僕たちは一線を越えないことにした(シーズン2)
104話。お姉ちゃん、お願い...

sophie97
2026.10.19閲覧数 34
何度も流れる涙を抑えることができなかった。
トイレにフンジさんの姉さんがついて入ってきた。
「ジョンアさん。大丈夫です。
私たちのフンジはきっとよくなります。
だから……そんなに悲しまないでください」
彼女は涙声で私を慰めた。
私はトイレにしゃがみ込み
涙を飲み込んでは、また飲み込んだ。
かなり時間がたってから、ようやくトイレの外に出た。
フンジさんの姉さんはおろおろしながら
私を待っていた。
彼女は私を見るなり
抱きしめてくれた。
フンジさんの両親と兄さんが来ると、
姉さんはジンソのことで家に帰られた。
私たちはそうして何も言わずに何時間も
待ってはまた待った。
フンジさんのご両親が
家に帰って少し休んで来るように言ってくださったけれど、
そうすることはできなかった。
いつまた彼が私を呼ぶかわからなかった。
私は集中治療室の前のベンチに座って
目を閉じた。
彼とスペインで一緒に歩き回っていた
瞬間を思い浮かべた。
一緒に買い物をして、写真を撮って
路地の隅々まで歩き回りながら
幸せだった時間。
あのころの私たちが目の前に鮮やかに描かれた。
幸せだった記憶をたどっているのに
目を閉じたまま涙がこぼれ落ちた。
その夜、私は集中治療室の前で
一晩じゅう夜を明かした。
翌朝、
テヒョンさんが到着してしばらくしていたころだった。
フンジさんを担当する医師が家族を探した。
「これまでの経過を見た結果……
肝機能が回復するのは難しいと思われます。
肝移植が必要です。
しかし、提供者が見つかるまで
待つには状況がよくありません。
まずはご家族から適合性検査を
受けてみるのがよいでしょう」
フンジさんのご両親と姉さんと兄さん、
それから義兄が検査を受けることになった。
「私も検査を受けます」
私が言い終えるやいなや
テヒョンさんが立ち上がった。
「まずは私が先に検査を受けます」
テヒョンさんは私を見ながら言葉を続けた。
「ジョンア、お前、両親に話しもしないで
検査を受けるつもりじゃないだろ。
まずちゃんと話してから検査を受けろ」
フンジさんの家族も、そうしたほうがいいと
止めた。
私はお姉さんに電話をかけた。
病院の前のカフェで会うことにした。
「ジョンア……あんた、今そのざまは何なの……」
お姉さんは私を見るなり涙声になった。
「ご飯も食べず、寝てもいないで
病院にずっといるの?」
あんた今……はぁ……本当に見ていてつらい……」
「お姉さん。フンジさんが肝移植を受けなきゃいけなくて
私も検査を受けるの」
「何ですって? 今、正気で言ってるの?」
「事故で肝臓がかなり損傷して、機能していないんだって。
移植を受けなきゃいけないのに、提供者をいつまで待つの。
家族も今、検査を受けてる。
私も受けるの。
お父さんとお母さんには言わないで
お姉さんだけ知っていて。
本当は……お姉さんにも話さないつもりだったけど……
みんなに止められて……」
「ユジョン!!! あんた正気なの?
それが何か盲腸の手術か何かだと思ってるの?」
そのまま取り返しがつかなくなったらどうするつもりなのよ?」
「お姉さん……」
私はお姉さんの手を両手でぎゅっと握った。
「もしもフンジさんに何かあったら……
私も生きていけない……
今、お姉さんに許しをもらおうとしてるんじゃないの。
そういうつもりだってわかっていてほしいの……」
「あんたたち、結婚したの?
一緒に子どもを産んだの?
どうしてあんたがそんな危険なことをするの?」
それで適合したら
あんたの肝臓をあげるってこと?」
「そうするつもりなの。
フンジさんはそうしないと生きられない」
「しっかりして!! ユジョン!!」
「お姉さんは、義兄があんな状況だったら諦めるの?
そのまま死なせておくの?」
「あんたと私たちが同じ状況だと思ってるの?
私たちには一緒に過ごしてきた年月があって、
子どもを産んで育てているの。
あんたたちはただの恋人でしょう」
「お姉さん……
一緒にいた時間だけで愛の重さを量れる?
もしかしたらお姉さんが義兄を愛するより
私がフンジさんをもっと愛しているかもしれない……」
「お姉さんが何と言って反対しても私はやる。
検査も受けるし、適合すると出たら
手術も受ける」
[パチン]
お姉さんが私の頬を打った。
何日もろくに食べも眠りもできなかった
私は床に崩れ落ちた。
「気をしっかり持って。あんたは検査も手術も絶対にできない」
お姉さんは言い終えると席を立った。
私はお姉さんの足をつかんだ。
「お姉さん……お願い……
私、フンジさんに何かあったら
正気ではいられない……
私が助けられたかもしれないのに、
検査すらしなかったという罪悪感で
一生苦しまなきゃいけないの。
いや……一生生きられないかもしれない。
その人のあとを追ってしまうかもしれない……」
「ジョンア。やめて……
お父さんとお母さんに知られたら絶対に許されない……」
「お姉さんだけ知っていて。
まだ検査結果だってわからないでしょう。
たとえ手術をすることになっても
私は健康だからすぐ回復できるはず。
フンジさんも助けて、私もまた元気になれる。
大手術ではあるけど……うまくいくかもしれないじゃない。
お姉さん……お願い……"
お姉さんは両手を合わせて懇願する私を見つめたあと
涙を落とした。
「ジョンア……あなたをどうしたらいいの……」
「私が約束する。
お姉さんが心配していることは絶対に
起こらないから」
お姉さんは私を抱きしめてすすり泣いた。
「一人から提供の適合が確認されました」
<105話より>