「...生徒の親から先に探しに行く。」
ボムギュは携帯電話を持った手をゆっくり下ろした。
メッセージを読んだ瞬間、頭が真っ白になった。
「お母さん... お父さん。」
両親は地方で小さな食堂を営んでいた。
ごく普通に生きている人たちだった。
自分のせいで危険になる理由なんてなかった。
ボムギュは眠っているヨンジュンを見つめた。
熱は少し下がったが、まだ深く眠っていた。
「...ごめん。」
小さくつぶやいたボムギュは、机の上にメモを一枚残した。
兄さんのおかげで助かりました。
もう僕が終わらせます。
しばらくヨンジュンを見つめていたボムギュは、静かに隠れ家を出た。
二時間後。
古い廃工場。
ボムギュは震える手で電話を持っていた。
「来ました。」
しばらくして。
数十人の組織員たちが姿を現した。
彼らの間を割ってボスがゆっくり歩いてきた。
「思ったより早く出てきたな。」
「...約束してください。」
「何を。」
「俺の両親には手を出さないって。」
ボスは口元を上げた。
「学生らしいな。」
「...」
「交渉だとでも思っているのか?」

ボムギュは歯を食いしばった。
「僕が行きます。」
「その代わり、兄さんは放してください。」
ボスは面白いものでも見るようにボムギュを見た。
「お前一人の命で二人を生かせるとでも思っているのか。」
「...」
「純真だな。」
その瞬間、ボムギュの手足が冷たくなった。
最初から約束を守るつもりなんてなかった。
「捕まえろ。」
組織員たちがボムギュに向かって駆け出した。
ボムギュは遅れて逃げようとしたが、もう遅かった。
ドン。
強い衝撃で床に倒れ込んだ。
誰かが彼の両腕を乱暴につかんだ。
「離せ...」
「大人しくしてろ。」
ボムギュは必死にもがいたが、力の差はあまりにも大きかった。
ボスはボムギュの前にしゃがみ込んだ。
「これでヨンジュンさえ来れば終わりだな。」
その瞬間だった。
パン!
工場内に銃声が響き渡った。
ボムギュを押さえていた組織員がそのまま倒れた。
「何だ!」
「上だ!」
パン! パン!
続けざまに銃声が響いた。
二階の手すりの上。
黒いコートをまとった男が、拳銃を向けたまま立っていた。
「...兄さん。」
ヨンジュンだった。
青白い顔。
包帯を巻いた肩。
まだ傷が完全には癒えていないのに、彼は銃を握っていた。
ボスは嘲るように言った。
「来ると思った。」

ヨンジュンは返事の代わりに銃口をボスへ向けた。
「ボムギュを放せ。」
「嫌だと言ったら。」
「死ぬ。」
ボスは鼻で笑った。
「誰が?」
その瞬間。
工場内のすべての銃口がヨンジュンに向いた。
二十人を超える組織員。
一人では絶対に勝てない数だった。
ボムギュは涙をこらえながら叫んだ。
「兄さん! 逃げて!」
「お願い!」
「僕を置いて行って!」
ヨンジュンはボムギュを見た。
そしてゆっくり笑った。
「嫌だ。」
「...」
「一度助けると決めたなら。」
彼は銃を持ち直した。
「最後まで助ける。」
その瞬間、ボムギュの目から涙がこぼれ落ちた。
この人は。
本当に自分の命よりも、自分のことを先に考えていた。
ボスは苛立たしげに手を上げた。
「撃て。」
パン!
数十発の銃声が同時に響いた。
ヨンジュンは体を転がし、遮蔽物の後ろに身を隠した。
銃弾がコンクリートの壁を粉々にした。
パン! パン!
ヨンジュンの弾も正確だった。
一発。
もう一発。
組織員たちが次々と倒れた。
だが、数が多すぎた。
カチッ。
銃が止まった。
弾倉が空だった。
「...終わりだな。」
ボスはゆっくり銃を上げ、ヨンジュンの頭を狙った。
ボムギュは全身を震わせながら叫んだ。
「だめ!!」
引き金が引かれる瞬間。
パン!
先に銃声が響いた。
だが、倒れたのはヨンジュンではなかった。
ボスの胸から血が噴き出した。
「...え?」
全員が驚いた顔で振り返った。
工場の入口。
黒いバンが何台も止まっていた。
そして車から降りた人たちは、警察の特殊部隊だった。
「警察だ!」
「武器を捨てろ!」
「全員逮捕する!」
あっという間に工場は阿鼻叫喚の地獄と化した。
組織員たちは逃げ始め、警察は彼らを追いかけた。
混乱の中、ヨンジュンはボムギュのもとへ駆け寄った。
「大丈夫か?」
ボムギュは答えの代わりにヨンジュンをぎゅっと抱きしめた。
「...ばか。」
声がひどく震えていた。
「なんでまた来たんです。」
ヨンジュンは黙ってボムギュの背中を撫でた。
しばらくして。
警察たちが二人の前に近づいてきた。
「チェ・ヨンジュンさん。」
ヨンジュンは静かに振り返った。
刑事は手錠を取り出しながら言った。
「殺人および組織犯罪の容疑で緊急逮捕します。」
ボムギュの顔がこわばった。
「...兄さん?」
ヨンジュンは少しも抵抗しなかった。
ただ落ち着いたまま両手を差し出した。
カチッ。
手錠がかけられる音が工場内に響き渡った。
ヨンジュンは最後にボムギュを見つめ、かすかに笑った。
「もう。」
しばらく言葉を切った彼が、低く言った。
「お前は安全だ。」
ボムギュは何も言えなかった。
目の前で、最も大切になった人が、
自分を生かした代償として、すべてを失っていた。
