酒場から帰った翌日から、おかしかった。
ウニンがやたらと気になって仕方なかった。
正確にはウニンじゃなくて、昨日あの女の子と一緒に笑っていた姿が。
朝からやたら気分が悪かった。
「私、ほんと何やってんだろ。」
バッグを下ろして席に座った。
昨日までは、ウニンが友達と仲良くしてるのは見ていていいなと思っていた。
なのに女の子が一人隣にくっついただけで、急に気持ちが変わった。
私にはあんなによそよそしいくせに。
他の女の子とは笑ってしゃべって。
しかもその女の子、ウニンにかなり積極的に見えた。
『私のこと好きだって言ってたくせに。』
またその考えが浮かんだ。
そしてすぐ自分に腹が立った。
『だから何。』
ウニンが私を好きだとしても、私がウニンの行動全部を気にする理由なんてなかった。
まだ付き合ってるわけでもないし。
私が好きだと、はっきり返事したわけでもない。
それでも、どうしても気持ちが落ち着かなかった。
*
友達と学科の部屋で休んでいると
ウニンが友達と一緒に学科の部屋に入ってきた。
目が合った。
ウニンが少し止まった。
そしていつもみたいに、慎重に笑った。
「こんにちは。」
「...ヌナ。」
「うん。」
「お昼食べました?」
「うん。」
「何食べました?」
「普通に学食。」
「...おいしかったですか?」
「うん。」
ウニンはしばらく立っていた。
前なら、座ってもいいか聞いてきたはずなのに。
今日は周りを一度見回して、同期たちとまた外へ出ていった。
私はなんだか寂しかった。
昨日私が変だったからかな。
それともウニンも、もう私への気持ちを諦めたのかな。
そう思った瞬間、胸が妙に苦しくなった。
*
授業が終わって講義室を出ると、後ろから誰かが私の名前を呼んだ。
「ヌナ。」
ウニンだった。
「ん?」
「ちょっと待ってください。」
私は足を止めた。
ウニンは私の前まで来たのに、しばらく何も言えなかった。
「どうしたの?」
「...昨日。」
「昨日?」
「酒場で見ましたよ。」
私はわざと視線をそらした。
「うん。」
「友達と来たんですよね?」
「うん。」
「僕も友達といました。」
「知ってる。」
「...」
「どうしたの?」
ウニンは少しためらってから聞いた。
「もしかして、機嫌悪いですか?」
私は一瞬、戸惑った。
「私が?」
「はい。」
「なんで?」
「今日ずっと...」
ウニンが言葉を切った。
「僕を見るたび、表情がおかしかったので。」
私はすぐ否定した。
「違うけど。」
「ならよかったです。」
ウニンが笑った。
その笑顔がまた妙に気にかかった。
私は我慢した末に、結局聞いた。
「でも。」
「はい。」
「昨日のあの女の子。」
ウニンの表情が止まった。
「誰のことですか?」
「隣にいた子。」
「...あ。」
「仲いいの?」
ウニンは少し考えてから答えた。
「同期です。」
「それは知ってるけど。」
「ただ、まあまあ仲いい」
「あ。」
その一言で、少し気持ちが楽になった。
でも、なんで楽になるのかは分からなかった。
ウニンがじっと私を見た。
「...なんで聞いたんですか?」
「別に。」
「ほんとに別に?」
「うん。」
「ヌナ。」
「なに。」
「昨日ずっと、あっち見てましたよ。」
一瞬で顔が熱くなった。
「いつ見たの。」
「見ました。」
「気のせいでしょ。」
「違います。」
ウニンの口元がほんの少し上がった。
「ヌナがずっと見てました。」
「見てないけど。」
「見てました。」
「パク・ウニン。」
「はい。」
「今、からかってる?」
「いえ。」
ウニンは笑いをこらえるみたいにして、やがて笑った。
それから慎重に尋ねた。
「...嫉妬しました?」
「誰が。」
「ヌナが。」
「私がなんで嫉妬するの。」
「そうですね。」
ウニンがうなずいた。
でも表情は、全然信じてない顔だった。
私はなんだか気まずくなって、先に歩き出した。
「私、行くね。」
「ヌナ。」
「なに。」
「僕...」
ウニンがついてきて、途中で止まった。
「いえ。」
「何。」
「...今度話します。」
私は振り返ってウニンを見た。
「何?」
「ほんとに今度。」
ウニンはそれ以上言わなかった。
私は結局、一人で学校を出た。
でも家に帰るまでずっと、さっきの言葉が気になっていた。
『嫉妬しました?』
ありえない。
私がなんで嫉妬するの。
*
その夜。
スマホを確認していて、ウニンのインスタグラムを開いた。
最近の投稿には、MTのときに撮った写真が載っていた。
友達と撮った写真。
その中には、昨日酒場で見た女の子もいた。
私はわざと画面を消した。
そしてまたつけた。
写真をもう一度見た。
「あ、ほんとに。」
なんでこんなに気になるんだろう。
そのときメッセージが来た。
ウニンだった。
ヌナ。
うん?
今日、怒ってましたか?
いや。
ほんとに?
うん。
ならよかったです。
しばらくして、またメッセージが来た。
でも僕、あの女の子とは何の関係もないです。
私は指を止めた。
わざわざそれを説明する理由は何だろう。
なんで私にこんなこと言うの。
しばらく悩んでから返信した。
別に気にならないけど。
送ってすぐ後悔した。
ちょっと出しすぎたかな。
でもウニンの返信は思ったより早かった。
それでも伝えたかったんです。
私はしばらく画面を見つめていた。
そして結局、笑ってしまった。
『ほんと何なの、パク・ウニン。』
私にはまだあんなにぎこちないくせに。
こういうことはまた平気で言う。
その夜。
私は初めて認めた。
たぶん私が気になるのは。
ウニンが他の女の子と仲がいいからじゃなくて。
その子にウニンを取られるのが嫌だったからだ。
そう思ったら、心臓がまた大きく跳ねた。
「...私、ほんとにこいつのこと好きなのかな?」
答えは出なかった。
でももう。
知らないふりをするのも難しかった。
