僕たちは一線を越えないことにした(シーズン2)

41話。惨めな涙



床に落ちたコーヒーは、蓋が開いたまま

コーヒーをすっかりこぼしてしまった。





キム代表はぴくりとも動かなかった。

ただそこに固まった人のように立っているだけだった。





「私の言うこと、聞こえなかった?」





私はキム代表をせかした。





「これは何の写真だって?」




「ジョンア...」





私はまばたき一つせずに

彼を見つめた。





彼は相変わらず何も言わなかった。

私はもう我慢できず、声を荒げた。





「この写真はいったい何なの?」

 どうしてテヒョンさんのラップトップに

 こんな写真があるの?」





「私が今聞いてるでしょう?」






「... ごめん... 本当に...」






「今、私が考えてることが合ってるってこと?」

 テヒョンさんが人を使って

 この写真を撮らせたの?」






「フンジは俳優だから、スキャンダルくらい

 そんなに大きなリスクじゃなくて...」





「じゃあ、私と別れさせるため?」

 それでこんなことまでしたっていうの?」

 そのせいで私が苦しんでる時に

 そばで慰めてくれながら?」






「言うことがない。」






「本当におもしろい。」



私は鼻で笑った。




「私、これまでずっとテヒョンさんを

 純愛家だと勘違いしてたのね?」





しばらく息を整えてから、冷たく付け加えた。





「自分が欲しいものがあれば

 手段を選ばない

 ビジネスマンだけど。

 違う?」






私は席をがばっと立ち上がった。

一瞬、目の前がくらりとした。


ふらつく体を机の縁にもたれさせながら

ぎゅっと目を閉じた。





キム代表が近づいてきて

私の腕をつかんだ。





「どいて。」





「家まで送ってあげるよ。

 今はかなり興奮してるから

 運転したら危ない。」





「今、私の心配をしてるの?」

 まあ...

 あの写真のせいで私が泣いてた時

 抱きしめて慰めてくれたじゃない。

 自分で痛めつけて薬もやるなんて...

 一人で全部やったのね。」





「ただ... 切実だった私の気持ちを

 考えてくれない?」

 それでも

 君のそばにいたかった私の気持ちを?」





「それを愛だと勘違いしてるの?」




私は少しため息をついて、話を続けた。




「それは自己中心的なわがままよ。

 自分の欲を満たしたいという自己中心的な欲望。」





私はソファの上に置いたバッグを手に取り

玄関のドアへゆっくり歩いていった。





「私が...」





「黙れ!!!」





私は彼の言葉をさえぎった。

ドアを開けて外に出た。




頭の中は空っぽみたいで

足は宙を踏んでいるみたいにふらついた。





どうやって駐車場まで降りたのか

記憶さえなかった。





車に乗って

しばらくぼんやり座っていた。




どれくらい時間が経っただろう。



1時間ほどしてようやく

私はハンドルを握って家に戻った。




バッグをソファの上に放り投げて

ベッドに行ってそのまま倒れ込んだ。





何も考えたくも、

何もしたくもなかった。





そのまま目を閉じた。




目を閉じると

スペインで過ごした時間が浮かんできた。





きれいな町プリヒリアナが

絵のように頭の中に広がった。




その中で私はミゲルのカフェで

翻訳の仕事をしていて、

フンジさんが窓の外から駆け寄ってきて

私を見つけてカフェの中に入ってくる。





彼はぱあっと明るい笑顔を浮かべて

ポラロイド写真を一枚、私に差し出す。




私たちは幸せそうに互いを見つめ

微笑む。




私の目から涙が流れ落ちる。




その涙が想像の中の幸福の涙なのか、

現実の中の惨めさの涙なのか

私にもわからなかった。





「そんな方法なんてない。」  <第42話より>



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