私たちは線を越えないことにした
79話。フラーティング

sophie97
2026.07.26閲覧数 20
気力をなくす散歩を終えて家に帰ると
空腹になっていた。
「ジュリアン、お腹空いてないんですか?
私はちょっと小腹がすいたんですけど……何か食べるものがないか見てきますね。」
台所の引き出しを開けてみると
まだ食べていない韓国ラーメンがいくつか残っていた。
そのうち二つを取り出してジュリアンに聞いた。
「ラーメン食べていきますか?」
ジュリアンはぱっと顔を明るくして言った。
「え? それって韓国式のフラッティングじゃないんですか?
ラーメンだけ食べて帰れって意味じゃないって聞きましたけど?」
「そんなのどこで覚えたんですか?
フランスに住んでいても、韓国文化をかなりよく知ってるんですね?」
「私の言う通りでしょう?
YouTubeで見た気もするし……
韓国の友達に聞いた気もするし……
とにかく昔、ある韓国映画に出てきてから
韓国式のフラッティングになったって聞きました。」
「フラッティング……」
「……そうです。」
「今、ジュリアンにフラッティングしてるところなんです。」
私はジュリアンの目を見つめながら言った。
ジュリアンは恥ずかしそうに視線をそらした。
「こっちに来て休んでてください。
私が作ります。
私も家でたまに作って食べるので
どうやって作るか分かるんです。」
ジュリアンが鍋に水を入れている間、
私は食卓に座って黙ったまま彼の背中を見つめていた。
「ジュリアンはどんな韓国料理が一番好きですか?
お母さまもいらっしゃらないし、
難しい料理でなければ
私が作ってあげます。
だからって期待はしないでくださいね。」
「わあ……今すごく感動してるの、分かってます?」
「どうしてですか?
料理してあげるからですか?」
「今までで、ジョンアさんが僕に初めてした質問なんです。
知らなかったでしょう?」
「本当ですか?
私がジュリアンにした初めての質問だって?
嘘……
もう何か月も付き合ってるのに……」
「何か月も経ってるって分かりますか?」
「えっと……三か月くらい?」
ジュリアンは少し笑ってから首を振った。
「ああ……本当にさみしいな。
周りの韓国カップルを見ると、100日も祝うし、
1年記念日も祝うのに
ジョンアさんはもともとそういうのを気にしない性格なんですか?
それとも僕に興味がないんですか?」
「ごめんなさい……
反省します。
今まで本当に私、あまりに無神経な彼女でしたね。」
私は彼の背中側へ回り
腰を抱きしめた。
「ラーメンを食べて、
今日はここで寝ていってください。
ホテルに行かないで……」
.
彼はしばらく間を置いてから答えた。
「今日は……そのフラッティングは我慢します。」
彼はラーメンを器に移した。
「どうしてですか?」
予想外の答えだったけれど
私は彼が冗談を言ったのだと思った。
彼はラーメンを二杯、何気ない様子で
食卓の上に置きながら言った。
「あなたが僕を完全に受け入れられる日。
その日、あなたと一緒にいます。」
「どういう意味ですか?」
「完全に、あなたと僕だけだと感じられる時。
3人じゃなくて、2人だけでいる時。
その時です……」
「ジュリ……」
私は彼の言葉が何を意味するのか
あまりにもよく分かっていたから
何も言い訳できなかった。
彼がこれまで感じていたであろう孤独を思うと、
申し訳ないという言葉すら足りない気がした。
彼とラーメンを食べている間、
私がまた誰かを傷つけているのでは
という思いで心が重かった。
申し訳ない分、もっと彼に気を配って、
彼の気持ちに合わせてあげたかった。
「次の週末はどういう服を着ればいいですか?
ご両親はどんなスタイルが好きなんですか?」
「ジョンアさんのスタイルのままでいいです。
わざわざ着飾る必要はありません。
うちの両親は……
今のジョンアさんのままが好きだと思います。」
「そうでしょうか?
私……実は……
彼氏のご両親に会うのが初めてなので
すごく緊張してるんです。
私があまりにも固まっていたら
そっと手を握ってください。
ジュリを信じて、勇気を出してみます。」
「もし負担なら、無理しなくてもいいです。
僕には正直に話してほしいです。」
「ジュリ……
なんでそんな言い方するんですか?
私がジュリのご両親に会いたくないみたいに聞こえます?
私、そんなふうに見えました?」
「よく分かりません。
だから正直に話してもいいって言ったんです。」
「ちょっと戸惑ってるのは本当です。
まだ私たち、会ってからそんなに経ってないし……
韓国からいらっしゃるって聞いたから
私が気に入ってもらえなかったら
だめなんじゃないかって気もして……」
「次に機会がある時に、その時お会いしましょうか?」
「ジュリは私が両親に会うの、嫌ですか?」
「僕は……まあ、そうですね。
でもこれは……
相手に負担をかけていい問題じゃないので。」
「ジュリが望むなら、お会いします。」
私はその言葉を口にしながら
フンジさんのお姉さんに会った日のことがふとよみがえった。
あの日どれほど緊張したかを思い出した。
それでも今は……
あの時みたいに、まるで自分が何か間違ったことをしているような
感じはなかった。
だから今回は少しだけ怖くなかった。
「私、だんだん自信がなくなってきます……」 <80話 中より>