私たちは線を越えないことにした
123話。約束

sophie97
2026.08.17閲覧数 24
慌てて家まで走ってきた。
玄関のドアを開けながら叫んだ。
"フンジさん!!!"
何の返事もなかった。
寝室とトイレのドアも全部開けて確認した。
家は空っぽだった。
'こんなに時間がかかるはずないのに...
どういうこと?'
もう一度スマホを取り出して電話をかけた。
コール音が長く続いた。
今回も出なかった。
'もしかして... フンジさんに何かあったんじゃ..."
まさか... そんなわけないよね? .... いや、そんなはずない....'
'これからどうしよう?
どこへ行って探せばいいんだろう...
病院に行ってみようか?
あ... どうしよう...'
家にいると思っていたのに
彼が家にいないと分かった途端
唇が焦げるように熱くなった。
家を出なきゃいけないのに
どこから探せばいいのか途方に暮れた。
脚が震えて、まともに歩けなかった。
壁につかまり、一歩ずつ進んだ。
頭が真っ白になった。
'本当にフンジさんに
何かあったらどうしよう...'
震える手を握りしめて
玄関まで来てドアを開けた。
彼に何かあったんじゃないかと
怖くて不安だった。
どこへ行って、誰に助けを求めればいいのか
まったく思いつかなかった。
'そうだ... まずミゲルのところへ行って
どこの病院か聞いて...
病院に行って確認してみよう。'
玄関を出て
ミゲルのカフェのほうへ向かった。
気持ちは焦るのに、脚が言うことを聞かなかった。
その時、
後ろから叫ぶ声が聞こえた。
"ジョンアさん!!"
"どこへ行くんですか?"
聞き覚えのある声だった。
私は生唾を飲み込みながら振り返った。
"フンジさん!!!"
その場にへたり込んでしまった。
不安で心配だった気持ちが
一瞬で崩れ落ちて
涙がぼろぼろとあふれ出た。
彼は道端にしゃがみこんだ
泣き出した私を見て
ひどく戸惑った。
"どうしたんですか? 何かあったんですか?"
私は泣いていて
返事ができなかった。
彼が無事に私の前に立っているという事実が
その時になってやっと実感できた。
彼は慌てて私のところへ来て
泣いている私を抱きしめ、背中をさすった。
私はしばらく泣いてから
少しずつ落ち着き始めた。
泣き止むと
彼は腕の中から離れて私の顔を見た。
"起きてみてください。ゆっくり...
うちに入って話しましょう。"
私は彼の腕をつかんで尋ねた。
"大丈夫なんですよね? 何もなかったんですよね?"
"はい... 俺、ランニングから帰ってきたところなんです。
さっき運動しに行くって言ったでしょ。"
"でも、どうしてそんなに電話に出ないんですか?
私、本当にフンジさんに何かあったのかと思って
心配で気が狂いそうだったんですよ。"
"あ... 電話...
ポケットに入れてたのに、どうして気づかなかったんだろう?
バイブだったみたいです...
電話に出なくて心配したんですか?"
私はあまりにも呑気な彼の様子に
一瞬で腹が立った。
"あっち行って!!!
私がどれだけ心配したと思ってるの!!"
私は座り込んだまま
両手で彼の胸を押し返した。
とっさに後ろへ押されて床に座り込んだ
フンジさんは、ひどく慌てた様子だった。
"いや...
一体なんでそんなことするのか理由くらい言ってください。"
"私が何回電話したと思ってるんですか...
ミゲルから、市内で東洋人の男が
車にはねられたって聞いたんです。
病院に運ばれたっていうから...
慌てて家まで走って戻ってきたら
フンジさんはとっくに出かけてて
まだ帰ってないし、電話にも出ないし...
本当に心配で気が狂いそうだったんですよ。"
"あ... そんなことがあったんだ...
ごめんなさい... 本当にごめんなさい..."
彼は申し訳なさそうな顔で私に近づいてきた。
私は彼を押しのけて家の中に入ってしまった。
なかなか気持ちが落ち着かなかった。
震える脚を引きずってソファに座った。
しばらくして
フンジさんが後から入ってきて
コップ一杯の水を入れて私の前に置いた。
それから私の横に来て座った。
"俺が事故に遭ったと思って
そんなに驚いたんですか?"
"..."
私は彼の反対側へ体を向けた。
"本当にごめんなさい...
実は...
近所を走ってた時に、ある店を見てたんですけど...
すごくきれいなネックレスがあったんです。
入ってしばらく見て、ひとつ選んだんですけど
財布を持って行くのを忘れてたんですよ。
家に戻って財布を持って、またあの店まで行くのに
時間がかかってしまって。"
"携帯は、あのネックレスに夢中で
バイブにも気づかなかったみたいです。
俺が悪かったです..."
"私が膝まずいてお願いしましょうか?"
突然彼はソファの下に降りて
膝をついた。
"いや、誰がそこまでしろって言いました?
早く上がって座ってください。"
私は彼を引っ張り上げた。
"じゃあ、どうすればジョンアさん
許してくれますか?"
言ってください。
言われた通り何でもします。"
"これから私の電話を取れないなんて言ってみなさい。"
"あっ!! わかりました。
これからジョンアさんからの電話は
何があっても出ます。
約束します!!"
彼は自分の小指を差し出した。
"子どもみたいに... 何を..."
私は彼をじろりと見た。
すると彼は笑って私の手を取った。
そして私の小指を
自分の指に絡めた。
"必ず約束します。"
彼は私の目を見つめながら言った。
"ジョンアさんからの電話は絶対に逃しません!!"
"誰かが私をそんなふうに心配してくれるなんて..."
<124話より>