テルエルで一晩を過ごして
翌日、私たちはアルバラシンに到着した。
早めの夕食を食べて、
夕焼けに染まるアルバラシンの風景を
見下ろしていた。
赤く染まった空と
城壁に沿って一つずつ灯る明かりを見ながら
しばらく時間が止まったような気がした。

「フンジさんの言う通り
ここへ来てよかったみたいです。
私が行った旅行の中で
いちばん素敵です。」
「わ〜、ジョンアさんにそんな褒め言葉をもらうと
嬉しいですね。
僕もぜひあなたと来てみたかった場所だったんですけど
こうして一緒にここにいられるのが夢みたいです。」
私は少しためらってから
テルエルに来る間ずっと気になっていたことを
尋ねた。
「映画の脚本は見ましたか?」
彼はしばらく私を見つめると
村へと視線を移した。
「旅行の間はそういう話はしないことにしましょう。」
'何だろう…?
なんで話をそらすんだろう?'
「もしかして…」
彼が私を見た。
「もしかして… なんですか?」
「あの映画をやりたいんですか?
それでまた韓国に戻らないといけないんですか?」
私は結局、胸にしまっていた言葉を口にした。
「脚本は… 好きです。
でも… 映画の撮影が思ったより早く始まるんです。
だから、代表に出演しないと言いました。
私たち、1年はここで一緒に過ごすって決めたじゃないですか。
邪魔されたくないんです。
私たちにまたこんな時間がいつあるか分からないでしょう。」
そのときになって初めて、キム代表が私に電話をかけて
フンジさんに代わってくれと言った理由に気づいた。
'私にフンジさんを説得しろってことなんだ…'
「でも…
気に入る作品に出会うのも
簡単なことじゃないでしょう。」
「だからこの話をしなかったんです。
もうやめてください。」
彼がきっぱりと話を遮ったせいで
それ以上何も言えなかった。
アルバラシンでさらに2日を過ごしながら
近くの観光地を巡った。
いよいよ旅の最終日、
ペラセンテ城へ向かった。
赤い岩山の上に建つ城は
まるで岩とひとつになっているように見えた。

赤い岩と青い空の対比が
いっそう鮮やかで、見事な景色を作り出していた。
私たちは一歩一歩踏みしめながら
城の周りを見て回っていた。
そのとき、
フンジさんが足を止めて尋ねた。
「ジョンアさんは、私たちの関係を
どこまで考えていますか?」
「え?」
私は彼の突然の質問に
何を言えばいいのか言葉を失った。
「考えてみたことはないんですか?
私との未来を?」
「…」
「一度も?」
「考えなかったわけじゃないですけど…
考えるたびに答えが分からなくなるんです。」
「僕のこと、愛してるでしょう?」
「愛することと
未来を一緒にすることは
いつも同じとは限りません。」
「僕を忘れようとしても
できなかったでしょう。
だったらもう答えは決まっているんじゃないですか?」
「フンジさん…
あの映画をやりたいなら、やってください。
いい機会を逃させたくないんです。」
「僕は、ジョンアさんがここにいる限り
あの映画を撮るために韓国へは行きません。
僕があの映画を撮ってほしいなら
僕と一緒に韓国へ戻りましょう。」
私は何も言えなかった。
韓国に戻るというのは
単に旅が終わるという意味ではなかった。
フンジさんの人生の中へ、もう一度入っていくことだった。
「どんな選択をしても、それはあなた次第です。」
<122話より>
