰を下ろした。
机の上には、襲撃事件の報告書と一族間の関係を書いた書類が山積みになっていた。
今回の襲撃によって、純血ヴァンパイア勢力の内部でもスビンの存在をめぐる雑音が大きくなっているのは明らかだった。
スビンはベッド脇のソファに静かに座り、ヨンジュンを見つめた。
書類をめくるヨンジュンの眉間のしわと、固く結ばれた唇。夜の支配者として屋敷と領域を守らねばならない彼の肩は、どこか疲れて見えた。
『僕のせいで... 事態がもっと複雑になったのかな。』
スビンは苦い気持ちを隠せなかった。ハンターの一族では力のない失敗作として厄介者扱いされ、ここに来てもヨンジュンに危機をもたらす厄介者になっただけのようだった。
「そんなに複雑に考えるな」
いつのまにか書類を置いたヨンジュンが、スビンの前へ近づいてきていた。
ソファの背に腕を乗せたままスビンを見下ろすヨンジュンの眼差しは、さっきよりいっそう儚く、物憂げだった。
「僕が厄介者みたいで」
スビンが正直に呟いた。
「一族でも厄介者だったのに... ここでも僕のせいで侵入が起きて、ヨンジュンさんが傷ついたから」
ヨンジュンはしばらく黙っていた。そしてゆっくり手を上げ、スビンの整った髪をそっと撫で下ろした。
指の関節がスビンの髪を抜け、頬にやわらかく触れた。
「勘違いするな、チェ・スビン」
ヨンジュンの声は低かったが、妙に温かかった。
「お前が厄介者なら、昨日あの場で捨てていた。お前を守ったのは俺の選択で、お前は俺の背中を守ってくれた」
「......」
「俺にとってお前は厄介者なんかじゃない... このつまらない永遠の中で、初めてちゃんと息をさせてくれる存在だ」
ヨンジュンの赤い瞳がほのかに光った。
捕食者の執着や欲ではなく、長い生の孤独の果てにただ一つ見つけたぬくもりを、切実に求める眼差しだった。
ヨンジュンはゆっくりと頭を下げ、スビンの額に口づけた。
昨夜のやや威圧的なスキンシップとは違い、今回はひどく優しく慎重な、祝福のような口づけだった。
スビンは漂う静寂の中で目を閉じた。ヨンジュンの唇が額から離れ、頬を過ぎてうなじの近くに触れたときも、今度は逃げ出したいとは思わなかった。
ただ自分を包み込む冷たい薔薇の香りと、その中に感じるヨンジュンの深い本心に、心臓が絶えず脈打っているだけだった。
二人を隔てていたハンターとヴァンパイアという巨大な壁が、この沈黙の温度の中で、ゆっくりと溶けていっていた。
