僕たちは一線を越えないことにした(シーズン2)
92話。恋に全力投球

sophie97
2026.10.12閲覧数 34
私がトーストを全部食べ終えてからようやく
フンジさんは口を開いた。
「ジョンアさん。もしかして釜山に行って
変な決意をしてきたんじゃないですよね?」
「変な決意ですか?」
「僕と別れなきゃいけないとか... .
そういう決意。」
私はじっとフンジさんを見つめた。
「言ってみてください。そんなことじゃないですよね?
私が三か月のあいだ必死に頑張って
許可をもらってみせます。」
彼はしばらくためらってから、言葉を続けた。
「姉さんを理解してくれなんて言いません。
その代わり、揺れないでください。
それが僕のお願いです。」
「フンジさん。
釜山に行って寝て帰ってきただけなのに
どうしてこんなに疲れてるのか分かりません。
私たちの話はもうやめて、もう寝ましょう。」
私は椅子から立ち上がり
部屋へ入ろうとした。
彼が私の手をつかんだ。
「まだ僕の言葉に答えてないでしょう。」
「はい...まだです。
その返事、数日だけ待ってもらえますか?」
「どうしてですか?」
私は、自分の手をつかんでいる彼の手をぎゅっと握った。
「数日だけ...」
私は彼を連れて寝室へ入った。
そして死んだように、また眠りに落ちた。
翌朝。
私は朝早くから外出の支度を急いだ。
カフェへ行く途中で不動産屋に寄った。
今のカフェをそのまま引き継いでくれる人を
探してほしいと頼んだ。
それから、出版社に電話をかけた。
現在取りかかっている作品を仕上げた後、
しばらくの間、数か月は
翻訳の仕事をしないと伝えた。
カフェに着いた私は、ショット追加のアメリカーノを
一杯飲んで開店の準備をした。
そのときジソンさんが入ってきた。
「店長!! 1週間ぶりにお会いできて、泣きそうです。
ゆっくり休んでこられたんですよね? もう大丈夫ですか?」
「どうして泣きそうなんですか?
何かあったんですか?」
「ひとりで仕事するの、すごく寂しかったんです。はは」
「また何かと思った...びっくりした。
ジソンさん。ちょっとこっちに来て座ってみます?」
「はい。」
「ジソンさん。
今朝、出勤しながら不動産屋に寄ったんです。
カフェを売りに出しました... ごめんなさい。」
「え?」
「その代わり、このカフェをそのまま引き継いでくれる人を
探してもらうよう頼んでおきました。
ジソンさんも今みたいに働ける条件で。
急にこんな決断をしてごめんなさい。」
ジソンさんの顔から笑みが消えた。
「店長....」
「ジソンさんも見てて分かるでしょう?
ここに私を訪ねてくる厄介客がかなり多かったのを。
もちろんここでウジンさんとも知り合えたし、
何よりジソンさんと知り合えたのは
本当に幸運でしたけど...」
「じゃあもう店長に会えないんですか?」
ジソンさんが寂しそうに尋ねた。
「どうして会えないんですか?
私がこのカフェに働きに来ればいいでしょう。
その代わり、お客として。」
私は席を立ち、ジソンさんの肩の上に
そっと手を置いた。
「私たち...死ぬまで縁をつないでいくんです!
これからは姉と弟の関係で...
いや? 叔母と甥の関係って言うべきかな?'」
「ええ... 何を言ってるんですか。
これからはお姉さまとしてお仕えします。」
「ジソンさん。センス最高だ!!」
私はやめると決めたせいか、
惜しい気持ちと寂しさのぶんだけ
カフェでの仕事がいっそう大切に感じられた。
釜山から戻ってから
穏やかな数日が過ぎた。
その夜、
私は遅くまで撮影を終えて帰ってきた
フンジさんを連れて、私たちだけの星を見る場所へ向かった。
フンジさんは行く間ずっと無言だった。
着いてからも
彼はずっと私の手をぎゅっと握ったまま離さなかった。
「フンジさん。ここに少し座ってください。」
「どうしてですか? 何を話すつもりですか?」
「いや... 足が痛くて。」
彼は不安そうな目で私を見た。
「早く座って。私も話したいことがあるんです。」
「聞きたくないんだけど...」
「フンジさん。
私の話をちゃんと聞いてくれるって言ったでしょう。
早く座ってみてください。」
彼は仕方なく私の隣に座った。
「フンジさん。
私が釜山から戻ってくるとき、実は...
お姉さんの言うとおり...
フンジさんの隣にいたい気持ちが
本当にわがままみたいで
全部片づけて姿を消してしまおうかとも思ったんです。」
彼は私の言葉が終わる前にぱっと立ち上がった。
「まだ私の話は終わってません。」
私は彼の手を引いて、もう一度座らせた。
「でも...
その夜、私が釜山から戻ってきたあの夜に
フンジさんが私に、三か月のあいだ必死に頑張って
許可をもらうって言ったでしょう。
その話を聞いて....」
彼は何も言えないまま
焦った目で私を見つめていた。
「私も三か月のあいだフンジさんのために
必死に頑張ってみようと思います。
カフェも売りに出したし、
翻訳の仕事も数か月休むことにしました。
フンジさんのために、私の愛のために
全力投球してみます。」
そのときになってようやく、フンジさんのこわばっていた顔から
少しずつ緊張がほどけた。
「その代わり、三か月のあいだ私たちが全力を尽くしても
だめなら... そのときは... 私たち、
もう未練なく別れましょう。」
「自信があります。
そんな心配はしなくていいです。
ありがとう。」
彼はぱっと笑って
私を引き寄せて抱きしめた。
「考えを変えてくれてありがとう。
本当にありがとう。」
私は彼の背中を撫でながら言った。
「私の人生で、あれほど努力して
全力を尽くしても惜しくない人です。
フンジさんは...」
「ジョンア、お前がこんなふうに変わったのか?」 <第93話より>





