台湾に残る、あの日の約束

EP3 繋がる記憶

「僕の祖父です。」


その一言が、頭の中で何度も繰り返される。

目の前の青年が指差したのは、写真の中の、祖父の隣で笑う一人の男性。


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写真は少し色褪せていたけれど、二人の笑顔だけは、今も鮮やかだった。


「……本当に?」


思わず聞き返すと、青年は小さく頷いた。

「祖父の家に、同じ写真があります。」



翌日。

青年に案内され、私は台北郊外の静かな住宅街を歩いていた。


古い門をくぐると、木々に囲まれた平屋が現れる。

「ただいま。」

優しい声に迎えられたのは、白髪の老人だった。


青年が私を紹介すると、老人は祖父の写真を見つめたまま動かない。


しばらくして、震える声で呟いた。


「……先生。」


その一言だけで、胸がいっぱいになった。

祖父のことを「先生」と呼ぶ人が、

この台湾にいた。



居間には、古いアルバムや色褪せたスケッチブックが並べられていた。


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ページをめくるたび、

日本語と中国語で書かれたメモ。


学校の校舎。


子どもたちの笑顔。


そして、祖父と友人が肩を並べて描いた一枚の風景画。


「休みの日は、よく二人で絵を描きに行っていたんですよ。」

老人は懐かしそうに笑う。


「日本人と台湾人なんて関係ありませんでした。ただ、大切な友達だった。」


その言葉に、私は自然と目を潤ませていた。




帰り道。

夕暮れの空を見上げながら、青年がぽつりと呟く。


「祖父は今でも、約束を果たせなかったことを悔やんでいます。」


「約束……?」


青年は少しだけ困ったように笑った。

「それは、祖父から聞いてください。」


そう言って歩き出す背中を見つめながら、私は気づいてしまう。


祖父の残した”約束”は、まだ始まったばかりなのだと。


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