私たちは線を越えないことにした

65話。怒り



[ごめんなさい。新しい彼女ができました...]



メールの件名を読んでから

あまりにも手が震えた。




クリックすべきか、すべきでないか

判断がつかなかった。





私は確かに彼にそう言っていた。

撮影していていい感じだと思う人と

恋愛もして、結婚もしろと...

なのに、今の私のこの姿ときたら...





でも、

腹が立つのは仕方のないことだった。





ひとまずログアウトしてラップトップを閉じた。

しばらくマウスの上に手を置いたまま

動けなかった。





'どうしよう...前のメールから開くべきかな..

 それとも、ただ読まずにいようか..'





じっくり考えているうちに、

涙がにじんだ。





怒りがこみ上げて涙をぬぐい

ばっと立ち上がった。





"パク・フンジ!! もう本当に終わりよ!!"




あのときフンジさんが携帯を投げ捨てたように、

私もラップトップを投げ捨てたい気持ちだった。




'私、どうしちゃったんだろう...

 何この矛盾のかたまり...'





心と頭はまったく別々の二人だった。


理由もなく家の中をうろうろした。


冷蔵庫を開けて水を取り出した。

氷をたっぷり入れて、

一杯を一気に飲み干した。



窓を大きく開けた。



あれほどまぶしく、華やかだったスペインの日差しが

今日は目を細めたくなるほどきらきらしていた。




'どうしよう...'




心がある程度落ち着いた頃、

もう一度ラップトップを開いてログインした。




私は最後のメールを開く

勇気は出なかったので

フンジさんが送ってきていたこれまでのメールの中の

一通をクリックして開いた。





[あのカフェに行ってきました。]




'あのカフェ? 金浦にあるカフェのことかな?'


件名を見ながら、私たちが一緒に行ったカフェを思い出した。





[あの日のことを思うと

 とても温かかった感覚がよみがえります。

 理由はわからないけれど、

 少し眠ってしまったときも

 気分がよかった気がします。

 読んでみろと渡してくれた本も読まずに

 眠ってしまった私を見て

 もしかして...情けないと思いましたか?ㅎ

 今日は久しぶりの休みだったのに

 急にあの日のことを思い出して

 あなたがプレゼントしてくれた『ブラームスはお好きですか』を

 持ってあのカフェに行きました。

 今日は眠らずに、

 座った席でその本を全部読みました。

 あなたがヒロインのポールに感情移入したように、

 私はシモンに共感しながら読んでいた気がします。

 ポールはなぜローズのもとへ戻ったんだろう...

 なぜシモンの気持ちを受け入れられなかったんだろう....

 ポールもあなたのように勇気が出なかったのでは

 ないでしょうか?

 .....

 それでも私はシモンのように諦めないつもりです。]





'こんな人が今日は新しい彼女ができたって

 メールを送ってきたの?...

 本当に...呆れる...'





落ち着いていた私の気持ちが

また再び煮え立ち始めた。

その件名を読んだ瞬間、真っ先に浮かんだのは

お祝いではなく怒りだった。

新しい彼女という言葉が、何度も頭の中を巡った。





'もしかして私、嫉妬してるのかな...'




胸の中で沸き上がるこの感情が

何なのかわからず混乱していた。





しまいには、次から次へと考えがつながって

いっそミゲルと会ってしまおうかなんていう、ありえない

考えまで頭をよぎった。





その夜、私は一睡もできないまま

夜明けを迎えた。





夜明け頃になると、

頭の中がぼんやりする感じがした。




もう何の感情もなく

ただ早く向き合ってしまって、

片づけてしまいたいと思った。





メールをクリックして開いた。


[一か月の間、毎日一日も欠かさず

 あなたにメールを送りました。

 あなたが読まないかもしれないと考えて

 送ったんですが...

 いざ最初のメールが確認されたのを見たら、

 こうしてでもあなたと話したいという

 欲が出ました。

 でもやっぱり...

 二通目からは確認してくれませんね。

 それで...

 ごめんなさい、こんな件名を書かざるを得ませんでした。

 もしこのメールをあなたが開いたなら

 まだ私のことを考える気持ちが

 残っているということですよね?

 違いますか?]





'ずるいな....'




彼の罠に引っかかったのが悔しかったけれど、

一晩中悩んで、腹を立てていた

自分の姿がひどく恥ずかしかった。




'どうしてこんなことまで考えたんだろう...

 まったく敵わないよ...'




一方で、彼の策略に思わず笑ってしまった。

それが安堵だったのか、

まだ残っている未練だったのかはわからなかった。



とにかく、その瞬間だけは、

胸を押しつぶしていた何かが

少し軽くなった気がした。




そして、朝になるまで

彼のメールを一通一通すべて開いて読んだ。



すべてのメールを読み終えたあとは、

考える間もなく、私は彼に返信を書いていた。




"私もあなたが恋しいです。" <66話より>

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