연준の寝室で過ごした数日間は、妙に平和だった。
ヨンジュンは肩の傷がすっかり癒えても、スビンを自分のそばから離そうとしなかった。
昼は執務室の書類を見ながら、スビンにわざとお茶を持ってこさせ、夜になればソファに横たわって本を読むスビンの膝を枕にして目を閉じた。
ハンターとヴァンパイアという奇妙な相克の関係は、屋敷の深い静寂の中で、完全に二人だけの世界へと固められていった。
だが、その平穏はそれほど長くは続かなかった。
ガシャン-!
暗い夜、寝室の巨大な全面ガラス窓が轟音とともに一瞬で粉々に砕け散った。
魔力の結界を突き破って飛び込んできたのは、赤いヴァンパイアの武器ではなかった。
銀色にまばゆく輝く三本の『聖水(聖水)ダガー』だった。
「うっ...!」
スビンの膝の上に横たわっていたヨンジュンが稲妻のような速さで立ち上がり、スビンの前に立ちはだかった。
ダガーはヨンジュンの四方の床に突き刺さり、床材が焼け焦げる音とともに、ひどい銀(銀)と聖水の臭いが部屋いっぱいに広がった。
ヨンジュンの眉間が痛みにたちまち歪んだ。
純血のヴァンパイアでさえ肌を焼く銀の気配。そしてその武器は、ほかならぬ
「...ハンター家の呪術ダガー?」
スビンの瞳が揺れた。
ハンター家、しかもスビンが属していたチェ一族の最精鋭集団だけが使う固有の銀製武器だった。
割れた窓の向こうから漆黒の影が三つ、稲妻のように飛び込んで寝室の床に着地した。
濃いハンターの制服を着て、顔を仮面で隠した者たち。
彼らの胸元には、スビンにとってあまりにも見覚えのある紋章が鮮やかに刻まれていた。
「見つけた、チェ・スビン。」
先頭に立つハンターが冷たい声で呟いた。
スビンがすぐに分かる声、家門で最上級の実力者であり、スビンを毎回『虫』扱いしていた従兄だった。
「一族の恥さらしが3区画で死にもせずヴァンパイアの屋敷に閉じ込められているという噂が流れていたが...本当だったのか。」
「兄さん...?」
「兄さんと呼ぶな。血を分けるのも惜しい出来損ないめ。」
ハンターはスビンに向かって冷たく一喝すると、すぐさまヨンジュンへ聖水の入った長剣を突きつけた。
「俺たちは捨てられたゴミを救いに来たんじゃない。3区画の夜の支配者、純血チェ・ヨンジュンの首を刎ねに来たんだ。
出来損ないを餌に吊るしておけば、自分から罠にかかるってわけだ。」
すべてが計画されていたのだ。家門はスビンを助けに来たのではなかった。
スビンがヨンジュンの屋敷に監禁されているという事実を利用し、ヨンジュンが油断した隙に屋敷の奥深くへ侵入するための『生き餌』としてスビンを使ったのだった。
「餌...だと。」
ヨンジュンが血の色の瞳を刺すように光らせながら、低く呟いた。
聖水の臭いで傷口が焼け、激痛が走るはずなのに、ヨンジュンの口元が危うくつり上がった。
「その汚い口で、俺のスビンを餌なんて呼ぶな。」
「ヨンジュンさん、だめです! あの剣には純血すら麻痺させる結界が...!」
スビンがヨンジュンを止めようと手を伸ばしたが、ヨンジュンはすでに残像だけを残してハンターたちへ突進していた。
ドカーン!
空気中で銀色の剣気と赤いヴァンパイアの魔力が激突した。
部屋の家具は粉々になり、壁面はひび割れた。
ヨンジュンの圧倒的な力にハンター二人はすぐさま弾き飛ばされて壁に突き刺さったが、リーダー格の従兄は侮れなかった。彼が空中に放った銀の護符が赤い魔法陣を描き、ヨンジュンの体を一瞬で縛り上げた。
「今だ! 純血の首を刎ねろ!」
「ヨンジュンさん!」
護符の力でヨンジュンの足が封じられたその短い刹那、従兄の長剣がヨンジュンの心臓へまっすぐ突き進んだ。
純血であっても、心臓に聖水を塗った銀剣を突き立てられれば無事ではいられない。
ヨンジュンの赤い瞳に一瞬の亀裂が走った。
その瞬間、ヨンジュンの目の前を塞ぎながら弾き飛ばされたのは、巨大な体躯の人間だった。
グサッ-!
「...ぐっ!」
冷たい銀剣はヨンジュンの心臓ではなく、ヨンジュンを全身で抱きしめたスビンの肩を深く貫いた。
血が噴き出し、ヨンジュンの頬を濡らした。ハンターの長剣は、人間であるスビンにも致命的な傷を残した。
スビンの荒い息遣いとともに、温かく赤い血がヨンジュンの胸元へぽたりぽたりと落ちた。
「...スビン?」
ヨンジュンの声が、めったにないほど容赦なく震えていた。
「こ...この狂った出来損ないが! ヴァンパイアなんかのために身を投げ出すのか?!」
従兄が狼狽して剣を引こうとしたが、もう遅かった。
スビンの血がヨンジュンの顔と唇に触れた瞬間、ヨンジュンの中で何かが完全に断ち切れた。
抑えていた理性と魔力のすべてが爆発するように噴き出した。寝室全体の空気が赤く染まり、ヨンジュンを縛っていた銀の護符は一瞬で灰燼と化して飛び散った。
「よくも...誰に剣を向けた?」
真の夜の支配者が覚醒した瞬間だった。ヨンジュンの瞳は血よりも濃い深紅に染まり、部屋のすべての光が消え、圧倒的な地獄の光景が広がった。
