台湾に残る、あの日の約束

EP13 いつの間にか

ホテルへ戻る道。


夜の街は、
昼間より少しだけ静かだった。


さっきまで歩いていた通りを離れると、
聞こえてくるのは車の音と、
遠くから聞こえる人の話し声くらい。


隣を歩く奕翔が、
ふいに足を止めた。


「……あ。」


「どうしたの?」


「写真。」

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そう言って、
奕翔がスマートフォンを取り出す。


「今日、撮ったやつ見る?」


「うん。」


画面を覗き込むと、
そこには今日一日の写真が並んでいた。


朝ごはんの店。

街の景色。

さっき立ち寄ったお店。


そして、
私が知らないうちに撮られていた写真。


「これ、いつのまに撮ったの?」


奕翔が、ふふふ、と笑う。


画面には、
真剣な顔でメニューを見ている私が写っていた。


「いい写真でしょ。」


「悪くないね。」


「でしょ?」

奕翔が笑う。


その笑顔を見ていると、
なんだかこちらまで笑ってしまった。


「今日、いっぱい撮ったね。」


「うん。」


「明日も撮る?」


「明日は……」

奕翔が少し考える。


「撮る。」


「じゃあ、私も撮ろうかな。」


「俺を?」


「景色を。」


「えーーー、そこは俺でしょう。」


そんなやり取りをしながら、
ホテルまでの道を歩いた。


しばらくして、
ふと手元を見る。


街灯の下で、
ブレスレットが小さく光っていた。


隣を見る。

奕翔の手首にも、
同じものがある。


「……ねえ。」


「ん?」


「これ、明日もつける?」


奕翔が自分の手首を見る。

「つけるよ。」


「じゃあ、私も。」


「うん。」

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それだけの会話だった。


なのに、
なぜか少し嬉しかった。


ホテルが見えてくる。


もうすぐ、
今日も終わる。


そう思うと、
急に時間が惜しくなった。


「明日、何時に来る?」


「……9時くらい。」


「寝坊しないでね。」


「寝坊したら、連絡する。」


「朝、弱いの?」


「ふふ、夜更かしは得意なんだけどね。」


「じゃあ次来た時は、夜市に連れてって。」


「いいよ。」


そんなことを話しているうちに、
ホテルの前に着いてしまった。


「じゃあ、また明日ね。」


「うん。」


一歩進んで、
ふと振り返る。


「……おやすみ。」


「おやすみ。」

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エレベーターの中で、
私は自分の手首を見る。


小さなブレスレット。


明日は帰国の日。


寂しい。


でも、
明日も会える。


そんな嬉しさもあって、

自分でもよく分からない気持ちだった。

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