私たちは線を越えないことにした

112話。アデュー



フンジさんと私は、数日が過ぎた後に

パリへ向かう飛行機に乗った。





パリに着いて、ジュリアンの番号に電話をかけた。

ジュリアンの母親は住所をひとつ、メッセージで送ってきた。





『ここはどこだ?

 ジュリアンの家じゃなくて... こっちに来いって?'





すべてが疑問だらけのまま、タクシーに乗り込んだ。

タクシー運転手にジュリアンの母親から受け取った

住所を見せて、行ってほしいと頼んだ。




私はタクシー運転手に尋ねた。



「私たちは今、どこへ向かっているんですか?

 この住所がどこだか、ご存じですか?」





タクシー運転手が答えた。




「お見せいただいた住所は墓地ですね。

 パリ市内にある...」





私は一瞬、何も言えないまま

フンジさんを見つめた。

フンジさんもまた、驚いた顔で

私を見つめていた。





私たちは行く間じゅう一言も発せず

それぞれ窓の外ばかり見ていた。

フンジさんは膝の上に置かれた
 
私の手をぎゅっと握ってくれた。





タクシーを降りると

向こうから韓国人らしい

中年の夫婦がこちらへ近づいてきた。





近づいてきた瞬間、

ジュリアンに似た顔が目に入った。

私は一目でわかった。

ジュリアンのご両親だった。





「ジョンアさん?」





「こんにちは。ジュリアンのご両親ですか?」





女性の目元が赤く潤んでいた。

「はい、ジュリアンの母です。」

「来てくれてありがとう。」





彼女は震える声で答えた。

そして、私の隣に立っている

フンジさんを見た。





「こちらは私の彼氏です。」





「あ...」

それから彼女は私に何も言わなかった。





ジュリアンの姿が見えず

胸の奥に居座っていた

不安が抑えきれないほど大きくなった。





「ジュリアンは?」





彼女の唇が震えた。

それから彼女はゆっくり視線を移した。

私が立っている場所の向こうを見ていた。





彼女の隣に立っていた

男が言った。




「ジュリアンの父です。

 ついてきてください。

 ジュリアンのいる場所へ案内します。」





私とフンジさんは彼らの後ろを

ついて歩いた。





墓地の奥へ入っていくほど

人々の足音さえ聞こえなくなった。




私は先を歩くジュリアンの父の

後ろ姿を見つめた。





『ジュリアンのいる場所?』

その言葉が頭の中でずっと回り続けた。





彼らが立ち止まった場所の前に

ジュリアンの名前が刻まれた...
 
墓石があった。




私は自分の目を信じられなかった。




私はジュリアンのご両親を見た。




「ジュリアンの骨壺は数日前にここへ納められました。

 ジョンアさんと最後に...

 ぜひ会って、別れの挨拶をしてほしくて。」





ジュリアンの母親は最後の言葉を言い終えると

夫の胸に抱かれて涙をこぼした。




私は信じられない目で墓石を見つめた。


ジュリアン。


間違いなく、彼の名前だった。





『本当に... ジュリアンの名前じゃない...』





私は墓石を見て

フンジさんの顔を見上げた。




彼が握っていた私の手を

さらに強く握った。





「ジュリアンが... ここにいるってことですか?

 それはどういう.... 」





ジュリアンの父がしばらく息を整え

口を開いた。




「ジュリアンが手術すると聞くのが遅れて、

 大急ぎで韓国から来たんですが...

 手術を終えて...

 回復室で意識が戻らなかったんです。」





私はぼんやりとジュリアンの父を見つめた。

まるで夢の中にいるような気分だった。




パリの日差しが

ジュリアンの名前を明るく照らしていた。





「あの時、私が来ていれば... そうしていれば...」

〈113話より〉

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