雨が静かに降っていた午後だった。
私はバス停のベンチに座り、ぼんやりと雨粒を見つめていた。別れてから半年が過ぎたのに、心の空白は少しも埋まらなかった。
「大丈夫になるよ。」
周りの人は簡単に言ったけれど、割れたガラスは貼り合わせてもひびが残るように、私の心もそのままだった。
そのとき、誰かが私の隣に座った。
「雨の日は好きですか?」
初めて聞く声だった。
顔を向けると、黒い傘を持ったひとりの男が静かに笑っていた。
「いいえ。ただ…避ける場所がなくて。」
私の答えに、彼はしばらく窓の外を見てから言った。
「私もです。」
その一言が、不思議と慰めのように聞こえた。
しばらく沈黙が流れたあと、バスが到着した。私たちは同じバスに乗り込み、並んで座ることになった。
「私はスビンです。」
彼が先に手を差し出した。
「…私はナ。」
短く名前を名乗り、握手を返した。
スビンの手は温かかった。
しばらく黙ったまま窓の外ばかり見ていた彼が、慎重に尋ねた。
「もしかして…とてもつらいことがあったんですか?」
驚いた。
必死に隠しているつもりだったのに、彼は私の表情だけで気づいたみたいだった。
「…顔に出てましたか?」
スビンは小さく笑ってうなずいた。
「僕も同じ顔をして歩いていたんです。」
その言葉で、初めて彼の目をちゃんと見た。
明るく笑っていたけれど、その笑みの奥には私と似た傷が隠れていた。
バスが次の停留所で止まった。
降りる人もいなかったのに、ドアは少し開いてからまた閉まった。
