僕たちは一線を越えないことにした(シーズン2)
第106話。希望

sophie97
2026.10.20閲覧数 32
「誰が移植できるんですか?」
フンジさんの姉が切羽詰まって尋ねた。
「まず1次検査で適合判定が出たということで。
さらに精密検査を進めて
正確に手術可能かどうか判断できます。
ユジョンアさんはどなたですか?」
「はい。私です!」
「ユジョンアさんは、さらに精密検査を受けて、
その結果をもとに手術可能かどうかを
判断します。」
「はい。ありがとうございます、先生。」
「看護師に次の予定の説明を受けてください。」
『神様。ありがとうございます…』
医師の話を聞いたテヒョンさんは、ぎゅっと目を閉じた。
「なんでよりによって…ジョンア、お前なんだ…」
彼は低い声で言った。
「テヒョンさん。私は今、とても感謝してる。
私でも適合判定を受けられたのが、どれだけありがたいか。
誰も適合しなかったら、どうしようもなかったじゃない…」
「そうだね。本当にありがたい。
でも、なんでよりによって君なんだ…
僕でもよかったし…
フンジの家族の誰かでもよかったのに…」
「心配しないで…
大丈夫だから。」
フンジさんの家族たちはどうすればいいのかわからず
困った表情で私を見つめた。
「ジョンアさんが…手術できるんですか?」
姉が慎重に尋ねた。
「もちろんです。そのために検査したんですから。
心配しないでください。
必要な検査もきちんと全部受けて、
私が手術します。」
私はそのとき初めて、ほっと息をついた。
『お姉ちゃんをまたどう説得すればいいんだろう..』
また一つ山が残っていた。
私は姉に、明日家に来てほしいと
メッセージを送った。
そしてまず精密検査を受けることにした。
検査結果を確認するには
少なくとも1週間は待たなければならなかった。
待ち続ける日々だったけれど、
もう希望を抱けるという事実に
少しだけ怖さが和らいだ。
そしてついに、
フンジさんが意識のある状態で
面会できた。
「フンジさん…」
私は集中治療室に入るや否や
彼の手を握った。
彼が何か話していたけれど、
聞き取ることができなかった。
私は彼の口元に耳を近づけた。
「会い…たかった…です…」
「私もです。
だからフンジさんの写真を見ながら耐えてたのに…
フンジさんはつらかったでしょう?
このきれいな顔をそんなに長く見られないなんて…」
フンジさんがかすかに笑った気がした。
「フンジさん。
もうすぐ冬が来ますよね。
あのキャンプ場に行きましょう!!
あそこで雪が降るのを見たら
どれだけきれいか、想像もつかないんです。」
私はこぼれそうな涙をこらえて言葉を続けた。
「だからそれまで手術をちゃんと受けて、
必ず元気になった姿で
一緒にキャンプに行きましょう。フンジさん。」
彼はまた唇を動かした。
私は彼の口元に耳を近づけた。
「さんかく…しかく…して…」
「私もさんかくしかくしてます。
だから私の心をこれ以上痛めつけないで
早く起きて。
私、フンジさんが作ってくれるトースト食べたいんです。」
「面会時間は終わりです。」
「あ…はい…」
「フンジさん。また来ます。」
私は彼の耳元で最後にささやいた。
「私の夏... すごく愛してる...」
翌日、私は家で姉を待った。
姉が着くと
温かいお茶を2杯用意してテーブルに置いた。
「お姉ちゃん…
1次で受けた検査で、私が適合判定を受けたの。」
「あんただけ?
家族の中には誰もいないの?」
「うん。まだましだよ。
誰もいなかったら、希望すらなかっただろうし…」
「それで…あんたが手術するって?
パク・フンジにあんたの肝臓をあげるって?」
「…ごめん…お姉ちゃん…」
「今日家を出るときまでは
どうにかしてでもあんたを止めようと思ってたのに…
来る途中で、私にあんたを止められるのかなって思った…」
「あの人を生かせる唯一の希望なのに…
どうしてやらないなんて言えるの…」
「ジョンア…私はお父さんとお母さんにこの話はできない…
だから手術をちゃんと受けて回復して、そのあと
あんたが直接話して。わかった?」
「うん。わかった。
そうしてくれてありがとう、お姉ちゃん。
本当にありがとう…」
「しばらくは、あんたは旅行に行ったことにしておく。
最近は医療技術が発達して
移植手術の成功率もかなり上がったっていうし…
あんたもパク・フンジも、ちゃんと手術を受けて、よく回復して
結婚もして…
そうやって幸せに生きて…
お願い…」
私は立ち上がって姉のほうへ近づいた。
そして、姉の涙を拭ってあげた。
「義兄さんには、お姉ちゃんが株で溶かしたお金、
一生秘密にするね。」
「あんた、なんでそこでその話が出るの?
まったく、叩かれたいのね。」
「私たちは一つずつ秘密を共有したんだよ、お姉ちゃん。
泣かないで。
たかが手術、何でもないって…
ちゃんとやってくるから。
フンジさんと冬にキャンプに行くって決めたんだから
回復も早いはずだよ。」
「はぁ…本当にこれでいいのか、私にもわからない…」
姉を見送ったあと
その日は家で久しぶりに
ゆっくり休むことができた。
寝る前、食卓に座った。
そして、
手紙を書き始めた。
私はその手紙をバッグの中に入れておいた。
ついに1週間が過ぎ、いよいよ今日、
本当に検査結果が出る日だった。
診察室で検査結果を聞いて
集中治療室へ向かう途中でテヒョンさんに会った。
私はバッグから手紙を取り出し、
彼に差し出した。
「テヒョンさん。
もし手術中やその後に…
私に何かあったら、フンジさんに…
これを…渡してもらえる?」
「フンジさん!! 一緒に頑張りましょう!!」 <107話より>