[ピンサ恋愛] 貴公子

第8話。年下は本当にイマイチですか?

夕方になると、MTの雰囲気はがらりと変わった。

肉を焼く匂いが宿の前いっぱいに広がり、あちこちでビール缶を開ける音が聞こえた。

昼にはぎこちなく挨拶するだけだった人たちも、いつの間にか互いの名前を呼んで笑っていた。

 

「ヨジュ!」

「こっち来て!」

 

私は友達の輪の中に席を取った。

少し離れたところには、ウォンビンも座っていた。

昼より表情はやわらいでいたが、それでもまだあまり口数は多くなかった。

 

'それでもさっきよりずっとマシだね。'

私はひとりで満足げに笑った。

 

 

*

 

 

「さあ、乾杯!」

「期末試験が終わったのもお祝いして!」

「MTも思いきり楽しもう!」

 

グラスがぶつかる音が次々と響いた。

ウォンビンも静かにグラスを持ち上げた。

ふだんは酒に強いほうではないようだったのに、今日は妙にグラスが空くのが早かった。

 

「おい、ウォンビン。」

 

ソンチャンが笑いながら言った。

 

「ゆっくり飲め。」

「...大丈夫です。」

 

そう言いながらも、また一杯空けた。

私は遠くからその様子を見て、首をかしげた。

'もともと酒が好きなのかな?'

 

続いて酒ゲームが始まった。

いつもなら隅で笑っているだけだったウォンビンも、罰ゲームがかかるたびに酒を飲んだ。

 

「パク・ウォンビン、けっこう飲むね?」

「そうだね?」

「意外だ。」

 

ウォンビンは笑いもしなかった。

ただグラスを受け取って、静かに飲むだけだった。

 

 

*

 

 

1時間が過ぎるころには、ウォンビンの顔は目に見えて赤くなっていた。

 

「おい。」

 

ソンチャンがウォンビンの肩を軽く叩いた。

 

「もう飲むな。」

「...大丈夫です。」

「大丈夫じゃないだろ?」

「大丈夫です。」

 

語尾まで少しずつ伸びていた。

その様子を見たミンソクが私のほうを振り向いた。

 

「ヨジュ。」

「うん?」

「お前のペアの後輩、酔ってるみたいだけど?」

「そうだね。」

「ちょっと連れ出してきて。」

「ペアの先輩でしょ。」

 

周りからも相づちが飛んだ。

 

「そうだな。」

「ヨジュがちょっと面倒見てやれよ。」

「少し外の空気でも吸ってこいよ。」

 

私は立ち上がり、ウォンビンの前に立った。

 

「ウォンビン。」

「...はい。」

「少し外に出る?」

 

ウォンビンは黙ってうなずいた。

 

 

*

 

 

宿の外は思ったより静かだった。

虫の声だけがして、遠くから笑い声がかすかに聞こえてきた。

私は自動販売機でイオン飲料を1本買って、ウォンビンに差し出した。

 

「これ飲んで。」

「...ありがとうございます。」

 

しばらくのあいだ、二人とも黙っていた。

ウォンビンは飲み物の缶をいじってばかりいた。

 

「かなり酔った?」

「...少し。」

「少しって。」

 

私は笑ってため息をついた。

 

「酒があまり飲めないなら、ほどほどにしなきゃ。」

「...すみません。」

「今日、何回目だよ、その“すみません”は。」

「...」

 

ウォンビンが小さく笑った。

それからまた静かになった。

普段よりずっと口数が少なかった。

私はつい心配になった。

 

「何かあった?」

「...」

「さっきからずっと変だったよ。」

「...」

「ウォンビン。」

 

しばらく沈黙していたウォンビンが、つらそうに口を開いた。

 

「...ヌナ。」

「うん。」

「...すみません。」

「何が?」

「...昼に。」

「...?」

「...うっかり聞いちゃいました。」

 

その瞬間、何のことか分かった。

コンビニの前。

ミンソクとした会話。

 

「あ...」

「わざとじゃなかったんです。」

「...」

「すみません。」

 

私は首を振った。

 

「そんなことで謝るなよ。」

「聞いちゃったのは仕方ないじゃん。」

 

ウォンビンは答えなかった。

代わりに、うつむいた。

街灯の明かりの下で、赤くなった耳が見えた。

 

「...ヌナ。」

「...うん。」

「...年下は。」

 

ウォンビンの声が少し震えていた。

 

「...ほんとに、そんなにダメですか?」

 

私はそのまま固まった。

 

「...え?」

 

ウォンビンは笑おうとしたようだったが、笑えなかった。

目元が赤く染まっていた。


「...ただ。」

「...気になって。」

 

その瞬間、心臓がどきりと落ちた。

この質問が、ただの冗談じゃないってこと。

酔った勢いだとしても、本気だってこと。

ぼんやりと分かった気がした。

でも、なんて答えればいいのか分からなかった。

 

「...お前。」

 

私はわざとウォンビンの腕を軽く叩いた。

 

「飲みすぎだよ。」

「...」

「外の空気も吸ったし。」

「もう戻ろう。」

 

ウォンビンは何も言わなかった。

しばらくして、小さく笑ってうなずいた。

 

「...はい。」

 

 

*

 

 

宿まで歩くあいだ、二人の間に言葉はなかった。

ドアの前に着いたときだった。

 

「ヌナ。」

「...うん?」

「...すみません。」

「...」

「さっきの話。」

「...」

「忘れてください。」

 

私はしばらくウォンビンの顔を見つめた。

酒のせいなのか、それとも別の理由なのか。

ウォンビンは最後まで、私の目をちゃんと見ることができなかった。

 

「...入って。」

「...はい。」

 

ウォンビンは静かに宿の中へ入っていった。

私はしばらく、閉じたドアを見つめたまま立っていた。

 

'...何だったんだろう。'

 

酔った人の失敗だと流すには。

何度も。

 

'年下はほんとにダメですか?'

 

その一言が、ずっと耳の中で鳴り続けていた。

 

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