僕たちは一線を越えないことにした(シーズン2)

第6話。ぎこちない夕食


カーテンを閉めていない

窓からあふれ込んだ日差しで

いつもより早く目が覚めた。




ジャケットだけなんとか脱いだままソファで

寝ていたのを見ると、昨日は思ったより

かなり酔っていたみたいだ。




シャワーを浴びて

キム代表にメッセージを送った。




[昨日、私かなり酔ってましたよね?

 家まで連れて帰るの大変だったでしょうに

 ごめんなさい...ㅠ]





すぐにキム代表から返信が来た。


[今夜のご飯をおごれ。

 仕事が終わる頃にうちの会社の前に来い。]





『夕飯をおごれってことは

 昨日かなり苦労させたみたいだ...』




[はい...6時までに行きます。

 すみません。ㅠ]





キム代表に返信を送ってみると、

知らない番号からメッセージが来ていた。




[起きましたか?

 このメッセージを見たら電話ください。]




『なんだろう?

 登録してない番号なのに...』




誰なのかわからず通話履歴を確認してみると

昨日フンジさんに会っていた時間に

電話がかかってきた記録があった。





『あ...フンジさんの新しい番号か。

 でも、なんで電話してほしいんだろう?』



『え?』

 昨日の夜にも通話履歴がある。』





少しためらってから

先にメッセージを送った。




[フンジさん。なんで電話してほしいって言ったんですか?]




[具合は大丈夫ですか?

 なんでそんなにたくさんお酒を飲んだんですか?

 昨夜、私と通話したの、覚えてますか?]




[昨日、私と通話しましたか?

 覚えてないんですが...]



[いくらキム代表だって

 男とお酒を飲みながら

 そんなふうに記憶も飛ぶほど

 たくさん飲んじゃだめでしょう。]



"なんだよ...あいつ、私の兄貴か何かなの?

 あいつに会って落ち着かなくて

 酒を飲んだんだけど..."




[次からは気をつけます。]




フンジさんにメッセージを送ってから

私は彼の番号を何て登録しようか

少し悩んだ。



『パク・フンジ』


『もう何というか...何の関係でもないし...』




簡単に朝食を済ませて、

ノートパソコンを持ってカフェへ向かった。



家から歩いて行けば20分ほどかかる距離なので

天気のいい日は

運動がてら歩いて行こうと思った。




あと2日で正式オープンなので

今日は近所の店に配ろうと

あらかじめ注文しておいた餅が届く日だ。




カフェのドアの前には

オープン前に必要な品物が

宅配で届いていた。




宅配の箱を中へ運び込んで

片づけているうちに、いつの間にか餅も届いた。




近所の店に餅を配って

残った数個はショッピングバッグに入れておいた。




やることを終えたあと、

制作会社から送られてきた原稿を読み始めた。




小説とはまた違う読みごたえがあった。

夢中で読んで時計を見ると

いつの間にか5時を過ぎていた。




やっていた仕事を片づけて、

キム代表の事務所へ向かった。




事務所の前で待ってから

仕事を終えた彼と一緒に近くの焼肉屋へ入った。




彼が事前に予約していたようで

名前を告げると個室へ案内された。




彼が席に着きながら言った。




"ジョンア、おまえ、俺と会うときは酒を飲むな。

 昨日、おまえを連れて帰るのに

 どれだけ苦労したと思ってるんだ?"





"ごめん...

 私、お酒に弱くて...

 昨日はするすると入っちゃって。"




"おまえのジャケットを脱がせるのに手こずってるところに、

 フンジがまたなんであんなに電話してくるのか...

 おまえの家から出たって言ったら

 やっとやめたぞ?"




"実は...私、フンジさんから電話が来たのも覚えてなくて..."





"俺が昨日ほんと呆れたのが何かわかるか?"




キム代表が呆れたように私を見た。




"え? 私、ほかに何か失敗した?"




"いや。おまえじゃなくてフンジだ。

 女ひとり暮らしの家だから

 寝室には入るなって。

 だから居間に寝かせて帰ったんだ。"




"あ...だからソファで寝てたんだ。"




"別れた相手にしてはやけに細かく面倒見るな?"




"酔っていた私が一番悪かったんだ。

 ごめん...ほんとに。

 二度とあんなことはしない。

 そうだ、今日は開店餅が届いたから食べてみてって持ってきたんだ。"





"え? 本当? おいしそう。

 早く出してみて。

 ちょっと、トイレで手を洗ってこなきゃ。"





キム代表がトイレに行くと言って出ていき、

すぐまたドアが開いた。




"出てったそばから入ってくるの? え?"




ドアが開いてフンジさんが入ってきた。




"どうしてここに...?"




"代表が言いませんでしたか?

 今日はジョンアさんが夕飯をおごるって言うから

 私もごちそうになりに来たんですけど。"





"聞いてませんでした。"




フンジさんは何気なくジャケットを掛けて

私の隣に座った。




"これ、何の餅ですか?"




"あ...開店餅ですよ。"




"誰が開店するんですか?"




"私です。"




"ジョンアさんが何を開店するっていうんですか?"




"私、カフェを開店することになったんです。"




"え?"




その時、キム代表が入ってきた。




"フンジ、来てたのか?

 さっき昼にフンジが夕飯を食べようって電話してきたから

 そのままここへ来いって言ったんだ。

 先に言っておけばおまえが気まずがるかと思って

 言わなかったんだけど..."




私はキム代表を睨んだ。




"カフェを開店するって、どういうことですか?"




フンジさんの質問にキム代表が何気なく答えた。




"ミゲルって、翻訳作業も兼ねてカフェを開いたんだ。

 雰囲気もいいし、ジョンアのコーヒーもなかなかうまいぞ。"




"ミゲル...ですか? 代表、行ったことあるんですか?"




フンジさんはキム代表と話しながらも

ずっと私を見ていた。




"ああ。行ったよ。カフェの雰囲気がすごく異国的なんだ。

 餅をちょっとくれ。

 俺、こういう開店餅ってすごく好きなんだよ。"




フンジさんはむくれた顔で言った。




"私の知らないうちに、いろいろあったんですね?"




思いもよらなかったフンジさんの登場で

夕飯を食べている間じゅう気まずかった。




キム代表が私の首にかかったネックレスを見つけた。

うれしそうに微笑んで言った。




"ジョンア、おまえ、俺があげたネックレスしてるな?

 よく似合ってる。きれいだ。"




フンジさんは私を見ると

顔をこわばらせたまま尋ねた。




"スペインで俺があげたあのネックレスは?"




私はわざとフンジさんの顔色をうかがいながら答えた。




"家にあります。"




私はそんなふうに聞くフンジさんが

なんとなく気に食わなくて、ひと言付け足した。




"別れた元彼にもらったネックレスを

 誰がずっとつけて歩くんですか?"




その言葉を聞いた彼が急にスマホを取り出し、

どこかへ電話をかけた。




その瞬間、

テーブルの上に置いておいた私のスマホが鳴った。




"パク・フンジ?"




彼が驚いた表情で私を見た。





"私はジョンアさんの淹れてくれたコーヒーが飲みたいんですけど..."

 <7話中>


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