俺たちは一線を越えないことにした(シーズン1)
第19話。決意

sophie97
2026.06.24閲覧数 93
時間はもう10時近くになってしまった。
出かける代わりに、
サンドイッチを配達してもらっておいて、
少しソファに座った。
今日はただ何も
考えたくなかったし、悩みたくもなかった。
体も心もずっと張りつめた状態にあって
一瞬で崩れ落ちるような感じだった。
彼がソファのほうへ来て、私の隣に座った。
ソファの背にもたれて
目を閉じた。
どれくらい経っただろう...
目を開けてみると、
私は彼の肩に顔を寄せたまま、眠っていた。
彼も腕を組んだまま眠っていた。
'まあ..私だけが眠れなかったわけじゃないだろう..
昨夜言ったことを一晩中どれだけ反芻していたんだろう.."
時計を見ると、もう午前3時を過ぎていた。
驚いて彼を起こした。
"フンジさん、起きてください。
もう午前3時を過ぎています。
早く.."
"はあ...
少し肩を貸すつもりだったのに、寝ちゃったみたいですね."
"早く起きて家に帰ってください."
"今ですか? まだ何も食べてないのに?"
"あ、そうだ。昨日届いたのがそのままあるはずだ..
でも、
今食べるかどうかが問題じゃないんです。
もう遅すぎるでしょう。
早く起きて行ってください."
"こんな真夜中に出勤ですか? なんでそんなに急ぐんですか?"
"知りません..気持ちが不安なんです."
".... その言葉を聞いたら、俺がすごく申し訳なくなる..."
彼は言葉を続けた。
"でも..今まで授業をしながらは
ただ僕を僕として扱ってくれましたよね。
これからもそうしてもらえませんか?"
彼は相変わらず堂々巡りの状態だ。
"だめだ。
サンドイッチを食べて、もう一度始めないと。
今日はちゃんと結論を出して、きれいに終わらせましょう、私たち."
私は玄関の取っ手に掛かっている
サンドイッチと飲み物の入った袋を持って入った。
眠る前までものすごくお腹が空いていたのに、
少し休んだら、それでも少し元気が出た。
サンドイッチとコーヒーを取り出しながら考えた。
彼との会話をずるずる引き延ばさずに、
今日は諦めさせようと心に決めた。
そんなに簡単に説得されるくらいなら、
私だってあんなに長く悩んだり、
迷ったりしなかったはずだから...
"フンジさん、こっちに来てください。
飲み物は温かいコーヒーを淹れ直しますよ。
それとも、冷蔵庫から牛乳かほかの飲み物を
出しましょうか?"
決意とは真逆に流れていく行動に
私まで一瞬びくっとした。
"私がコーヒーを淹れます。
このコーヒーマシンを使えばいいんですよね?
カプセルはどこですか?"
冷たく、意地悪く言わなきゃいけないのに...
なんでまた言葉がやわらかくなるんだろう...
"一番目の引き出しを開けてみてください。そこにあるはずです."
"はい、見つけました."
彼はコーヒーを2杯淹れて、食卓についた。
皿に取り出して置いたサンドイッチを1つ
ナプキンと一緒に
彼の前に置いてあげて、
この静けさを壊すために
携帯をスピーカーにつないだ。
レイヤーズの 'Carmen Fantasy'
毎日聴く曲だから迷いもせず、
ただ自然に再生を押した。
"あ...音楽はこういうのを聴くんですね..."
彼はゆっくりうなずきながら笑みを浮かべた。
'何だよ.. あの落ち着きは? '
私は頭の中がこんなにうるさいのに...'
"クラシックがお好きなんですか?"
"はい."
"どんな作曲家が好きですか?"
"ベートーヴェンとラフマニノフです."
"演奏会にも行ったりしますか?"
"フンジさん、今何してるんですか?
私と音楽鑑賞ですか?"
"ご飯を食べながらのスモールトークくらいはできますよ..."
"光化門を通ったらベートーヴェンのミュージカル広告を見たんですが、
もう見ました?"
"はい..見ました."
"誰と?"
"友達と見ました."
"どうでした? 誰がベートーヴェンでした?"
"パク・ヒョシンです。
演技があまりにも上手で...何度も涙が出ました...
後世に天才と呼ばれる人が
自分の人生では本当に不幸でした..
家族も、愛も何一つ手に入れられなくて..."
"うわ...話を聞くだけで気になるな..
僕もそのミュージカルを見たかったんだけど..."
もう一度見られますよね?"
"映画やミュージカルを何度も見るのが好きなんです.."
'いや..ちょっと待って
なんで私はこんなに会話を続けようとしてるんだろう...'
"もう、会話はおしまい。
早く食べてください."
"サンドイッチおいしいですね。ここのは当たりだ!
それ、全部食べないなら、半分くれてもいいですか?"
"わかりました..はい.."
私は自分のサンドイッチの半分を彼の皿に置いてあげた。
"ところでヴィヴァルディも好きじゃないですか?"
"どうして分かったんですか?"
驚いて聞くと、
彼が机のほうを指さした。
"あそこ、ポスター.."
"あ...映画のポスター..
見たかったのに反応がいまいちで
すぐ劇場から降ろされて見られなかったんです."
"あ..そうだったんだ..
じゃあOTTに上がったら一緒に見ればいいね."
"フンジさん、食べ終わりましたよね?"
彼はじっと私の目を見た。
"私が先に話したいことがあります。
フンジさんが私と同年代だったり、
今みたいに特別な職業じゃなかったら
私も私たちの関係について
もう少し前向きに考えてみて、
いや、私のほうから先に近づいていたかもしれません。
私は好きになったら先に告白することもあるんです。
それでも、
私がそうしなかったというのは
引っかかることが多すぎるからなんです。
そういう障害にぶつかり続けながらまで
行きたいとは思えないという意味です。その道を.."
私の目を見ていた彼が視線を落とした。
'そうか..強く出る必要がある。
じゃないと僕が振り回されることになる..'
"最後にひとつだけ聞かせてください..
さっきベートーヴェンの話をしましたよね?
先生なら..."
後世に長く残る私の名前と名声、天才という肩書きと
今、私の隣にいる愛する人と人生を共有して、
感情を分かち合うこと。
どっちを選びますか?"
こんな質問をしてくるとは思ってもいなかった。
"...私は...後者です..."
"私も先生のように後者を選びますし、
時間がかかるとしても
その人への確信が持てたら待って、
最善を尽くしてみるつもりです."
その言葉を聞いた瞬間、
私も知らず知らず涙がこみ上げた。
どうして泣いたんだろう...
ミュージカルを見たとき、
ベートーヴェンの気持ちが思い浮かんだからだろうか..
知られたくなくて、
勢いよく立ち上がってトイレへ向かった。
涙を拭いて、気持ちを少し落ち着かせて出てくると
彼が低い声でつぶやくのが聞こえた。
"あ...また気にさせるんだから、本当に.."
彼が私の携帯を置いていた。
"先生をなんで変えるんですか?" <20話より>