僕たちは一線を越えないことにした(シーズン2)

第16話。走るジョンア、追うフンジ



훈志さんと星を見たあと

私たちはまるで新しく始まる恋人同士のように

お互いに慎重になっていた。





私も、彼も

もう同じ失敗を

繰り返したくなかったのだと思う。





毎日毎日カフェの仕事と

脚色作業で忙しくしていたころだった。





その日も私は自分の席で一生懸命

仕事をしていた。




いつものようにコーヒーを買いに来たウジンさんが

私に封筒を差し出した。






「これ、何ですか?」





「もしかして……公演を見るの、お好きですか?」






「はい。好きです。でも……」






「これ、私が見たかった公演だったので買ったんです。

 ジョンアさんと一緒に行きたくて2枚買いました。」






「え? 私とですか?」




ウジンさんが少しためらってから言った。





「私と……一緒に行きませんか?」





「あ……そうですね……

 急すぎて……」






「ジョンアさんが行かないなら

 私も行かないです。」





「え、どうしてですか?

 見たくて買ったって言ってたじゃないですか……」






「見たいのは見たいんですけど

 一緒に見るほうがもっと大事なんです。」




その瞬間、私はフンジさんのことを思い出した。



私がウジンさんと一緒に公演を見に行くと

知ったら、きっと喜ばないだろうと思った。




『でも……

 まだやり直そうって言ったわけじゃないし……』




ためらう私を見て

ウジンさんが言った。





「じゃあ……ジョンアさん、この2枚とも持っていてください。

 一緒に見たい方と行ってください。」





「え? それはちょっと……」





「大丈夫です。では……」




私はしばらく迷ってから

背を向けて行こうとする彼を呼び止めた。




「ウジンさん! 一緒に見に行きましょう。公演……」





「本当にですか?」





彼の顔に

たちまち明るい表情が広がった。





「公演はいつですか?」





「今週の日曜日の午後4時です。」





「はい。わかりました。

 では3時半までに会場の前で会いましょう。

 公演を見たあと、一緒に夕食を食べましょう。」






「夕食ですか? はい!! いいですね。

 では日曜日にお会いしましょう。ジョンアさん。」






ウジンさんが出ていくと

ジソンさんが私をじっと見つめた。


しばらく迷っていた彼が、慎重に口を開いた。






「進みが早すぎるんじゃないですか?」





「少し負担ではあるけど……

 まあ……公演と夕食くらいだから

 大丈夫だと思います。」





「その方のチームの人たちが来たら、少し探ってみようかと。

 どんな方なのか……

 それに、その日に何かあったら

 すぐ私に電話してください。社長。

 いいですね?」






「ジソンさん……感動です。」





今度はちゃんと、フンジさんに

先に自白することに決めた。




[フンジさん。カフェのお客さんのウジンさんがミュージカル公演を

 一緒に見に行こうと言ってくれたので、そうすることにしました。

 ちゃんと事前に言いました。 ]





『なんでここまでしなきゃいけないんだろう?』




とにかく、以前フンジさんに隠そうとしていた事実を

いつもあとでバレて苦労した記憶がある。

それでか、メッセージを送ったあと

かえって気持ちは楽だった。





撮影をしていたのか、かなりあとになってから

フンジさんから返信が来た。




[2人きりで公演を見に行くんですって????????

 3か月考えることにしたのに、これは反則でしょう!!]





[3か月考えることにしたんだから

 反則じゃないですよ。私たちはまだ何の関係でもないし。]





[本当にそんなふうに出るんですか?

 だったら私も公演について行きます!!!]





[落ち着いて……

 私が何を話したか全部話します。

 それでいいでしょう?]





[何がいいっていうんですか。ㅡㅡ]





『やっぱり夕食まで食べることは言わなくてよかった。』





日曜日、公演会場の前でウジンさんに会った。



ドラキュラにキャスティングされた俳優の中で

シン・ソンロクさんがいちばん似合うと思っていたのだが

ちょうどその日、その俳優の公演を見ることになった。





かっこいい革のパンツに白いブラウス、

そして赤いマントまで。

彼の姿はあまりにも魅力的だった。



特に、彼の中低音の声で歌う歌は

見る者を一気に魅了した。

私でも首を差し出してしまいそうだった。




最後のシーンで

ドラキュラが愛する人を

ヴァンパイアにできず

自ら命を絶つ姿を見ながら

私はふと考えた。




『あれこそが本当の愛なのだろうか。』




隣にウジンさんがいることを忘れたまま

私はしばらく泣いていた。

公演が終わってからようやく、私は少し気まずくなった。





「大丈夫ですか、ジョンアさん?」





「あ……はい……」




公演が終わると、恥ずかしさが一気に押し寄せてきた。





「ジョンアさんを噛もうとしてるわけでもないのに

 どうしてそんなに泣くんですか……」





「私のせいで気まずかったですか?」





私は急いでトイレに行って涙の跡を整えた。





『あ……恥ずかしくて顔を見られない……』




トイレから出ながら考えた。

ところがウジンさんは私を見るとこう言った。




「私は公演そのものより、あんなふうに公演に入り込んで

 感情移入するジョンアさんのほうがもっと感動なんですけど……」




「え? 今、からかってますよね?」




「いいえ……本当にです。

 まだそんな感性があるって

 可愛く見えます。」




「子供っぽいってことでもありますけどね、まあ。はは

 泣きすぎてお腹も空きました……

 ウジンさん、何が食べたいですか?」




「実はジョンアさんに聞く前に

 この近くの有名な店を予約しておいたんです。

 パスタとステーキが有名なところなんですが、いいですか?」




「はい。パスタ好きです。

 じゃあそこへ行きましょう。」




そのとき、

携帯が鳴った。



画面を確認した瞬間

私は少し固まった。




『うわ……フンジさんが電話までしてきた……』




「ちょっと待ってください。電話を取ってきます。

 ウジンさん。」




私は席を外して通話ボタンを押した。




「公演、どうでした?」




「はい。」




「今、公演会場の近くにいるよ。

 迎えに行くから待ってて。」




「え? ここに来るんですか?」




「うん。公演終わったでしょ。」




「あ……そうですけど……」




「公演会場の裏側に来て。」




「フンジさん! ちょっと待ってください!」




「うん。事務所から電話が来たから切らなきゃ。

 あとでね。」



プツン。



私はしばらく携帯を見下ろしていた。





「どうしよう……大変なことになった……」




私はひとまずウジンさんのいる場所へ行った。




「ウジンさん……本当に申し訳ありません。

 家で急用ができて

 今日は夕食が食べられなさそうです。

 今度必ずごちそうします。

 本当に本当に申し訳ありません。」





「いえ。大丈夫ですよ。

 何か悪いことでもあったんじゃないですよね?」




私は何と言えばいいのか

思いつかなかった。




「その……」




「私は大丈夫だから気にしないで、

 気楽に用を済ませてください。

 送っていきますよ。

 さっき車は持ってこなかったって言ってましたよね。」




「いえいえ、違います。

 約束を守れなかったのも申し訳ないですし

 私はあの向こうでタクシーに乗ります。

 タクシーももう呼びました。」




そうしてウジンさんと別れると

申し訳なさが片隅に残った。



しばらくして、フンジさんの車が到着した。

私は彼の車に乗り込んだ。



フンジさんは何だかすごくうれしそうだった。




「フンジさん、今日は何かいいことでもあったんですか?」




「ふふ〜、公演のあと2人で一緒に

 夕食を食べるところまで全部考えてたからね!」




「えっ……」





「似合うって……どこが?」 <17話より>



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