私たちは線を越えないことにした
109話。思いがけないお願い

sophie97
2026.08.08閲覧数 24
スペインの2番目の家で
最初の朝を迎えた。
昨夜、お互いのウィッシュリストを確認していたせいで
遅く寝たせいで疲れが抜けなかった。
「フンジさん〜 今朝は何ですか?」
「え? そうだ! 俺が朝ごはん担当だった!
ごめんなさい。うっかりしてました。」
「じゃあ... 今日は私がトーストを作ります。
それで、フンジさんはトースト派ですか?
それともサンドイッチ派ですか?
フンジさんの好きなほうにします。」
「うーん... 俺はトーストのほうがおいしいです。」
「うわ... 私と同じだ!!
こういう食の好みって、意外と大事なんですよ?」
フンジさんは嬉しそうに私に聞いた。
「トーストには何がいいですか?
ミルク vs. ジュース、いち、に、さん!」
「ミルク!!」 「ミルク!!」
「わ~~ それだよ!!」
「フンジさん、その得意げな顔は何ですか? ふっ。」
「ジョンアさんがさっき、こういう食の好みは
大事だって言ったじゃないですか。
もう一個やってみましょうか?
ビビン冷麺 vs 水冷麺?」
「ビビン冷麺!!」 「水冷麺!!」
「フンジさん、掃除機かけてください。」
「はい...」
フンジさんは歩きかけの足を戻して言った。
「でもビビン冷麺と水冷麺は
半分ずつ分けて食べるのが国ルールですよ。」
「ビンゴ!! それです。
どっちも同じものを食べたら、それは完全に最悪だ。」
引っ越し翌日の最初の食事は
トーストとミルク、そしてシリアルだった。
「フンジさん、あとで
買い物に行かなきゃいけないみたいです。」
「ここは車がないので、そのへんは少し不便ですね。」
「その代わり... ほかにいいところがたくさんあるじゃないですか。
たとえば...
私たち二人がこうして一緒にいられること?」
「うん。そうだね!!」
彼は満面の笑みを浮かべた。
その時、部屋から携帯が鳴った。
当然、韓国からの電話だと思った。
ところが、数回鳴る前に
もう切れてしまった。
発信番号を見ると
ジュリアンの番号だった。
「誰ですか?」
皿洗いをしていたフンジさんが
大きな声で聞いた。
「あ...」
私はしばらく携帯を見下ろした。
「間違い電話です。」
通話履歴を削除して
携帯をサイレントモードに変えた。
なんとなくフンジさんが見たら
嫌がるかもしれないと思って気になった。
『でも... なんで電話したの...
途中で切るなんて、なんで...』
でも、出られなかったジュリアンの電話が
ずっと気にかかっていた。
フンジさんが洗濯物を持って
洗濯に行っている間、
私はジュリアンに電話をかけた。
「もしもし?」
「ジュリアン、私です。
さっき電話してきてたみたいですが...
出ようとしたらもう切れていて出られませんでした。」
「ジョンアさん。」
「はい。」
「その... 僕が電話したあと
かえってあなたの気を揉ませるみたいで
すぐ切りました。」
「それはどういう意味ですか?
何かあったんですか?」
「実は... 手術を受けることになったんです。」
「どこが悪いんですか?」
「深刻なものではなくて。
以前けがをしたところのせいで手術をすることになりました。」
「手術ですか?」
「はい... でも...
手術当日は付き添いが必要なんです。
実は... ジョンアさんにお願いしようと思って電話しました。
ご両親が心配されると思って...
できればお話ししたくなくて。」
「あ... はい...」
「電話してみたら
あなたまで面倒をかけるみたいで
急いで電話を切りました。」
「はい... 」
「ジョンアさん、友達に頼めばいいんです。
だから気にしないでください。」
ジュリアンは少し言いよどんでから
言葉を続けた。
「でも...
医者が手術のときは付き添いが必要だと説明しているのを聞いて、
ジョンアさんがそばにいてくれたらいいのにって
思ったんです。
僕って、図々しいですよね?」
「... ジュリアン。」
私はどう答えればいいのか困った。
「助けてあげたいけど...
それはできないと思います。ごめんなさい。」
「.... はい。わかりました。」
「手術、うまくいきますように。」
「ありがとう。」
「もう切りますね。」
「ジョンアさん!」
彼は切羽詰まった声で私を呼んだ。
「前にスペインであなたに会ったとき...
少しの間だったけど、本当にうれしかったです。
次の日まであなたがホテルに来てくれたらいいのにって
ずっと待っていました。」
「ジュリアン。痛くならずに、ちゃんと体に気をつけてください。
切ります。」
彼のあいさつの続きも聞かずに
電話を切った。
『病気の人に、私ってひどすぎたかな...』
気が重かった。
フンジさんが洗濯を終えて戻ってくるまで
ジュリアンの電話が頭から離れなかった。
『私がフンジさんのせいで苦しかったとき、
ジュリアンが私のそばにいてくれたのに...』
『私に頼もうと電話するまで、
きっとすごく迷ったはずなのに...』
『どうしよう...』
その時、
玄関のドアが開く音がした。
「ジョンアさん〜
来る途中で、あなたの好きな
いちご味のアイスを買ってきました。」
「フンジさん。
私... 少しパリに行ってこないといけないみたいです。」
「絶対ダメだって、私ははっきり言いましたよ。」
<110話の中から>