僕たちは一線を越えないことにした(シーズン2)

第74話。ジョンアの初恋


カフェにほとんど着いた頃に

スヨンから電話がかかってきた。





「スヨン...」





「なんでそんなに声に力がないの?

 何かあった?」





「フンジさんの姉さんも... うちの姉さんも...

 私にずっと別れろって言うの。

 だんだん自信がなくなってきて...」





電話の向こうから

スヨンのため息が聞こえた。





「ジョンア!! あなた年下のイケメンをそんなに

 簡単に手に入れようとしたの?」

 苦労して手に入れたものほど大切みたいに

 苦労して成し遂げた恋こそ価値があるのよ。」






「あなた、スヨンじゃないでしょ?

 誰なの? ボイスフィッシング?」

「うちのスヨンがこんなロマンチックな

 ことを言う子なわけないじゃない!」






「私だって、こういうロマンチックなことを

 言う時だってあるよ、ジョンア。」





スヨンは自分でも気まずかったのか

照れくさそうに笑った。






「あの... スヨン。

 実は私、最近...

 テヒョンさんに会っていた頃が少し懐かしくもある。」






「なんで? 未練が残ってるの?」






「ううん... ただ...

 あの時は気持ちが楽だったの。

 同い年だし、

 反対する人もいなかったし。

 その人は私に全部合わせてくれてた。」






「フンジさんは全部合わせてくれないの?」






「フンジさんは...

 私のほうがかなり気を遣うほうかな。」





私は昨日のことを思い出して

話を続けた。






「あなたの助言を聞いて

 フンジさんの甥っ子の授業をしたでしょ。

 私なりに誠意を見せたつもりだったのに...

 それもお気に召さないみたい。」






「うちのジョンア、大変でどうしよう...」


「ジョンア... あ..いや..」





彼女は何か言いかけて

慌てて口を閉じた。





「何? 言いかけてやめないでよ。」





「フンジさんの姉さんの弱みを...

 少し探ってみたらどうかな?」





「誰かを張りつかせろって?」





「フンジさんにそれとなく聞いてみて。

 何か知ってるかもしれないじゃない?」





「そこまで卑劣にしなきゃいけないのかな?」



話しているうちに昨日姉とした通話を思い出した。





「まあ...

 私、昨日姉さんと電話していて

 私が知ってる姉さんの弱みで

 少し口を封じたことがある。」





「ほらね...

 弱みが一つもない人なんてどこにいるんだ?

 よく考えてみなよ。」





「わかった。

 もうカフェに着いた。

 開店準備しなきゃいけないから

 また私から電話するね、スヨン。」





「頑張って、うちのジョンア!」






「ふふ... じゃね〜」





電話を切ってからやっと

スヨンの言葉が頭の中にずっと残った。





『弱みって...?』





その時、ジンソからメッセージが来た。


[先生、どうして私の授業ができないんですか?

 ママは理由を言ってくれなくて、ただもうこれ以上

 先生の授業を受けられないって言うだけで...ㅠ

 私は先生とずっと授業したいんです。]




『姉さんの弱みは...

 ジンソになるかもしれない。』




[ジンソ... ごめんね。

 先生もジンソと授業するの、好きなんだけど...

 ママがやめなさいって言うから

 先生にもどうしようもないんだ。]





『子には親は勝てないって言うもんね。

 それに苦労してできた一人娘だって言ってたし...』




私はしばらく考え込んだ。


ジンソからまたメッセージが来た。





[じゃあ私、ママに

 もう一度話してみるね!! 先生!!]





『ジンソ。ファイト!』




私はジンソに最後の望みを託し

開店準備を始めた。





ドアを開けてからそれほど経たないうちに

最初のお客さんが入ってきた。





「いらっしゃいませ。」




ドアのほうへ視線を向けた。





「もしかして... ジョンア?」





「うん。お兄さん...?」





「ジョンア、ここで何してるの?」





「このカフェ、私が運営してるの。」





「翻訳の仕事はやめたの?」





「いや、翻訳の仕事もしてるよ。

 カフェのほうはアルバイトさんが主にやってて...」





「こんなに久しぶりに会うなんて

 すごくうれしい。ジョンア。」





「そうだね...

 お兄さんと別れてから初めて会う気がする。

 そうでしょ?」





思いもしなかったことに

初恋の相手をカフェのお客さんとして迎えるなんて。





「うん。たぶんそうだよ。

 最近転職して、会社がこの近くだ。

 これからちょくちょく会おう。」





「うん...

 で、何を飲む?」





「もう俺の好みも忘れちゃったの?

 まあ、あれはいつのことだっけ...

 カプチーノを一杯。

 ホットで」





「あ...思い出した。

 お兄さん、いつもカプチーノ飲んでたもんね。」





私がコーヒーを淹れている間

彼はカフェを見回しながら尋ねた。





「結婚はしたの?」





「まだ。」




私も聞きたかったけれど

余計な誤解を招きそうで聞かなかった。




しばらくして、彼が聞いた。




「俺が結婚してるかどうか、気にならないの?」






「してるでしょ... いくつだと思ってるの...」





「俺、戻ってきた。」




彼の言葉に手が一瞬止まった。




「結婚生活は1年しか続かなかった。」





「あ... そうだったんだ。

 はい、こちらカプチーノです、お客さん。

 お代は次から払って。」





「いや、ちゃんと公私を分けないと。」





「いいの。

 再会の気持ちってことで。」





彼を見つめると

私の20代の姿が浮かんだ。

思わず笑みがこぼれた。





「心を開いてくださるのかな...」 <75話より>

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