私たちは線を越えないことにした
105話。タイミング

sophie97
2026.08.07閲覧数 14
「ジュリアン……」
私はどうやって何を言えばいいのか
見当もつかなかった。
フンジさんにまた会うことになったと正直に言うべきか、
別の理由を言い繕うべきか
頭の中があまりにも混乱していた。
何も返せないでいる私を見て
ジュリアンが言葉を続けた。
「分かっています。
あまりにも突然で、戸惑うだろうってことを……
でも、あなたに一度も伝えずに諦めるには、
僕の気持ちはあまりにも大きすぎることにも気づいたんです。
あなたがどんな答えをしても、
僕はあとで後悔しないように
自分なりに努力してみるつもりです。」
彼の表情は固い決意に見えた。
「それでも、こうして何の連絡もなしに来るなんて、どういうことですか……」
「あ……ごめんなさい。
連絡しても受け取ってもらえないかもしれないと思っていました。」
「実は……
あなたが韓国に戻ってしまったらどうしようと
すごく心配していました。
もしそうだったら、僕たちの縁はここまでだったんだなと
受け入れようと思っていました。
ミゲルがまだあなたはここにいるって言うから
どれだけうれしかったか分かりません。」
「ジュリアン。
私は……私たちの関係をやり直したいわけじゃないです。」
「あなたの気持ちは分かっています。
それでも、簡単には諦めたくないんです。
今日は僕の気持ちを打ち明けた、それでいいじゃないですか。」
「そのためにここまで来たんですか?
あなたがこれ以上傷ついて失望するのは望んでいません。
もうここでやめてください。ジュリアン……」
「あなたがそう言うんじゃないかと思って
ここまで来たんです。」
「ジュリアン。
人生にはタイミングがあるんだそうです。
私たちは……もう遅すぎました……」
「もしかして……誰かと付き合ってるんですか?」
『フンジさんの話をするべきなのかな……
この人もフンジさんが俳優だって知ってるのに
話していいのかな。』
「誰かと付き合っていようと、いまいと
それは関係ありません。
私はジュリアンとやり直すつもりはないです。」
「分かっています。
僕が欲張っているだけかもしれません。
それでも……ただ見ているだけでもいいですか?
それさえも……だめですか?」
「はあ……ジュリアン……
こういうのは、私をあまりにもつらくさせます。」
私は彼をどう止めればいいのか
途方に暮れるばかりだった。
「私、先に行きます。
あなたの気持ちを受け止められなくてごめんなさい。
気をつけて帰ってください。」
「僕は今週末のあいだ、
あなたが来たときにいつも泊まっていたホテルにいます。」
私は彼の切実な眼差しを見てしまった。
彼を愛していないのに、
私の心は言いようもなく痛く、重かった。
彼の言葉を背に、
カフェを出て家へ歩いていた。
遠くにフンジさんが見えた。
私を待っていたのか、
その場にそのまま立っていた。
彼を見て笑いたかったけれど
笑えなかった。
彼も心配そうな目で
私を見つめるだけだった。
「うまくいきましたか?」
「フンジさん……少し抱きしめてくれますか?
心がもう、つらくてたまりません。」
彼は静かに私を抱きしめてくれた。
その瞬間、こらえていた涙があふれ出した。
「ジュリアンがいつも泊まっていたホテルに行くって。
来てくれとも言えないあの人が……気の毒で。
胸が痛くてたまりません。」
「何ですって?」
フンジさんはぎょっとして
私を腕の中から引き離した。
「ホテルになぜいるんですか?
まさか、やり直そうって来たんですか?」
「私が代わりに行きます。」
「だめです。
そうしたらあの人のほうがもっと傷つきます。
やめてください。」
「私にこのままでいろっていうんですか?」
「時間はかかっても、私があの人を説得してみます。
フンジさんは出ないでください。お願いです……」
「どうして私たちはいつも誰かを傷つけてしまうんだろう?」
<第106話より>